決議 日米両政府は琉球諸島の戦場化すら辞さない中国との軍事対決政策を直ちにやめよ
日米両政府が、台湾有事の際に米軍が琉球列島(南西諸島)の島々に臨時の攻撃用軍事拠点を置くことを含む新たな日米共同作戦計画を策定するとの報道がなされている。
米海兵隊の運用指針である遠征前進基地作戦(EABO)は、既存の陸上の基地からの攻撃、軍事艦船・航空機からの攻撃に加えて、多数の離島に小部隊が機動的に臨時の要塞を作って攻撃を行うというものである。米軍の攻撃用軍事拠点を増大させ、かつ移動性を高めることによって、敵国へのミサイル等による攻撃密度を高めつつ、敵国の攻撃対象が分散することで米軍部隊・基地の生存可能性を高めることを意図している。具体的には、台湾有事の際、日本政府はこれを安保法制に基づく「重要影響事態」と認定し、自衛隊の協力により米海兵隊が琉球列島の多数の島嶼に攻撃用軍事拠点を作ってEABOを行うという作戦計画をつくろうとしているのである。
これは、臨時の攻撃用軍事拠点や、沖縄に極度に集中する既存の米軍基地・自衛隊基地を中国がミサイルや航空機を動員して攻撃することを想定して、それに打ち勝つ作戦である。また、これまでのように米国が行う戦争の出撃基地や後方支援に在日米軍基地や自衛隊基地を使うという同盟関係にとどまらず、琉球列島全体が戦場となり、米軍基地と米軍基地とのわずかな隙間に暮らす全ての沖縄県民が戦火にさらされることになる日米共同作戦をあえて行うことを意味する。これは、日本軍が沖縄を捨て石として行った1945年の沖縄戦を彷彿とさせる。
一方、近年、日本政府は「離島防衛」を掲げて九州・琉球列島に次々と自衛隊基地・部隊を新設し、米軍との基地共同利用や新たな共同訓練を行っている。また、自衛隊の宇宙・サイバー・電磁波の領域での活動を、産官学を巻き込みながら飛躍的に強化している。これらは、新たな日米共同作戦計画策定により、名実ともに台湾有事への米国の軍事介入作戦に投入されることになる。
また、自衛隊について、岸田首相は、2021年12月の臨時国会における所信表明演説で、「敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化」すること、そのために「新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定」することを表明した。
これらをあわせると、日米両政府が描いているのは、在日米軍と自衛隊が一体となって、中国への先制攻撃も可能な兵力・戦略をもって、日常的に中国に対峙するという構図である。このような軍事重視の政策は、あまりにも日本国憲法の規定とかけ離れている。そして、それは中国をはじめ近隣諸国との軍事的緊張を飛躍的に高め、不慮の軍事衝突と戦火拡大の危険をもたらすことになる。さらに、それが抑止力として実効性を持つこともないだろう。日米の軍事同盟強化は、中国、ロシア、北朝鮮などに対して、むしろ対抗的な軍事強化を促すだけである。「中国の脅威」を理由に軍事力強化に突き進む日米両政府は、東アジアにむしろ戦争の危機をあおっている。
私たちは、日米両政府に対し、琉球列島を軍事拠点化する新たな日米共同作戦計画、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の策定、馬毛島から与那国島に至る琉球列島をはじめ全国での軍事基地建設・強化、敵基地攻撃能力取得を直ちにやめるよう求める。
日本科学者会議幹事会