国および都道府県の公的試験研究機関は科学技術の発展や普及に大きな役割を担っていますが、“行政改革”により様々な組織・運営の改変や縮小が加えられて来ました。 近年その動きはさらに加速され、国立研究機関の大多数は非公務員型の独立行政法人へと改変が進んでいます。 都道府県の公設試験研究機関も同様の動きが見られます。 こうした中で様々な問題が顕在化し、従来公的試験研究機関が担って来た国民や地域住民の福祉向上、科学技術の発展や普及また環境や平和への貢献といった役割を十分果たせなくなって来ています。 こうした公的試験研究機関の現状を明らかにし、将来に向けた取り組みを提起する活動を行っています。
国が設置する試験研究機関(国研)の多くは独立行政法人(独法)化されています.独法化以降国研では,一貫して「効率化」すなわち交付金と人員が削減されています.その一方,アベノミクスの成長戦略では,イノベーションの牽引役を期待されています.独法制度の枠内で国研がその期待に応えるよう「機能強化」をはかるため,安倍政権の手で独法通則法が改正されました.それに基づき今年4月から国研は,独法でありながら「国立研究開発法人」と名乗ることが義務付けられました.名称に「開発」の文字が入ることが示すように国研に対しては,大学等の基礎研究(シーズ)を事業化に結びつける「橋渡し研究」が求められています.交付金減額が進む中でこの要請に応えるためには,競争的資金への依存を強めざるを得ず,国研本来の役割や在り方からの乖離が強く危惧されています.公設試験研究機関でも一部独法化されていますが,その在り方は,一律でなく設置者によって大きな差があり,それぞれに特有な問題を抱えています.
国公立試験研究機関問題委員会は,研究機関における諸問題を解明し解決の道を探る活動を進めています.その成果は,『日本の科学者』誌上や,総合学術研究集会などで発表してきました.当委員会は,国民や地域住民の財産である国公立試験研究機関の現状を改善することを通じて,科学者の社会的責任を果たします.研究機関に所属する会員のみならず,行政機関や研究機関を研究対象としている会員諸氏の当委員会への参加を呼びかけます.
(小滝豊美)
独立行政法人(独法)化された国立試験研究機関は,つねに「効率化」を要求され,人と予算の不足に悩み,加えて過重な評価に追われて疲弊しています.公立試験研究機関にも同様な側面を持つ地方独立行政法人制度の導入が進められており,「独法」制度の矛盾が我が国の研究機関を蝕んでいます.国公立試験研究機関問題委員会では,研究機関における諸問題を解明し解決の道を探る活動を進めています.その成果は,「日本の科学者」誌上や,総学における分科会などで公表してきました.
政府は昨年暮れに新たな独法改革の基本方針を決定しました.その中で研究機関は,「国立研究開発法人」と位置づけられ,相応のガバナンスが要求されています.また,いくつかの研究機関の統合が示され,これと平行して「日本版NIH」の設置が予定されています.さらに,「世界最高水準の成果を目指す特例」として「特定国立研究開発法人」の設置も検討されています.このような動きは,今後公立試験研究機関にも波及する可能性があります.研究現場の意見を反映しないこれらの「改革」は,研究機関をめぐる環境をさらに悪化させる可能性があります.状況の分析とそれに基づく課題解決への取組みは,当委員会の活動の根幹として,臨機応変に続けていく必要があります.研究機関に所属する会員あるいは,行政機関や研究機関を研究対象としている会員の皆さんの当委員会への参加を呼びかけます.国民あるいは地域住民の財産である国公立試験研究機関の現状を改善することを通じて,科学者の社会的責任を果たす活動を一緒に進めませんか.
(小滝豊美)
JSA学術体制部合同シンポジウム(2008年1月、東京) で試験研究機関の独立行政法人化の問題点を発表。 日本科学者会議第17回総合学術研究集会で分科会 「国公立試験研究機関の現状と法人化の問題点」 を企画(2008年11月、名古屋)。 日本の科学者2009年Vol.44, p53 「全国委員会コーナー」で委員会活動を紹介(2009年3月)。
国立試験研究機関の独立行政法人移行10年目に当たって、 日本の科学者Vol.45, No.3(2010年3月)に公的試験研究機関のかかえる問題について、 「国公立試験研究機関の現状と法人化の10年--新たな動きに向けて」と題する特集を掲載しました。