【声明】政府による「特定利用空港・港湾」政策の撤回を要請する
2024年10月25日
日本科学者会議幹事会
岸田政権は、国会審議を経ずに、2022年12月に安全保障3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を閣議決定し、2023年1月に日米2+2(外交・防衛閣僚)会議で空港・港湾の柔軟な使用に関する協力を確認した。私たち日本科学者会議は、安全保障3文書に対して、2023年1月31日に、『憲法違反の新安全保障3文書の閣議決定と日米共同声明に抗議する』を決議し、その中で「戦争を招く道に必ず陥る軍事への国力の総動員は認められず、公共インフラ、サプライチェーン等への国家権力の介入、土地規制法の全面運用、海空域や電波の規制、自治体の動員などを撤回すること」を求めたが、政府は2023年8月に内閣官房主導で、防衛省、海上保安庁、国土交通省などの関係省庁会議を開き、「自衛隊及び海上保安庁は安全保障環境を踏まえ、必要な空港・港湾等を整備し自衛隊および海上保安庁の艦船・航空機が平時から円滑に利用できることが必要である」とした。政府は、2023年10月と11月に「特定利用空港・港湾」の候補地として10道県32施設を選定し、関係自治体等に受け入れの説明を始めた。
国内では、2023年10月以降、このような政府の方針に反対する市民運動が起きている。本州の中で唯一の対象とされている福井県の敦賀港について、「戦争する国づくり反対 福井県連絡会」は、2024年3月26日と7月18日に杉本達治福井県知事に「特定利用港湾の敦賀港の選定・指定受け入れに抗議し、その撤回を求める」申し入れを行っている。また、市民団体の「辺野古土砂ストップ北九州」は、北九州空港が「特定利用空港」に指定されることに対して抗議活動をしている。空港・港湾を軍港化してはならないという運動は全国的に広がりつつある。
そうした中で政府は、2024年4月に、国家安全保障戦略の一環として自衛隊・海上保安庁の航空機・船舶が平素から必要に応じて民間の空港・港湾を円滑に利用できる「特定利用空港・港湾」として、5空港・11港湾を指定し、さらに2024年8月には、3空港・9港湾を追加指定した(注参照)。
国は、「戦争する国づくり」を意図して、憲法の原則に基づき対等に協力し合うべき国と地方の関係を壊して、「国」を優位に「地方自治」を劣位におき、「武力攻撃事態」に至る前の段階である「重要影響事態」や「存立危機事態」において、「切れ目なく」自衛隊等が「柔軟かつ迅速に施設を利用できる」ように、候補となる自治体に対し「特定利用空港・港湾」の受け入れを迫っている。私たちは、このような国の横暴な行為を到底容認できない。
特定利用空港・港湾の指定は、平素から有事まで、地域と住民生活を一変させるものである。例えば、敦賀市を含む若狭湾沿岸には15基の原発があり、敦賀港が軍港化されれば、有事の際には港湾と原発が軍事テロなどの攻撃対象となり、当該地域の危険性はますます大きくなる。国が「安全保障」の名のもとで民間空港・港湾を「特定利用空港・港湾」に選定・指定することは、逆に国民の安全を損ない危険性を大きくするものである。 以上により、私たちは、政府による「特定利用空港・港湾」の選定・指定に反対し、この政策の撤回を要請する。
以上
特定利用空港・港湾(2024年4月指定)
福岡県:北九州空港(国)、博多港(市)
長崎県:長崎空港(国)、福江空港(県)
宮崎県:宮崎空港(国)
沖縄県:那覇空港(国)、石垣港(市)
北海道:留萌港(市)、石狩湾新港(組合)、室蘭港(市)、釧路港(市)、苫小牧港(組合)
香川県:高松港(県)
高知県:高知港(県)、須崎港(県)、宿毛港(県)
特定利用空港・港湾(2024年8月追加指定)
熊本県:熊本空港(国)、熊本港(県)、八代港(県)
鹿児島県:鹿児島空港(国)、徳之島空港(県)、川内港(県)、鹿児島港(県)、志布志港(県)、西之表港(県)、名瀬港(県)、和泊港(県)
福井県・敦賀港(県)
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