「日本学術会議法案」の撤回を求める緊急声明
2025年5月25日
日本科学者会議石川支部
学問の自由を守り、科学者が再び戦争に加担する過ちを繰り返さないように、日本学術会議法案 の撤回を求めます。
今年はアジア・太平洋戦争の戦後80周年を迎えます。先のアジア・太平洋戦争では、国家総動員(法)の下で、軍の意向に沿って科学は軍事研究に奉仕し、科学者・技術者が生体実験まで行う戦争加害を犯 しました。戦後、科学者は戦争に加担した誤りを反省し、科学者たちの自立し独立した国を代表する組 織として、1949年に日本学術会議が設立されました。日本学術会議法の前文には、「日本学術会議 は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類 社会の福祉に貢献し、世界の学会と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。」 とあります。
政府により今年3月に提出された現在国会審議中の日本学術会議法案は、日本学術会議を特殊法人と して、政府や外部の意向が、運営・予算・人事に直接反映できる仕組みを導入しています。更に、新会 員選出に会員外部が関与し、現行の日本学術会議会員の関与を排除する内容です。法案には前文もなく、 従って「平和」「科学者の総意の下に」も欠落しています。この法案は、現在までの日本学術会議のあり方と役割を根本から否定し、政府の意に沿う組織に変質することを目指しています。
政府は、安全保障関連3法律(2015年)で海外派兵を可能とし、防衛3文書(2022年)でアメリカ の戦争戦略の下で、軍事費 2%への増額を含む軍事力強化を進め、沖縄南西諸島の基地拡張、長距離ミサイルの配備を進めています。“新しい戦前”の危険が迫っています。この中で、科学技術を戦争に利用 する動きが強まり、防衛省安全保障技術研究補助金や軍事に転用可能な経済安全保障重要技術育成プロ グラムが設けられています。国立大学運営交付金の減額と科学研究補助金の据え置きにより科学研究の 「経済的貧困」が進む中で、軍事転用可能な補助金への誘導が進んでいます。
政府は、日本学術会議の軍事研究に否定的な立場が、軍事関連の研究開発推進を阻害しているとして、 日本学術会議法案によって日本学術会議を政府に従順な管轄組織に変質させることを目的としています。今回の法案は、憲法が定めた「学問の自由」への侵害であり、戦争する国づくりに科学を巻き込む ものです。私たちは日本学術会議法の撤回を求めて、多くの市民と共に抗議活動を行います。