決議 日本政府の核兵器禁止条約への即時署名と批准を求める
2021年1月22日、核兵器禁止条約が発効した。条約への参加国は増え続け、現在86ヶ国が署名し、54ヶ国が批准している。条約発効により核兵器は国際法上違法とされ、その開発・生産・保有・実験・使用等、核軍備の維持強化に関するあらゆる活動が禁止されるに至った。これは、核兵器廃絶への歴史的一歩であり、世界の反核平和運動の大きな到達点である。
ところが、日本政府は核兵器禁止条約に敵対し続けている。日本政府は「核保有国と非保有国の橋渡し役」を自称してきたが、実際には、核保有国に核廃絶を迫るどころか、核抑止力を肯定して米国の核兵器体制の維持強化に積極的に協力している。
4月16日に行われた日米首脳会談でも、共同声明において、日米同盟の一層の強化、日米同盟及び地域安全保障を一層強化するための日本の防衛力強化、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安保条約下での日本防衛を表明した。さらに、中国を名指しで非難し、「台湾海峡」「両岸問題」に言及した。すなわち、核兵器国たる米中両国の軍事的緊張を高め、その一方に軍事的に加担する約束をしたのである。まさに、日本政府は、米国の核兵器政策、対外政策にどこまでも従ってこれを支える役割を果たしており、核兵器の禁止、平和外交推進とは対極の姿勢をとり続けている。
日本政府はまた、「黒い雨訴訟」に示されるように、被爆の事実にさえ背を向け、被爆者援護の責務を果たそうとしない。また、ビキニ被災から67年を経てなおも全容調査、被災者救済、補償に踏み出そうとしていない。こうして、政府は核兵器禁止条約に明記された被害者支援義務にも背を向けているのである。
日本科学者会議は創設以来、核兵器廃絶と被爆者・核実験被災者援護にはたすべき科学者の責務を深く自覚して活動してきた。私たちは、被爆国日本が、核兵器の被害者援護に背を向け、核兵器をむしろ延命させ、東アジア地域はもちろん地球規模の平和構築を阻害する役割を果たしていることを看過できない。
今年8月には延期されたNPT(核兵器の不拡散に関する条約)再検討会議および核兵器禁止条約の第1回締約国会議も予定されている。これ以上、日本政府が核兵器禁止、被爆者・核実験被災者援護をさまたげ続けることは、被爆国として許されない。日本が米国の「核の傘」から抜け出し、率先して核兵器禁止条約に署名・批准することこそが、国際社会が日本に期待することであり、日本国憲法が求める外交のあり方にほかならない。
私たちは、政府及び国会に対し、核兵器禁止条約に直ちに署名し、批准するよう求める。私たちはまた、非核平和をめざす全国的・国際的な取り組みと共同して、「核兵器のない世界」を必ず実現していく決意を改めて表明する。
日本科学者会議第52回定期大会