目次
2021年10月4日
エネルギー基本計画案について意見
日本科学者会議中長期気候目標研究委員会 JSA-ACT
世界と日本は気候危機の状況にあり、このままではさらに気候変動の悪影響激化が予想され、我々のくらしの基盤、および産業活動の基盤を脅かす懸念がある。気候変動対策の強化、温室効果ガス排出量の大幅な削減が求められる。パリ協定は産業革命前比の気温上昇2℃未満抑制の全体目標とともに1.5℃を努力目標とした。IPCC気候変動に関する政府間パネル「1.5℃特別報告書」は早ければあと10年で産業革命前比の気温上昇が1.5℃になる可能性があるという切迫した状況にあることを示すとともに、気温上昇1.5℃抑制により、2℃またはそれ以上の気温上昇よりも悪影響を低く抑えられることを示した。また1.5℃抑制のための世界の累積排出量を示し、世界の代表的CO2排出経路として2030年に2010年比45%削減、2050年排出実質ゼロを示した。これは8月発表の第6次報告書でさらに強化されている。人口比排出量が世界平均の2倍の日本をふくむ先進国はより多くの削減をする責任がある。
日本では温室効果ガス排出量の85%をエネルギー起源CO2が占めるため、この10年でのエネルギー起源CO2の大幅な削減と早期に排出ゼロとする対策が求められる。具体的には省エネ・エネルギー効率化によるエネルギー消費量の大幅な削減とエネルギー全体の再生可能エネルギー転換が緊急課題である。
また、2011年3月の東京電力福島第一原発事故で、その危険性、いったん事故をおこせばとりかえしのつかない事態になることが明らかになった。また、原発の放射性廃棄物の超長期の保管についても全く目処がたっておらず、これ以上廃棄物を増やすことは避けなければならない。
日本はエネルギー問題として気候危機回避・気候変動対策と、原子力リスクの回避・全廃対策とを同時に進める必要がある。社会・生産活動に必要なエネルギー需要を満たしながら2030年に60%以上のCO2削減と、原発ゼロが達成可能なこと、2050年に一部新技術も使い省エネ再エネで排出ゼロを実現できることもこれまでの研究で示されている。この10年の対策が極めて重要であり、新技術ではなくすでに商業化された技術による脱石炭、省エネ再エネ普及が必要である。化石燃料輸入費・光熱費削減と省エネ再エネ産業の成長・雇用創出で、日本全体および地域に経済的に大きなメリットをもたらす。産業構造転換をもたらすので労働の公正な移行を行う必要がある。
こうした観点からエネルギー基本計画案を点検すると多くの問題がある。
(1)気候危機回避の前提、抜本的対策強化の欠如
上記に示した気候危機の認識、位置づけが極めて軽い。気候変動対策は先進国日本の責任分担も大きく、日本など先進国が抜本的に目標対策を強化し2030年目標を強化し排出ゼロ年次も2050年より前倒しし、世界の対策も大きく強化し、途上国の排出削減や適応にも協力すべきものである。しかし同計画案は、4つの原則で環境最優先を目標課題にせず、安全性、安定供給、経済性を優先させている。気候変動問題への対応についいて、1.5℃目標や世界の2030年目標強化などにふれずに気候変動対策を自国に有利なルール作り、覇権争い国際的なパワーゲームのようにみなす記述すら見られる。エネルギー基本計画案には根本的な欠陥がある。
(2)この9年の既存技術導入による抜本的対策強化の欠如
気候危機回避ではとりわけ2030年までの9年の対策強化が極めて重要である。しかしこの点で計画案は大きな問題をかかえている。まず目標が低い。日本の2030年目標、2013年比温室効果ガス46%削減(1990年比40%削減)は欧米の1990年比目標より低く、IPCC1.5℃報告が示した2030年の世界のCO2削減と同程度にとどまり、人口比排出量の大きい先進国の責任を果たすには不十分な目標である。60%以上の削減への引き上げが必要である。
次にこの9年の対策は新技術開発では到底間にあわず、既存技術の普及により確実に実施することが不可欠である。しかし、計画案は、新技術開発を極めて重視する一方、省エネ設備・建築普及、再エネ普及など今ある技術を急速かつ大規模・広範囲に普及することには消極的である。
(3)主役交代を避け、既存産業による既存設備を用いた供給重視でリスクの大きい新技術に依存
エネルギーの大規模な転換、設備やインフラの大転換のため、それを担う供給側産業や施設、消費側の産業も大きく転換することが予想される。しかし計画案は主役交代を避け、化石燃料供給を行う既存産業が既存設備で供給すること、産業構造固定、設備存続を重視し、新技術開発依存、CCUS依存になっている。
産業構造転換は避けられずまた避ける理由もないので、確実な対策および新規産業・雇用創出、主役交代を認め、既存技術普及、省エネ再エネ脱化石燃料脱原発による対策を進めるべきである。
(4)原発継続、核燃料サイクル継続方針
計画案は、原発について、可能な限り原子力依存を低減と書きながら、2030年電力割合20-22%と規制委員会に適合性審査も出せていない原発まで稼働しないと実現不可能な目標を示し、2050年には必要な容量維持として新増設にも含みをもたせている。核燃料サイクル推進も継続し、小型原子炉開発や高速炉や核融合も含む技術開発を進めるとしている。
福島第一原発事故の教訓をふまえ、また放射性廃棄物の超長期保管の目処もたたないことを踏まえ、原発は直ちに廃止すべきである。核燃料再処理の中止、核燃料サイクル廃止を行い、小型原子炉などの開発、核融合も行わない方針を決定すべきである。
(5)石炭使用継続
気候変動対策で石炭の優先的な使用削減、とりわけ石炭火力発電所全廃は先進国の対策の優先順位の高い対策でありその政策が広がっている。
しかし計画案は脱石炭火発、脱石炭の方針がない。旧型石炭火力は縮小するとしても2030年にも石炭火力割合を19%も確保し、建設中の石炭火力を止める方針もなく、2050年にも石炭火力は一定程度維持する方針である。また電力以外の石炭を減らす方針もない。
石炭火発は2030年までに全廃することを国家目標として定め、そのための廃止目標、CO2原単位規制、排出量取引制度など政策を導入すべきである。
(6)化石燃料依存継続
気候変動対策で、石炭はいうまでもなく、石油、天然ガスも含め、電力だけでなく熱量、運輸燃料も、2050年にむけて脱化石燃料、再エネ転換を行う必要がある。化石燃料継続でCCSUという路線はリスクも大きく、再エネ普及の妨げになり、エネルギー自立ができず、化石燃料輸入費やCCSのための追加費用も発生する。
しかし計画案は、脱化石燃料の方針がないどころか、2050年にも化石燃料使用方針がリスク回避に優れるかのような方針を示している。電力以外の熱や運輸燃料では化石燃料を前提にしたシナリオ案が示された。資源エネルギー政策では、いまだに海外化石燃料資源確保の政策、日本企業の新規化石燃料鉱山拡大支援政策がとられ、気候変動に有害なだけでなく日本企業の座礁資産獲得を進めているとさえ言える。
2050年にむけ石炭を優先的に使用ゼロにするとともに、他の化石燃料もゼロにし、2050年には全て再エネに転換する必要がある。
(7)再エネの位置づけの低さ
日本は莫大な再生可能エネルギー資源に恵まれ、2050年に向け多種の国産再生可能エネルギーでエネルギー自給を余裕をもって達成する可能性がある。
しかし、再エネの位置づけは低い。電力では2030年割合を36〜38%とする目標、2050年は参考として50〜60%という低い値が示されている。普及政策についても、「再エネ基幹電源化」、「再エネ最優先の原則」が入ったものの、具体的な強化政策が弱い。送電線につなげない、待たされる、高い接続料金をとられるという「送電線接続問題」の解決策はノンファーム接続程度で弱く、逆に大型電源を念頭に置いた多くの政策が放置されている。さらに熱利用の再エネ拡大は極めて遅れている。
再エネ政策を抜本的に強化、2030年に再エネ電力を50%以上とすること、2050年には再エネ電力100%、熱利用も再エネ熱に転換しにくい用途は電化し再エネ熱100%とすること、運輸は電化で再エネ電力100%とし再エネ転換100%とすべきである。
そのため、まず2030年の再エネ電力普及政策、普及の妨げになっている政策を抜本的に改め、まず優先接続政策を導入すべきである。また再エネを原発より優先し、火力の最低出力は例外的にしか認めない、再エネ優先給電政策を導入し、出力抑制は全て補償すべきである。送電線強化も2025年までに域内、地域間とも実施し、2030年の大量導入ができるようにインフラ整備すべきである。
再エネコスト低減策で、入札制、買い取り価格のトップランナー化、小規模太陽光に自家消費義務など、事実上大型のものを優先し地域主体参入に不利な政策をおこない、認定量導入量の低下をまねき、コスト削減をもかえって妨げている。平均的単価による買取制度にもどし、大型のものは安い単価を適用、大量導入によるコスト削減をめざすべきである。
再エネは地域で進める必要がある。地域主体の意思決定参加のもとに自治体が再エネ計画を作り、進める必要がある。大気汚染の場合は都道府県が大気汚染総量削減計画を作るという記述が大気汚染防止法(第3条〜第5条)にある。
再エネの普及に、自然保護、環境対策と一体で進めるという視点がない。経産省だけではなく、環境省もエネルギー基本計画立案に加わるべきである。再エネの乱開発が問題になり、また地域で推進事業者と住民が紛争になっている。乱開発防止には、環境省、自治体および住民参加で、全ての土地に許可地域と禁止地域を定め、許可地域を一定割合必ず定めるゾーン制を導入すべきである。また、地域外資本の大型再エネ発電が地域紛争をおこし、地域発展に寄与できない。この解決のため、再エネ導入に最低地元出資割合を定め、地域主体の参加を求める必要がある。
(8)大型電源優先の電力システム政策
大型電源優先の電力システム政策を抜本的に転換する必要がある。
大型電源を前提にした制度を改め、変動再エネが多くを占めることを前提にした制度に抜本転換する必要がある。大型電源維持につながる容量市場は廃止すべきである。
(9)省エネの位置づけの低さ
省エネの位置づけも低い。1990年以降の省エネの停滞についての認識が弱い。目標においても特に素材製造業の省エネが著しく弱い。機器の効率改善と、断熱基準抜本強化の断熱建築普及でエネルギー消費の大きな削減が可能で、これは再エネ100%転換に大きく寄与する。
産業部門とりわけ素材製造業を重点に省エネを抜本的に強化する。また普及政策を抜本的に強化、素材製造業では脱石炭等とあわせた大口排出源削減義務化政策が必須である。建築では、断熱基準をゼロエミッションビル・ゼロエミッション住宅水準に引き上げ、2025年小口建築規制化を前倒しし、将来は欧州なみ断熱規制を目指すべきである。
(10)意思決定参加
関係業界中心の政策ではなく国民の意思決定参加を抜本的に強化する必要がある。国会の関与、政令省令委任事項を限定し原則として法律に定めること、審議会の利害関係業界委員のとりやめ、国民の意見を直接聞くタウンミーティングの強化などがある。
<以下、原案に対する修正意見>
意見1
P4 気候変動問題への対応
意見
気候変動を世界共通の危機と捉えず、世界全体の排出削減にも触れず国際的取引の一環のように軽く考えており、エネルギー政策の根幹を見誤るものといえる。
122〜142行目「こうした世界的状況も踏まえ」までを削除し以下に修正する。
気候変動は世界共通の危機であり、エネルギーに関係する緊急かつ最大の問題である。科学的知見を集めたIPCC気候変動に関する政府間パネル報告で、気候変動により、異常気象、生態系悪影響、農業被害、熱中症伝染病拡大など多くの分野で悪影響が予想される。気温上昇抑制で悪影響も小さくすることができると予想されている。パリ協定で工業化前からの気温上昇1.5℃未満抑制が努力目標に位置づけられた。1.5℃未満抑制には、達成確率50%としても、世界の2020年以降のCO2排出量を500億トンに抑え、2050年排出ゼロとする排出経路では2030年段階には2015年比半分以下に減らさなければならない。先進国の日本はさらに大きな削減が求められる。先進国が1990年以降平均でCO2排出量を10%以上削減、欧州で英国、ドイツ、イタリアなどが40%削減しているのに比較し、日本は5%削減に留まり、大きく遅れをとっている。日本も気温上昇を1.5℃未満抑制を目標に位置づけ、これに応える国内CO2排出削減を行う。
149行目「ことを国民一人一人が認識する必要がある。」を削除する。
意見2
P5 日本のエネルギー需給構造の抱える課題の克服
意見
気候変動対応、市場が脱炭素に向かう中での省エネ再エネの遅れ、原発事故など重要な課題を認識せず、エネルギー政策の根幹を見誤るものといえる。
155〜173行目を削除し、以下に修正する。
気候危機回避にむけ、脱炭素、省エネと再生可能エネルギー拡大が急務になる中、日本のエネルギー需給は対応が遅れている。とりわけこの10年、2030年までの削減対策を確実に行うことが急務である。
前述の通り先進国が平均10%以上、欧州連合が約40%削減の中で、日本のCO2削減率は5%に留まった。電力では、石炭火力発電量が1990年比で約3倍に増加、2019年度の電力に占める割合が3割以上を占め、対策で割合が急減しているアメリカ、ドイツを上回る。再生可能エネルギー電力割合は2019年に約18%で、欧州の40%、OECD平均の25%などを下回る。一次エネルギー全体でも石炭割合が高く、再生可能エネルギー割合は低い。この10年、2030年までの排出削減対策が急務で、省エネとともに電力分野で石炭全廃、再生可能エネルギーの大幅な拡大が必須である。熱利用でも石炭を不可欠用途に限定しエネルギー転換をすること、再生可能エネルギーの拡大をすることが必須である。運輸燃料も脱石油へ電化と再生可能エネルギー電力転換が急務である。いずれも抜本的な政策強化が必要である。
市場も脱炭素にむけ、再エネ100%目標の企業が増加、サプライチェーン全体の再エネを目指す企業も増加している。日本で再エネが得られなければ、国際的サプライチェーンから閉め出される懸念があり、生産・サービスの輸出の極端な減少、海外流出を招く。
2011年3月に日本は原発事故をおこし、犠牲者を出し、多くの被害者がまだ故郷に帰れない状態が続く。これまでの原発拡大・大型電源を優先した政策により再生可能エネルギー普及が遅れた。今後は原子力は可能な限り抑制との方針から、即時ゼロに転換する。
気候危機回避、気温上昇1.5℃未満抑制ためのエネルギー起源CO2削減を、日本は省エネと再生可能エネルギー100%への拡大で行う。
意見3
P5 第六次エネルギー基本計画の構造と2050年目標と2030年度目標の関係
意見
最重要課題の気候変動の取り組みが甘く、既存産業の維持、そのための開発リスクをともなう新技術開発に賭けているが、このことは確実な排出削減にとって不確実性を増し、問題である。
180〜200行目を削除し以下に修正する。
2050年には省エネと再エネによるエネルギー起源CO2排出ゼロを目指す。原子力、化石燃料、化石燃料起源の水素アンモニアは使用しない。新技術利用は開発リスクを伴う。素材系製造業の高温熱利用と、船舶航空燃料では必須としてもその他の分野では特段必要ないことから、この分野も含め、脱石炭や省エネ、再エネ普及など既存優良技術の普及を重視する。
2030年にエネルギー起源CO2排出量の60%以上削減を目指し、それを確実に達成するため、既存の優良技術の普及を行う。電力では石炭と原子力は2030年までに停止し以後使用しない。新技術開発は2030年対策は使わず、新たな水素アンモニアも不要である。
2030年までの既存技術普及のため、対策の強化が急務であり、その実現のために抜本的な政策強化を行う。
意見4
該当箇所p11 第五次エネルギー基本計画策定時からの情勢変化
意見
気候変動は単なる関心の高まりの問題ではなくエネルギー政策の根幹かつ最重要課題であるが、色々ある問題の一つ程度の軽い位置づけで、基本的方針に問題がある。
327〜331行目を削除し以下に修正する。
気候変動問題は深刻さを増し、気候変動に関する政府間パネルが1.5℃未満抑制のための排出許容量を2018年以降ゼロにするまでの量として420〜570Gt- CO2を示し、世界のCO2排出経路として2030年に2010年比45%削減、2050年ゼロを示した。IPCC第6次報告書ではさらに強化されている。世界の削減対策規模と速度も明確になった。パリ協定も実施段階に入る。日本のエネルギー政策もこうした課題を踏まえて脱炭素にむけ進める。
意見5
該当箇所p11 地球温暖化の影響と世界の動向
意見
341-342行目「個々の気象災害と地球温暖化との関係を明らかにすることは容易ではないが、」を削除する。
346行目「同協定では」の次に以下を挿入する。
「全体目標として工業化前からの気温上昇を2℃を十分下回る水準に抑制すること、努力目標として1.5℃未満抑制を規定した。また2℃未満抑制目標を反映して」
350-354行目「戦略的につなげていくことが求められる」を削除し以下に修正
「脱炭素化を目指し、既存技術普及の動きが強まっている」
359行目冒頭に以下を挿入
石炭からのダイベストメント、再エネ100%目標、サプライチェーン全体の再エネ100%、脱炭素化目標などの動きは今後も加速することが予想される。脱化石燃料・脱炭素は企業の存続に関わる。
意見6
該当箇所p12わが国のカーボンニュートラル宣言
意見
2030年目標、2050年目標とその確実な実現をきちんと位置づけるべきである。先進国の割合が減った、現実的トランジションなど、排出が進まず石炭が多い現状の言い訳のような記述は必要ない。
369〜385行目を削除し以下に修正する。
2 わが国のカーボンニュートラル宣言と2030年46%削減の確実な実行と政策強化
2020年10月、我が国は、「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した。また2021年4月には2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減し、50%の高みを目指すとの目標を決定した。
2030年まであと9年であり、新技術はこの達成に間に合わない。既存技術の普及、とりわけ脱石炭、省エネ、再生可能エネルギー普及が重要であり、そのために抜本的政策強化を行う。
意見7
該当箇所p12再生可能エネルギーに対する世界的な期待の高まりと幅広い産業による脱炭素化エネルギーシステムへの挑戦
意見
398-400行目「大規模な電力会社やガス会社の中には、再生可能エネルギーを中心とした分散型エネルギーシステムの開発や水素・メタネーションへの挑戦に着手する企業も出始めてきた。」を削除する
意見8
該当箇所p13再生可能エネルギーに対する世界的な期待の高まりと幅広い産業による脱炭素化エネルギーシステムへの挑戦
意見
402行目「国際的に」から413行目を削除し以下に修正
脱化石燃料、再生可能エネルギーの大量導入は、気候危機回避のためにも、企業の生き残りのためにも重要である。
再生可能エネルギーへの期待はかつてなく高まっている反面、日本では柔軟性のないベースロード電源の位置づけなど大型発電所優遇の誤った政策により普及が遅れてきた。今後政策を抜本的に改め、優先接続政策導入、優先給電政策の抜本強化を行い、再エネ普及を加速する。
意見9
該当箇所p15自然災害の頻発・激甚化やサイバー攻撃など、エネルギーの安定供給を脅かすリスクの増大
意見
気候危機のリスクの高まりの対策は必要である。
しかし北海道のブラックアウトは大型火力集中、具体的には石炭火力1極集中が大きく寄与した。冬の卸価格高騰は、関西電力の原発停止リスク、卸電力市場の経済産業省の市場設計の失敗と市場監視能力の欠如・卸電力価格長期高騰放置などの問題が顕在化、基本的にLNGのリスクと関係がない。
483-496行目を削除し以下に修正する。
気候危機により、ここ数年、自然災害の頻発・激甚化に伴うエネルギー供給への支障が生じており、災害時のエネルギー安定供給や早期復旧の体制構築の重要性が増している。
一方、事故で大型発電優先の政策の弊害、さらには新しい市場設計の失敗が明らかになっている。
北海道のブラックアウトは大型火力集中、具体的には北海道電力苫東厚真石炭火力への1極集中が大きく寄与した。これは、石炭と原発を優先した政策で、再生可能エネルギーが豊富な北海道で風力など再生可能エネルギー拡大が進まなかったことも原因である。
次に2020年12月から2021年1月に、12月下旬の卸電力市場への売りの突然の減少で卸電力高騰が特定時刻だけでなく24時間続く異常事態となったが、半月放置、また上限価格を引き下げたものの高騰は計1ヶ月続いた。高騰した電力を購入した小売電気事業者は巨額の損失を出した。送電会社に調整を求めた小売電気事業者は発電所の多くをかかえる10電力発電会社との資本分離のない送電会社から高い単価で請求があり、巨額の損失を出した。いずれもその後も補償もせず放置している。
原発停止リスクが関西電力で顕在化したことが原因のひとつである。また卸市場への売りが急減したのに市場監視・調査もできず、上限価格引き下げに半月かかるなど市場設計失敗と市場監視能力の欠如、結果として卸電力価格高騰を長期間放置し、補償もせず、問題が拡大した。この問題は市場設計と監視の問題で、LNGのリスクと基本的に関係ない。
この事態の反省のもとに大型電力中心の柔軟性のない政策を改める。また卸電力市場は電力システム改革・小売自由化政策の根幹のひとつであり、そこが機能しなければ極めて問題である。利害関係者を排しながら専門家を入れた検討で電力市場設計を改める。
意見10
該当箇所p17 エネルギー政策の基本的視点
気候変動問題は位置づけが軽い。安定供給については、原発事故、北海道停電の大型発電優先による供給不足・停電の反省もなく、また再エネ政策失敗の言い訳を英国ドイツの地形にすり替えるなど根本的に問題がある。
534〜613行目を削除しいかに修正する。
3 エネルギー政策の原則
これまで、3E+S(安定供給、経済効率性、環境、安全性)を原則としてきたが、環境の位置づけが弱く、内容があいまいであるため抜本的に改める。
(1)環境保全、気候変動の悪影響回避
エネルギー政策の第一の課題は気候変動への対処である。気候危機回避のため産業革命前からの気温上昇1.5℃未満抑制が重要であり、日本も気温上昇1.5℃未満抑制を目指す。このためには2030年までの10年の対策が極めて重要であり、従来の技術開発重視から、開発済み、商品化済みの優良技術の普及に政策を改める。脱石炭を重視し、省エネと再生可能エネルギー普及を重視する。
(2) 再生可能エネルギー最優先の原則
再生可能エネルギー最優先の原則を政策の柱とする。
(3)安全性確保とリスク回避
原子力において安全神話を排し厳しい対策をとり、すみやかな廃止に向けて取り組む。
他の電源について安全性を確保するのであるが、安全性や次の安定性を口実に変動再エネを差別し大型電源を温存することがないよう、制度全体を厳しく見直す。
(4)需給安定
従来の安定供給はエネルギー需要を放置してエネルギー大量供給を確保するように取ることができ問題であるため需給安定に修正する。
脱炭素、再生可能エネルギー転換を進める前提で、柔軟性の高い需給安定システムを構築する。
電力については大型発電所依存の脱却を進める。東日本大震災では大型発電依存により、関東地方で供給不足になり停電が発生した。北海道のブラックアウトでは、北海道内の石炭と原発重視により再生可能エネルギー普及も進まず、北海道電力苫東厚真石炭火力に発電が集中し、そこを直撃した地震により大規模停電が発生した。いずれも大型発電依存が安定供給を損なった。これまでのベースロード電源重視政策は中止する。再生可能エネルギーとりわけ変動電源を活かすためには柔軟性のない電源の存在は問題である。今後は、脱炭素、変動電源を活かす柔軟性の高い安定供給を目指す。加えて市場監視などを通じ、安定供給をシステムとして確保する。
また電力以外の熱利用・運輸燃料の安定供給を、ヒートポンプ化や電気自動車化による電化を含む省エネで消費量を大きく削減し、再生可能エネルギー転換を進め、システムとして需給安定を確保する。
(5)経済性
環境や安全性確保の上でエネルギーにかかるトータルコストを削減する。
このための重要な手段は省エネであり、最終エネルギー消費量が減ればトータルのエネルギーコストも大きく低下する。
再生可能エネルギー電力コストは太陽光、陸上風力についても海外では火力コストの下限に等しくなった。洋上風力も火力コストの領域まで下がった。日本ではまだ高いが、このコスト引き下げのため、大量導入によるコスト低下を選択する。
意見11
該当箇所p20〜31 2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応
意見
2050年には省エネでエネルギー消費量を大きく減らし、再エネ100%実現によりエネルギー起源CO2排出ゼロを実現する必要がある。原子力はリスクと放射性廃棄物の問題がある。火力のCCSもリスクがある。
616-990行目を削除し以下に修正する。
日本は2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を決定した。2019年度でこの85%を占めるエネルギー起源CO2排出量について、省エネと再生可能エネルギー100%化により2050年に排出ゼロにする。原子力、化石燃料は使用しない。CCSも不要である。
2050年カーボンニュートラルの需給構造は以下のようになる。
・電力は再生可能エネルギー100%で供給し、排出ゼロを実現する。地域間、地内の送電線整備を行い、動きの遅い大型電源は早期に廃止し柔軟性の高い電力システムで需給調整を行う。水素、アンモニアは電力では使用しない。
・産業部門のうち素材製造業は一部新技術を用いて高温熱利用を再エネ電力、再エネ水素など再エネ由来のエネルギーに転換し、使用電力は再生可能エネルギー電力100%、熱利用は再生可能エネルギー熱100%として再生可能エネルギー100%、排出ゼロを実現する。非素材製造業は既存技術を用い使用電力は再生可能エネルギー電力100%、熱利用は再生可能エネルギー熱100%として再生可能エネルギー100%、排出ゼロを実現する。
・業務部門、家庭部門は既存技術を用い、使用電力は再生可能エネルギー電力100%、熱利用は再生可能エネルギー熱100%として再生可能エネルギー100%、排出ゼロを実現する。
・運輸部門は電気自動車に転換し、再生可能エネルギー電力100%の電力を使用し、再生可能エネルギー100%、排出ゼロを実現する。
・CCSは使用しない。森林吸収はエネルギー起源CO2以外のガス用に確保する。
2050年に再生可能エネルギー100%、エネルギー起源CO2排出ゼロを実現するため、各種設備機器などは10年前の2040年には化石燃料使用機器の普及を停止する。政策導入で2050年再生可能エネルギー100%、エネルギー起源CO2排出ゼロ実現を保証し、産業転換、雇用のシフトを実現していく。
意見12
該当箇所p32 2050年を見据えた2030年にむけた政策対応
意見
気候危機対応を軸に政策をくみたてる必要がある。
996-1010行目を削除し以下に修正する。
この目標は気温上昇1.5℃未満抑制には不十分で、また1990年比の削減率はEU、英国、米国、スイス、さらにはEU内で独自目標を掲げるデンマーク、ドイツなど他の先進国より低い。気候危機回避の国際的議論でさらなる目標強化の議論は必至である。
引き続き目標強化を準備し、エネルギー起源CO2は2030年に2013年比で60%以上の削減を目指す。
2030年まではあと9年であり、技術開発を今からしていてはまにあわない。2030年目標を確実に達成するため、2030年までの対策は基本的に既存技術の普及で実施する。
福島第一原発事故の反省を踏まえ、原発を即時廃止する。また排出の大きい石炭は電力は2030年までにゼロとし、産業用など非電力用も鉄鋼原料炭など当面代替のない不可欠用途に限定し他は使用しない。省エネを進め、再生可能エネルギーを拡大し、その大量導入によりコストを下げる。また化石燃料輸入を減らしウランの輸入を全廃し再生可能エネルギーを拡大し自給率を拡大する。これらを原則にして2030年の対策を実施し、政策でその達成を保証していく。
意見13
該当箇所p32ー37 現時点での技術を前提としたそれぞれのエネルギー源の位置づけ
意見
気候危機回避、2030年大幅削減にむけたエネルギー供給の大きな変化の位置づけがない。重点のない各論に終始している。
1014-1197行目を削除し以下に修正する。
2030年までにエネルギー起源CO2を60%以上削減するための各エネルギーの位置づけは以下の通りである。いずれも、省エネを前提とする。
1再生可能エネルギー
電力で再生可能エネルギー割合を50%以上に拡大する。日本には膨大な再生可能エネルギー資源がありながら、従来の大型電源優先政策により普及が遅れていた。「再生可能エネルギーに最優先の原則」を政策の基本とし、2030年目標を達成する。このため、優先接続政策を導入、優先給電を強化し、2030年以前に地域間、地域内送電線も整備し、大量導入によりコストも低下させる。
なお、バイオマスについては持続可能性を条件とし、普及政策は国内バイオマスに限り、発電については熱電併給を条件とする。石炭火力混焼バイオマスは普及政策から外し、計画策定後可及的速やかに固定価格買取制度から除外する。
再生可能エネルギー熱利用については、普及政策が極めて不十分で、近年減少してきた。今後は政策を強化し熱利用でも拡大する。産業、業務、家庭の低温熱利用において、再生可能エネルギー熱利用と、再生可能エネルギー電力100%のヒートポンプ電化を優先、以後普及政策ではこの2点とする。
再生可能エネルギー運輸燃料について、量的拡大はむずかしいが、地域の持続可能な小規模のバイオ燃料は推進する。
2原子力
福島第一原発事故の反省から、原発はただちに廃止し、以後使用しない。新増設も行わない。
核燃料サイクルも行わない。
原子力政策では原発廃炉、福島第一原発の事故処理と原状回復・被害救済補償、放射性廃棄物の管理に専念する。
3化石エネルギー
気候危機回避のため、2030年にむけたエネルギー政策の重点として、石炭消費を削減する。
電力では石炭火力発電所を2030年までに全廃する。産業用など非電力用も鉄鋼原料炭など当面代替のない不可欠用途に限定し他は使用しない。これを政策により強力に進める。
石油についても、省エネで消費量を大きく減らすとともに、低温熱利用での再生可能エネルギー熱利用または電化による再生可能エネルギー電力利用、運輸燃料について電気自動車転換と再生可能エネルギー電力利用により、消費量を大きく減らす。
天然ガスは当面使用を継続する。輸入量、消費量、卸電力市場での取引などで需給を監視していく。
CCSは不要であり、技術開発も国としては推進せず予算もつけない。
4水素・アンモニア
2030年までの対策は既存技術の普及で行う。未完成技術の水素・アンモニアは2030年には原則として使用しない。2050年に向けては、国内再エネ電力の余剰分で製造した水素を高温熱利用、船舶航空燃料に使用し、脱炭素、再生可能エネルギー100%転換を行う可能性があるが、優先順位は太陽光・風力発電が飛躍的に、国内電力の50%以上に増加した後、2040年以降になると考えられ、当面普及策も必要ない。
化石燃料起源の水素アンモニアは、現状の肥料用アンモニアなどは継続するとしても、エネルギー利用は国産、輸入を問わず行わない。技術開発も国としては推進せず予算もつけない。
5熱
熱利用の脱炭素化は重要である。
産業、業務、家庭の低温熱利用において、再生可能エネルギー熱利用と、再生可能エネルギー電力100%のヒートポンプ電化を優先する。地域熱利用などを通じた再生可能エネルギー熱利用も進めインフラ整備を行う。
産業用のヒートポンプ化が可能な温度領域は再生可能エネルギー電力100%のヒートポンプ電化で、再生可能エネルギー転換を行う。
産業用高温熱は、当面は省エネと、鉄鋼高炉以外の脱石炭により排出削減を行う。
意見14
該当箇所p38-39 2030年に向けたエネルギー政策の基本的考え方
意見
気候危機回避のことが基本にない。
再生可能エネルギー普及に否定的なことが書かれる一方で大型電源集中リスクとそれによる停電の総括や対応がない。
1200-1236行目を削除し以下に修正する。
気候危機回避のための排出削減を2030年に向けたエネルギー政策の基本とする。
また、福島第一原発事故の反省を踏まえ、原発をただちに廃止する。
全体として省エネルギーによりエネルギー消費を削減する。
大型電源集中が2011年3月の東日本大震災時の停電、2018年9月の北海道胆振東部地震時の停電をまねいた。この反省のもとに、安定需給確保のためにも地域分散型エネルギーへの転換を行う。
再生可能エネルギーを電力、熱利用とも飛躍的に拡大する。再生可能エネルギー電力拡大のため優先接続、優先給電政策を抜本的に強化し、また再生可能エネルギー普及の障害となり大型電源優先となっている政策を廃止、電力システム全体の柔軟性を高め、変動性再生可能エネルギーの普及を行う。これらにより大量導入を行うことを通じて再生可能エネルギーコストを低下させる。一方、再生可能エネルギー電力の乱開発、地域外資本が地域と紛争を起こしながら開発する例があり問題である。今後はゾーン制により建設可能地域と不可地域を分け、また再生可能エネルギーの地元優先政策を導入していく。
意見15
該当箇所p40 需要サイドの徹底した省エネルギーと供給サイドの脱炭素化を踏まえた電化・水素化等による非化石エネルギーの導入拡大
意見
省エネは非常に重要であるが、1990年以降停滞している。所管官庁にその事実認識もなくエネルギー基本計画を策定しようとしているのは問題である。再エネ電力を使いこなし系統の柔軟性を高めるデマンドレスポンスなども重要だが、水素やアンモニアは不要である。
1237-1266行目を削除し以下に修正する。
(3)需要サイドの省エネルギーと供給サイドの電化・再生可能エネルギーの導入拡大
日本の省エネは1990年以降停滞してきた。2011年の原発事故を契機に改善しているが、省エネ可能性を引き出しているとは言いがたい。業界自主計画まかせにしてきた産業部門を中心に、また長らく新築の断熱規制も導入してこなかった業務家庭の建築も含め、政策の抜本的な改定が不可欠である。
加えて、太陽光発電等の変動型再生可能エネルギーを使いこなすため、デマンドレスポンスを組み込む。
意見16
該当箇所p40 1徹底した省エネルギーの更なる追求
意見
タイトルが大げさなので修正する。省エネ停滞の理由のひとつは業界自主計画まかせにあるが、それを継続することになっている。
1266-1408行目を削除し以下に修正する。
1省エネの強化
(a)産業
産業部門のエネルギー効率は1990年以降停滞を続けてきた。1990年代後半から業界自主計画が始まったが改善していない。省エネを実現するため、制度の抜本的な改正が必要である。環境省に制度設計を依頼し、キャップ&トレード型排出量取引制度を導入、当面の排出枠は省エネトップランナーで燃料は天然ガス使用で割り振り、効率が悪くかつ石炭を使用する事業者に早期に対策を促す。
省エネ法ベンチマークについて、事業所単位に改める。また事業所の半分以上が規制値を達成した時点で規制改正対象とし2年以内に新規制を定める。これにより、多くの事業所が規制達成をしたまま規制値が改善されない弊害を防止する。また、事業所ごとに達成していない理由について問い、結果を開示する。また事業所ごとの値をホームページで公表し、有価証券報告書に記載を求める。また、再エネ賦課金減免制度は省エネ法ベンチマーク達成事業所に限定し、対策を促す。
補助金を安易に支出し、企業が補助金待ちになっていることも問題である。投資回収年の短い対策には補助金は出さないこととする。
(b)業務家庭
住宅・建築物の省エネルギー化について、これまで規制化していなかった300m2未満の住宅、建築物について2025年から規制化を行う。規制基準は全ての新築建築物について2025年から2030年まではゼロエミッションビル、ゼロエミッション住宅の断熱水準とし、2030年以降はさらに強化する。ゼロエミッション住宅、ゼロエミッションビルかどうか、断熱基準適合かどうかを不動産広告に掲載させ、また契約の際には重要事項説明に加え、断熱性能を確実に伝達し、消費者が断熱の悪い建築の契約を避けることができるようにする。
エネルギー消費危機のトップランナー規制について、業務部門、家庭部門それぞれのエネルギー消費量の1%になったことが判明すれば自動的に規制対象とする。また新規販売の半分以上が規制値を達成した時点で規制改正対象とし2年以内に新規制を定める。これにより、エネルギー多消費の機器の規制化が遅れたり、多くの機器が規制達成をしたまま規制値が改善されない弊害を防止する。
特に効率の悪い製品・機種については製造販売を禁止する。風呂湯沸かし用電気温水器についてはヒートポンプ式給湯器と同じ規制区分とする。
業務部門の省エネ法ベンチマークについては原則として物理的意味が明確な床面積あたりエネルギー消費量に改め、事業所単位に改める。また事業所の半分以上が規制値を達成した時点で規制改正対象とし2年以内に新規制を定める。これにより、多くの事業所が規制達成をしたまま規制値が改善されない弊害を防止する。また、事業所ごとの値をホームページで公表し、有価証券報告書に記載を求める。また、業務部門についてもベンチマークが定められている業種については再エネ賦課金減免制度は省エネ法ベンチマーク達成事業所に限定し、対策を促す。
家庭むけの省エネ法対象製品については、商品販売時に、商品価格と10年間の標準的光熱費の和、期間トータルコストの表示を義務づける。また、規制値よりエネルギー消費が2割以上大きい商品は販売を禁止する。
©運輸
運輸部門については、エネルギー消費の大部分を占める自動車の省エネについて、当面は内燃機関車の省エネトップランナー化、電気自動車化を規制によって強化する。
2030年には乗用車の電気自動車の新車販売割合50%、2035年には100%とし、内燃機関車の販売を禁止する。また、2040年にはバス、トラックの内燃機関車の販売を禁止する。
意見17
該当箇所p44-45 非化石エネルギー導入拡大に向けた需要サイドの取組
意見
再生可能エネルギーと明記する。
1410-1455行目を削除し以下に修正する。
2 再生エネルギー導入拡大に向けた需要サイドの取組
太陽光発電、風力発電の変動性再生可能エネルギーの導入拡大のため、デマンドレスポンス、需要シフトが必要である。電気料金では現在行われている深夜電力料金がそのシフトを妨げている原因であることから経過措置を定めてこれを禁止し、太陽光の出力の大きい昼間の需要シフト、朝および夕方の需要を下げることを円滑に行う制度改正を行う。
意見18
該当箇所p46-49 蓄電池等の分散型エネルギーリソースの有効活用など二次エネルギー構造の高度化
意見
蓄電池は家庭向け普及はとりやめ、防災用を兼ねた産業用、業務用および系統用とする。
1456-1561行目を削除し以下に修正する。
蓄電池は系統用、及び防災用途および今後のデマンドレスポンス、需給調整用などを意図した産業用、業務用に限定し、系統全体の柔軟性向上に貢献する。デマンドレスポンス、系統用蓄電池を優先し、容量市場は廃止する。
意見19
該当箇所 p50 再生可能エネルギーの主力電源への取組
意見
再生可能エネルギー普及の最大の障害である送電線接続問題の解決が不十分である。
また、既存技術の普及が不十分であるのに、宇宙太陽光のような問題あるプロジェクトまで書かれている。
1562-2095行目を削除し以下に修正する。
再生可能エネルギーについて、最優先の原則をエネルギー基本計画の基本原則に位置づけ、普及政策を抜本的に改定する。
1再生可能エネルギー発電所優先接続の新設と、優先給電の強化
再生可能エネルギーの普及の最大の問題は送電線接続問題である。
これを解決するため、接続申し込みのある再生可能エネルギー発電所は、発電所建設費用の2倍以上の系統コスト増強費がかかるなどの明確な理由がない限り、接続を断ってはならない。
また送電線接続費が予測がつかず根拠も不明確で高く、送電会社の所有になるのに再生可能エネルギー発電事業者に請求されることも問題である。これについては費用負担を制度化し、再生可能エネルギー発電事業者の負担は敷地境界までとし、そこから送電線までは送電会社が負担し、託送料金で支払う。再生可能エネルギー発電事業者が接続線を所有する希望がある際にはこの限りではない。
また、送電線に接続されている電源は再生可能エネルギー発電所から給電、送電線に受け入れる。全ての再生可能エネルギー発電所は、原子力より優先し、また火力よりも、火力の最低出力分を含めて優先する。また、送電会社が電力需要の誤差調整のために再生可能エネルギー発電所の出力調整を行うことを禁止する。
送電線の入札は、再生可能エネルギー電力が参入できる時期、具体的には前日夕方以降に設定する。安全を名目に事実上大型電源以降を閉め出す電制電源ルールなど再生可能エネルギーの普及を妨げる規制はただちに修正・全廃する。
2再生可能エネルギーの大量導入によるコスト低減
固定価格買取制度がここ数年、短期のコスト削減を意図して修正された。その結果、2000kW以上の大型太陽光発電の導入量は増え、後述のように条件が不利になった10〜50kWの太陽光の導入量は半減した。また入札に移行したのに単価は小型の買取単価より1円/kWh下がったのみで、価格低下の効果がなかったといえる(2018年後期のみ約2円/kWh)。10kW以上で小型に位置するものはトップランナー買取価格、自家消費義務づけなど不利な条件を押しつけられ導入量が2015年比で半分以下に下がった。導入量低下は中期のコスト削減を妨げることになり、ここ数年の制度修正は全て失敗だったと言える。
再生可能エネルギーのコストは、大量導入を通じて下げることを大方針とする。
これに従い、入札制は当面廃止する。FIP以降も中止する。太陽光の買取価格で「トップランナー」単価を廃止、平均単価に戻し、普通に工事をすればもとがとれるようにし、導入量を増やす。また自家消費義務もただちにとりやめ、10kW未満も含め全量買取とする。一方、大型太陽光は単価が小さいにもかかわらず入札制以降前は同じ単価が適用され、極めて問題であった。今後は10kW以上について5区分程度に分け、大型ほど安い単価を設定し、コスト低減、賦課金の低減を即効的に行う。また現在未稼働の大型太陽光はただちに今年度認定と読み替え、今年度の買取単価に改める。未稼働太陽光の権利売買は禁止する。
3地域との共生、地元優先と乱開発防止
地域外の事業者の大型太陽光などで乱開発が生じ、また地元との紛争も生じ、問題になっている。
これを防止するため、2つの政策を導入する。
ひとつはゾーン制である。全ての土地を再生可能エネルギーの立地可能地域と禁止地域に分ける。太陽光における森林や斜面など、発電種ごとに必ず禁止とする土地も定める。同時に、再生可能エネルギー発電所が立地できるよう、県または市町村ごとの立地可能地域面積割合も定める。さらに、地元の意思決定参加を求める。これについては環境省が「ゾーニング基礎調査」などを実施してきているので、環境省の地球温暖化対策推進法で具体化する。
もうひとつは地元最低出資要件である。洋上風力を含め、地元出資者の最低割合を定める。種別ごとに割合を定め、太陽光は100%、陸上風力は50%、洋上風力は10%、その他は50%などとし、今後検討を行う。
意見20
該当箇所 p65-p74 原子力政策の再構築
意見
原子力については、福島第一原発事故を経験し、また放射性廃棄物の長期管理のめども全くたたないことから、今後運転を継続し廃棄物を蓄積し続けるのは将来世代に対し無責任極まりないと言える。
原発は速やかに廃止、核燃料再処理と核燃料サイクルは中止、核融合も商業化しないことを方針化すべきである。
2096-2457行目を削除し以下に修正する。
1 原子力政策の出発点
東京電力福島第一原子力発電所事故について、政府及び原子力事業者が「安全神話」に陥り、悲惨な事態を招いたことを片時も忘れず、真摯に反省するとともに、このような事故を二度と起こさないようにしなければならない。
発生から10年が経過した現在も、統計で約2. 2万人、実際はそれ以上の人々がふるさとを追われており、事故収束に向けた取組も道半ばの状況である。
東京電力柏崎刈羽原子力発電所において発生した核物質防護などの問題、関西電力と地元自治体との資金のやりとりの不明朗な関係を始め、国民の信頼を損なう事態がその後も続いている。
政府や事業者は、こうした現状を正面から真摯に受け止め、原発の廃止、廃炉作業と放射性廃棄物の10万年におよぶ保管にむけ、最大限の努力と取組を継続して行わなければならない。
2原子力事業について
原子力発電所は直ちに運転を停止する。保管方法すら定まらない放射性廃棄物をこれ以上出さないためにも即時運転停止が求められる。
核燃料再処理は今後行わない。核燃料サイクルは中止、関連施設はエネルギー基本計画策定後ただちに停止する。関連の研究も今後は基礎研究にとどめ、エネルギー特別会計から支出することはない。
核融合は商業化しない。関連の研究も今後は基礎研究にとどめ、エネルギー特別会計から支出することはない。
福島第一原発の事故後の措置については長年かけて実施する。なお、アルプス処理水の海洋放出は行わない。
放射性廃棄物の管理は、今後は再処理をせず、高速炉を用いた減容化なども実施せず、保管方法について国民的な議論を行っていく。
意見21
該当箇所p75-77 火力発電の今後の在り方
意見
火力発電については気候危機回避のため、石炭火発の2030年までの確実な全廃、2050年の他の化石燃料火発の確実な全廃を方針化すべき。水素・アンモニアは発電には不要である。
2460-2562行目を削除し以下に修正する。
気候危機回避のため、火力発電のCO2削減は優先して取り組む課題である。IEAの2050年排出ゼロへの道のマイルストーンでも、先進国はCCSなしの石炭火力を全廃、2035年には先進国は電力全体をゼロエミッションするというマイルストーンが例示されている。日本はCCSには頼らずにこのIEAのマイルストーンに遅れることなく対策を行う。
石炭火力発電所を2030年までに全廃する。このうちUSC、IGCC以外の旧型石炭火力は2025年までに全廃する。石炭関係の副生ガス火力(コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)についても石炭混焼は止めていく。石油火力も停止し、必要なら非常用に残し他は廃止する。製油所ガス火力は当面継続する。
天然ガス火力は当面使用を継続する。卸電力市場での取引などで需給を監視していく。
水素アンモニア発電は必要がない。国として技術開発は支援しない。
CCS、CCUについては化石燃料火力を2050年までに全廃方針であり、発電事業で必要がない。
容量市場は廃止する。2024年入札についても取りやめる。
石炭火力発電所の輸出への公的支援は新規既存、直接間接にかかわらず全て停止する。また、公的支援を受けない石炭火力発電所の輸出、運用引き受けなども停止を勧告する。来年度以降、石炭以外の火力発電所の輸出への公的支援も停止する。
意見22
該当箇所p78-80 水素社会実現に向けた取組の抜本強化
意見
水素、アンモニアは再生可能エネルギー由来についても当面不要で国産に限る。化石燃料起源の水素は不要。対象用途は高温熱など再エネ転換だけとする。
2563-2674行目を削除し以下に修正する。
(8)2030年以降の水素利用可能性と、2030年までの不使用について
再生可能エネルギー由来の水素は、2050年脱炭素化、再生可能エネルギー100%化に、必要になる可能性がある。しかし、気候危機回避にはこの10年の既存技術の普及が最優先であり、2030年まで再生可能エネルギー水素も出番がない。化石燃料水素は不要である。
水素利用を将来検討する対象は、既存技術による再生可能エネルギー転換の難しい高温熱利用と、船舶航空燃料である。この水素は国内太陽光発電や風力発電の余剰電力で製造する。化石燃料水素は使ってはならない。また再生可能エネルギーであっても水素を輸入する必要もない。水素利用の時期は2040年以降と考えられ、2030年までの政策で水素を考える必要はない。
意見23
該当箇所 p81 エネルギー安定供給とカーボンニュートラル時代を見据えたエネルギー・鉱物資源確保の推進
意見
化石燃料は今後縮小、新規の炭田油田ガス田開発は論外である。また、国が自主開発目標を掲げ、企業が真に受けて座礁資産にした場合、この節を記入した担当部署と責任者は責任を取れるのだろうか。
海外の化石燃料資源を求める政策は計画的な終了へのプロセスを示すべきである。
2675-2892行目を削除し以下に修正する。
化石燃料消費は今後できるかぎり早期に縮小する。とりわけ石炭のうち一般炭、およびウランの消費をすみやかにとりやめる。海外の化石燃料確保政策は抜本的に転換し、計画的に縮小していく。
政策による新規炭田、油田、ガス田探査をはじめ、化石燃料鉱山支援政策は廃止する。
意見24
該当箇所p87 化石燃料供給体制の今後の在り方
化石燃料国内供給は、計画的に縮小していく。
2895-3075行目を削除し以下に修正する。
石油備蓄、LPガスについては消費量を政策により計画的に削減し、備蓄も縮小していく。
ガソリンスタンドについても計画的に縮小し、労働者の再エネ省エネ産業などへの公正な移行について確実に実施していく。
都市ガスについては、再生可能エネルギー由来のガスについて具体的な展望と安価な供給ができるかどうか業界の検討を2025年頃まで待ち、できなければ低温熱利用の全面的な再エネ電力化または再エネ熱利用化政策を導入する。2050年には化石燃料由来の都市ガスは認めない。
意見25
該当箇所 p92 エネルギーシステム改革の更なる推進
意見
電力システム改革は発送電分離が法的分離に留まるなど、不十分な部分を今後修正する必要。
一方卸電力市場高騰は制度設計の失敗で、寒波やLNGとは基本的に関係ない。
3078-行目を削除し以下に修正する。
1脱炭素化の中での安定供給の実現に向けた電力システムの構築に向けた取組
(a)卸市場の強化について
電力システム改革では、発電送電の分離が法的分離にとどまっている。今後資本分離とする。また、発電、配電、小売についても分離する。大手発電から大手小売に卸市場を通さずに相対でやりとりされ市場が不透明になるのを防止する。
2020年12月下旬から2021年1月下旬にかけ、電力卸市場価格が1ヶ月間高騰した。電力卸市場は電力システム改革、小売全面自由化を支える重要な市場でありながら、市場設計が悪く、かつ市場監視も大手発電事業者からの売りの減少に監督官庁が対応できず、最大価格を引き下げるまで半月、価格全体が落ち着くまでさらに半月、1ヶ月を要する大惨事となった。寒波やLNG供給は二次的要因にすぎず基本的に関係なかった。また2020年度に関西電力の原子力発電所のトラブルが多発し、関西電力のLNG在庫を下げ、12月下旬の売り量を引き下げる要因になった可能性がある。
この教訓として、先の発電送電の資本分離と、発電と小売の分離が必要である。また、日頃の監視体制を強化し、不審な動きにただちに警告する体制が必要である。
(b)供給力制度の全面見直しについて
従来、常時も需給逼迫時も消費を抑えることが十分になされないまま、大型発電所を余分に持つことが奨励されてきた。近年、電力システム改革が進み、発電事業者が旧型火力をあいついで休廃止してきた。これ自体は歓迎すべきことで、今後も旧型石炭火力を中心に早期廃止が求められる。
需給確保の観点からは、省エネ、エネルギー効率化による需要削減と、再エネ拡大、変動再エネにあわせたデマンドレスポンスの拡大と、揚水発電、蓄電池などを組み合わせ、余剰の大規模発電所を大量にもつことなく対応する。
容量市場は廃止する。将来必要性が認められた際には、通常時も運転を許す今の体制ではなく、非常時に限って運転する制度に転換する。
調整力市場は、出力変化速度の大きさが重要であり、三次調整に至るまで、原子力と石炭火力は対象外とする。
© 再生可能エネルギー等の脱炭素電源の調達ニーズの高まりにも対応できる事業・市場環境整備
再生可能エネルギー拡大のため、導入目標を定めることも必要である。
具体的には現在高度化法で小売電気事業者に課している再エネ割合目標を発電事業者に移すことが必要である。
非化石価値取引市場で再エネと原子力を混ぜて証書をつくるのをやめ、原子力は排除した再エネ市場に改組する。
意見26
該当箇所 p100-103 国際協調と国際競争
意見
化石燃料調達やCCS、技術開発などが多く、肝心のパリ協定の実施がない。
3385-3514行目を削除し以下に修正する。
(12)脱炭素にむけた国際協調
パリ協定に基づき、またその努力目標に位置づけられた気温上昇1.5℃未満抑制を日本も目標とする。海外クレジットなどに頼らず、国内での排出削減を確実に行う。
またこれまでの石炭火力輸出支援など他国の排出量を増やす政策を中止する。国際協力は省エネと再生可能エネルギーに限定する。
意見27
該当箇所p104-107 2030年度におけるエネルギー需給の見通し
意見
気候危機回避のため、2030年度までの削減の確実な実現が不可欠である。
しかしここの記述は明確な目標ではなく、国家目標との関係が不明確。予測だけでは参考資料ならともかく計画本文に書く意味がないので目標に変えるべき。
3517-3607行目を削除し以下に修正する。
(13)2030年度におけるエネルギー需給とエネルギー起源CO2排出量についての目標
2030年のエネルギー政策の第一の目的は気候危機の回避である。このため再生可能エネルギー最優先の原則で、政策を抜本的に転換する。以下に、2030年目標を定める。
エネルギー起源CO2排出量は2030年度に2013年度比で60%以上削減する。これは森林吸収、二国間クレジットなど海外クレジットに依存することなく達成する。
一次エネルギー供給について、省エネにより2030年度に2013年度比で40%以上削減する。
原子力は廃止する。再生可能エネルギー割合は40%以上を目指す。石炭は5%以下に削減する。
最終エネルギー消費について、省エネにより2030年度に2013年度比で30%以上削減する。
発電について、原子力発電所はただちに廃止する。
石炭火力発電所は2030年までに廃止する。また、USC、IGCC以外の非効率火力は2025年までに廃止する。
石油火力発電所は2030年までに停止、非常時以外は稼働しない。
再生可能エネルギー発電所の発電量割合を50%以上とする。
電力消費について、省エネにより2030年度に2013年度比で25%以上削減する。
意見28
該当箇所 p108-123行目 2050年カーボンニュートラルの実現に向けた産業・競争・イノベーション政策と一体となった戦略的な技術開発・社会実装等の推進
意見
技術開発でなく普及、社会実装の準備をすべきである。
3608-4192行目を全て削除する。
意見29
該当箇所 p124 国民各層とのコミュニケーションの充実
抽象的でかつ一方通行に見える。エネルギー政策への意思決定参加方針と、経済産業省のもつエネルギー関連情報の開示方針、政府には開示義務を示す。
4193-4278行目を削除し以下に修正する。
2030年排出大幅削減にむけ、エネルギー選択、対策選択が重要であるが、これまで国が集めている情報開示が不十分であった。今後は国の持つ温暖化エネルギー関連情報を原則として公開する。以下は例示である。
省エネ法に基づく定期報告の事業所ごと、エネルギー種ごとの消費量とCO2排出量、生産量あたりエネルギー消費量
電気事業者のもつ発電所設備容量と運転、休止情報
市町村ごとの電力消費量、石炭、石油、天然ガス、都市ガス消費量情報(経済産業省が収集し市町村に報告するとともに公表)
都道府県別の1時間ごとの発電内訳情報、1時間ごとの部門別の消費内訳情報(経済産業省が収集し都道府県に報告するとともに公表)
これらにより、企業、自治体の対策、計画策定に寄与するとともに、研究者、市民の分析と対策提案にも寄与し活発な議論を期待する。
次に政策への意思決定参加である。
エネルギー基本計画は閣議決定だけという規定であるが、今後は国会での質疑を求めるとともに、タウンミーティングを積極的に活用する。次回のエネルギー基本計画からは、全都道府県で時間を切ることなく実施し、熟議を重ねる。
今後エネルギー政策は主なものは政令省令告示を止め、法律本文に規定する。またその方針化にあたりタウンミーティングを積極的に活用する。
審議会は、直接の利害関係者関与をやめるため、業界からの委員選出をやめ、ヒアリングで要望を聞き、委員は公募することにする。