日本の科学者2009年Vol.44, p53 「全国委員会コーナー」

明らかになってきたこと

国公立試験研究機関問題委員会

 国立および地方自治体の公設の試験研究機関(国公立研)は、行政改革の名の下に様々な組織の改変や縮小を受けてきた。近年その動きはさらに加速され、国立研究機関は独立行政法人(独法)化に引き続き非公務員型独法へと改変が進んでいる。2001年の独法移行時には57法人中23法人が9法人に統廃合されたが、2007年にはさらに研究開発型独法16法人を6法人に整理統合することが閣議決定されている。これに伴って運営費交付金の毎年一律削減、非民主的な組織運営や成果主義の導入、人員削減に加えて評価や外部資金獲得などに関連した仕事量の増加、長期的基盤的研究の軽視、若手研究員育成の困難、任期付き任用による雇用の不安定化や人材の使い捨てなど様々な問題が出てきた。自治体の公設試験研究機関でも地方独立行政法人化など同様の動きが進行している。

 当委員会は昨年JSA学術シンポジウム(1月東京)や第17回総合学術研究集会の分科会(11月名古屋)で国公立研の現状と独法化の問題点について報告と議論を行った。これらの中で、法人化や行革により国公立研が国民や地域住民の福祉の向上と科学技術の振興という公的試験研究機関が担ってきた役割を果たせなくなりつつあること、また法人化は国公立研に大学法人や民間研究機関と共通の課題をもたらしていること、ポストドク問題などの若手・女性研究者問題にも深く係わっていること、さらに医療・教育の荒廃や貧困・格差社会といった社会問題とも同じ根を持っていることが明らかになってきた。国公立研の現状を改善し発展させるためには、日本科学者会議の取組みだけでなく、広範な教育関係者、労働組合や大衆とも共同して、政治・経済を国民や地域住民のためのものに転換させることが必要である。  (井村 治)


2009年9月11日 作成