参議院において「日本学術会議解体法案」の廃案を求める
日本学術会議を実質的に解体し政府が統制する特殊法人とする法案が衆議院を通過し、現在参議院で審議されている。
この法案が成立すると、学術会議の活動全般を首相任命の「監事」が監督し、内閣府に設置される「評価委員会」が評価するなど、学術会議が政府の管理・統制下に置かれる。会員の選考方法に関しても政治的意向が強く働く仕組みが盛り込まれている。学術会議会長が、会員予定者を選考する候補者選考委員会の委員を任命しようとするときは、内閣総理大臣が指名する有識者と協議しなければならないとされている(附則6条5項)のである。5月9日の衆議院内閣委員会において坂井内閣府担当大臣は、「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は、今度の法案で解任できる」と答弁しており、法案が学術会議の運営への露骨な政治的介入をめざすものであることが一層明白となっている。財政的にも、法人化されれば政府が必要と認める金額しか補助されない。
2020年9月、当時の菅義偉首相は学術会議が推薦した会員のうち6名の任命を拒否するという「違法行為」を行なった。厳しい批判が巻き起こったが、政府は任命拒否を反省も是正もせず、同年12 月、自民党は学術会議法人化を提言した。任命拒否は、軍事研究に対して慎重な姿勢を求める学術会議に対する政治的介入であり、法人化提言は学術会議の実質的解体、会員選考や運営に対する政治的介入を制度化することを狙ったものであった。この任命拒否は、安倍政権のもとで実質的な決定が行なわれていたことが明らかとなっている。秘密法、他国の戦争への参戦を認める憲法違反の安保法制など戦前回帰とも言える流れの中に、学術会議解体法案は組み込まれていると言える。
法人化された学術会議のもとでは、政府から独立した科学者・研究者の立場からの政策提言や勧告が不可能となる。広範な学術団体や市民の反対の声が続く中、衆議院では僅か14時間の委員会審議のみで、与党2党及び日本維新の会の賛成により5月13日の衆議院本会議を通過した。このような強引な国会運営に対して強く抗議する。
このような法案の成立を許せば、学問の自由に対する侵害が起きる危険が高まり、日本を再び戦争への道に引きずり込むことにもなりかねない。 同法案を参議院段階で廃案とすることを強く求める。
2025年6月5日 日本科学者会議大分支部