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jjs:readerscomments2023 [2023/10/02 13:32] mikasatoshiyajjs:readerscomments2023 [2023/11/17 13:17] mikasatoshiya
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 ====== 2023年 ====== ====== 2023年 ======
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 +<HTML><h2><a href="https://jsa.gr.jp/04pub/0401jjs/2023contents.html#m2023-08">2023年8月号</a> 下田正「核兵器とは―文系学生たちに語ってきたこと」を読んで</h2></HTML>
 +本論文が指摘しているのは,核兵器に反対している学生の核に対する知識のなさが問題ということだろう.こういうことは,核兵器に対する知識ということだけでなく,いろいろな分野でも取り上げられる必要があるのではないだろうか.
 +物事を解決していくためには,熱い心だけではなく解決できるための冷静な頭がいる.まさに,「知は力である」ということを忘れてはならないことを論文は示唆している.
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 +(三重支部・菊谷秀臣)
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 +下田氏の書かれたものはよくできているが,ヴァイツゼッカーの評価についてナチスドイツの外務次官の息子ということだけでは誤解を生む.
 +『自然』1977年2月号「ハイゼンベルクの物理学」p37,『数理科学』2012年9月号 特集ハイゼンベルクなど参照.言うまでもなく『部分と全体』(みすず書房,1974年)は必読文献.中でもp.350「政治と科学における論争―1956―1957年」.
 +西独の核武装化に反対してハイゼンベルクらとともに最も中心的に運動したり,父の評価についても,弁護の意見書も評価されるものがある.
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 +(愛知支部・牛田憲行)
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 +<HTML><h2>第16回オンライン読書会「核兵器とは―文系学生たちに語ってきたこと」に参加して</h2></HTML>
 +私も数年前に小さい私立大学の教養教育の教員をしていて,大学の教養改革のころは教養教育学会(後の大学教育学会)に参加して,「あるべき大学教育とは」などの大学教育について考えていました.しかし,その後改革の名のもとに,教養教育は軽視され,縮小されていったように思います.勤務していた大学でも少子化のもとで大学存続のために,知識詰込み,資格取得重視,国家試験中心の専門学校化していったように感じます.ぜひ大学の教育や学生の変化などについても特集してください.
 +数日前のNHKのクローズアップ現代で広島の平和教育の資料からはだしのゲンをはずしたことについて放送していましたが,教員に取材した中で,あえて教育委員会の方針に反対しないと言っていたのが気になりました.岐阜支部ではかつては高校教員の方もJSA に参加して民主的な教育活動に熱心でした.現状はよくわかりませんが,今は個々の教員が多忙の中ばらばらで,上に管理されているのかなあという印象を持ちました.そういうことが,高校教育にも影響しているのではないかと読書会を聞いて思いました.
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 +(岐阜支部・太田和子)
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 +<HTML><h2><a href="https://jsa.gr.jp/04pub/0401jjs/2023contents.html#m2023-07">2023年7月号</a> 特集「天文学・宇宙物理学30年の進展」を読んで</h2></HTML>
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 +今号の特集のタイトル「天文学・宇宙物理学30年の進展」で難解であることが予想されたが,読んでみて改めて,本特集論文の多くは『日本の科学者』が想定していると思われる読者層(評者も含めて)にはなかなか理解が難しく支持が得られ難かったのではないかと思われた.
 +評者は曲がりなりにも学生時代は「物理学」を専攻してきたし,宇宙論も関心があった分野で,専門の物理分野を離れた後も新書などの解説はいくつか読んできている.この30年の宇宙物理の,コンピュータ科学・技術の発展と宇宙論的精緻化に支えられた進化には目を見張るものがあるし,本特集でもそれを実感した.しかし,本誌の読者に寄り添った視点が薄い気がするのはいかがなものか.過去半世紀にわたる生物学や情報科学の進展・進化は凄まじいが,それらに比較すると宇宙分野はやや身近さの点で異なる気がする.本誌の特徴に沿って,もっと読者に配慮した内容,特に記述の工夫,が欲しかった.図表も,論文からの引用ではなく,もっとわかり易いものにする必要があったのではないか.本特集は,興味深い分野が選ばれたと思うので,一層このようなことが望まれるのではないか.
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 +(福井支部・小倉久和)
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 +本特集は勉強意欲を掻き立てるもので,分かるように書くというのも分かるけれども,これを契機に読者が勉強するというのは良いと思うので,こういう特集を肯定的に捉えている.
 +池内さんの記事にあるように,軍事研究との関連で情報が非公開になってしまうというのは非常に不利益が大きいと感じている.色々な人の違った立場での観測・考えは,間違っているものも含めて,それが後の時代にやっと整理されて科学的な理解を助けることがある.宇宙の観測は未知なものが多いので,いつ何がどのようにして事物の理解につながるかわからないのだろう.現代の宇宙観測でとらえられた現象は,現在わからなくとも,のちに重要なものになったりするのだと思う.
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 +(東京支部・川口力丸)
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 +原発汚染水(ALPS処理水)の海洋放出について
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 +岸田首相は,国内外でIAEAから原発汚染水(ALPS処理水)は「国際安全基準に合致」していると喧伝している.汚染水の海洋放出を危惧する者としては「どうすればよいのか?」研究者の意見を求めたいところだが,原子力市民委員会は,7月18日見解を発表した.「IAEAは,原子力利用を促進するための機関であるため,・・環境保護や人権といった観点からは必ずしも中立的機関とはいえない.IAEAは,海洋放出以外の選択肢について評価しておらず,海の生態系や漁業への長期にわたる影響を評価しているわけでもない」と批判している.更に,8月22日には緊急声明「関係者との合意を無視した海洋放出決定は最悪の選択である」を発した.そして,以前から主張していた陸上での大型タンクでの保管,またはモルタル固化による処分を選択すべきと提言している.
 +『日本の科学者』2014年1月号の本島勲論文は,「増え続ける汚染水を安全に保管」「汚染水を増加させている地下水の流入の抑制」が前提で,「地域住民・漁民の声,科学者・研究者の総意を結集する場」を求めていた.8月9日,JSA原子力問題研究委員会は「「海洋放出」に代わる「大型タンクによる陸上での保管」などの科学的な他の方法を検討すべき」と声明している.「科学的な他の方法」について,詳細な提言を検討すべきではないかと思う.
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 +(東京支部・増澤誠一)
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 +<HTML><h2><a href="https://jsa.gr.jp/04pub/0401jjs/2023contents.html#m2023-06">2023年6月号</a> 若松倫夫「「行動する人々」を描き続けて」を読んで</a></h2></HTML>
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 +いつも美しい表紙挿絵をありがとうございます.QRコードによってカラーで見ることができるというのは驚きでした(若い人には常識でしょうが).複雑なグラフは白黒ですと判別しにくいのですが,この手法を是非取り入れてほしいと思いました.
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 +(岐阜支部・中須賀徳行)
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 +2023年6月号浅岡美恵「気候危機と人権-気候危機を回避するための挑戦」を読んで
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 +本論文で「イベント・アトリビューション」という手法を知った.統計学で,2つの集団に対し,同じ確率変数に対するそれぞれの分布の特徴を比較検討するとき,平均値や分散などの特徴量の異同を検定したりする.このとき,外れ値(異常値)はデータから除かれることが多い.イベント・アトリビューションでは,分布の外れ値の値や頻度などついて積極的に評価し,2つの集団間で差異があるか区別できるかどうか検定している(この場合は,非温暖化と温暖化のそれぞれの仮定の下でのデータ集団)ように見える.この理解が間違っていなければ,評者の知らなかった,外れ値を積極的に使う統計的検定手法として新しい手法のような気がして,非常に興味を覚えた.
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 +(福井支部・小倉久和)
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 +2023年6月号中嶋哲彦「教育基本法「改正」の認識論と解釈論――民主教育のための戦略」を読んで
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 +教育基本法は,改定されてしまった.教育基本法の悪くなった面ばかりがクローズアップされることが多いのは事実である.悪くなったことを批判する論考は多く存在する.
 +しかし,本論文では悪くなったから全く価値がないというだけでよいのかという問題提起をしているのだ.これは,私にとって意外な観点であったし,考えさせられるものであった.
 +著者は,新教育基本法を逆手に取って,民主教育を推進していくにはどうしたらよいのかという問題提起をしている.この見解は,新教育基本法の件ばかりでなく,いろいろな場面でも必要だ.
 +そういえば,著名な心理学者のアドラーの「大切なことは,何が与えられているかということではない.与えられているものをどう使いこなすかだ」と言っていた言葉を思い出す.
 +教育基本法は変えられてしまって,やや反民主的になった面はあるだろう.しかし,その使い方によっては私たちの武器ともなりうるのだ.
 +本論文は,「新教育基本を,我々が望む方向へと活用しようではないか.」と力強く呼びかけている.教育を法という立場から論じるにあたって優れた内容をもっており,それゆえ教育に携わる人々の指針となることは間違いないだろう.
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 +(愛知支部・菊谷秀臣)
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 +2023年6月号特集「教育の自由,学ぶ権利を取り戻す」を読んで
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 +大阪の事例が多く取り上げられているけれど,大阪にとどまらず,GIGAスクールも論じられていて,ナショナルなレベルとローカルなレベルが混ざった議論になっているので,整理して論じる必要性があった.
 +大阪の教育行政がひどい,ということについては同意をするけれども,歴史的には貧困地域もあって格差がひどい状態で,競争主義的競争をやっているという二重の問題がある.その二重性を踏まえ,大阪の教育行政を見ていく必要がある.
 +大阪の教育行政がひどい,ということに同意するのだけれども,本田由紀さんが書いている通り,学習集団が中学・高校では,偏差値で輪切りにされ,同質的な集団で形成されている状態になっている.大阪は,全体でみるとひどいのだけれども,言ってしまえば金持ち・できる人たちからすると,そういう教育制度が受け入れられているということなのだろうか.
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 +(東京支部・川口力丸)
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 +<HTML><h2><a href="https://jsa.gr.jp/04pub/0401jjs/2023contents.html#m2023-05">2023年5月号</a> 特集「民主主義」の基盤としての地域アーカイブズ」を読んで</h2></HTML>
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 +「小樽運河問題-解けない疑問」は知らなかった事が多々あり,さらなる事実の発見だった.学生時代寮の友人らと夜中に札幌を出て朝焼けの小樽着,港で揚げたてのかまぼこに舌鼓を打ち,小樽運河にもよく出かけたものだ.結婚して東京に住んでからも帰省時には何回も子連れで運河やガラス工房などを訪ねた.
 +親友の画家,佐藤善勇さんは1970年後半から足しげく冬の運河に通い,解体されるかもしれない運河の製缶工場を描き続けた.2020年11月27日の北海道新聞夕刊は見開き2面で『佐藤善勇 私の「小樽運河愛」』を特集した.私の書斎の壁面には佐藤さんから譲り受けた「小樽運河の製缶工場」と題する油絵が架かっている.
 +長年にわたる市民団体の頑張りで既定の道路計画が中止され保存された小樽運河,運河のない小樽は考えられない.いま,神宮外苑の無謀な開発が進められている.ノッポビルが林立する外苑は想像できない.
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 +(東京支部・橋本良仁)
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 +<HTML><h2><a href="https://jsa.gr.jp/04pub/0401jjs/2023contents.html#m2023-04">2023年4月号</a> 特集「科学を戦争の道具にさせないために」を読んで</h2></HTML>
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 +政府の軍事研究,情報統制は,先端技術に焦点が当たっているかに見えるが,先端技術のみが軍事利用されるわけではない.小生は,放牧地における牛を加害する吸血性アブの発生と周囲の植生との関係を調査したことがある.周囲の植生からアブの発生をある程度推定できる.もちろん,生物多様性の解明や放牧牛の被害軽減のためである.
 +しかし,このような調査も,軍事と密接な関連がある.国内でもアブの大発生によりダム工事がほとんど中止状態になった例があるように,アブの発生は,人の野外行動に甚大な影響がある.アブが発生するような林地や草原で軍事行動を展開するには,アブ対策は重要な要素となるだろう.アブの種類は,地域ごとに特徴があるので,それぞれ地域での綿密な調査はことさら必要となる.とはいっても,極東地域では共通する種は多い.
 +アブの生態解明は,このように軍事作戦と直結する.実はこれに気が付いたのは,日本の最も高名なアブの分類学者が,陸上自衛隊衛生学校に所属していることを知った時だった.うかつであったが,なかなか気づけない.現代の戦争は,総力戦で国のすべてを動員し遂行する.それに抗い阻止するのが,市民そして科学者の役割だ.そのなかで『日本の科学者』の役割は大きい.
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 +(茨城支部・森本信生)
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 +2023年4月号特集「科学を戦争の道具にさせないために」を読んで
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 +軍事研究への研究者の動員体制の整備,米中の経済的・軍事的対立を背景にした経済安全保障制度の導入など,最近の日本政府の動きには危機感を持っており,特集論文執筆者,河村豊さんのお話を聴いてみようと,オンライン読者会に参加しました.
 +この問題では,第二次安倍政権以降の動きが激しいと記憶していましたが,河村さんの報告で,2000年代初頭から動き(現時点から見れば助走だったと言える)があったことが指摘されたので,質問し詳細な回答をいただきました.そういう流れがあって,第4期科学技術基本計画(2011年~15年)に「安全保障」が明記されたのだと再認識しました.
 +軍事研究と研究者・技術者倫理も話題になりました.研究開発は究極的には人々の幸せのためという位置づけは漠然と共有されていると思いますが,国家間の対立があり,現実に戦争など軍事行動で人命が失われているもとで,自分の研究がどこでどう使われるのか,以前よりも切実なテーマになっているのではないでしょうか.皆さん指摘されていますが,大学など研究現場で議論されることが大事だと私も思います.
 +その際,国家の論理や企業の論理の枠内だけで考えるのではなく,学術の論理あるいは基本的人権と民主主義などを対置させ,それぞれの論理の間の協調や対立を確かめながら議論すると良いのではないでしょうか.この点で,学術会議の2017年声明は重要な示唆を与えてくれていると思います.
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 +(東京支部・鈴木剛)
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 +2023年4月号特集小金澤論文「日本の軍事力強化の方針とその危険性」を読んで
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 +米RAND研2021年報告に岸田政権が急対応したのかと思って支部読書会で取り上げたが,その後,24総学の同著者による同タイトルの報告で,7月の防衛白書で防衛3文書の改定が予告されていたこと,および,その安全保障の枠組みを安倍元首相が唱導した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)であることを知り,未来工学研究所の2011年度以降の年次報告を調べたら,安倍内閣下の外務省の補助金による委託研究が2017?19年度,2020?22年度と続き,それらの成果報告書が防衛3文書改定に直接つながっていた.今の米中対立に煽られた憲法無視の愚かな軍事的対応は,安倍内閣がその方向に大きく舵を切り準備が重ねられていたのだ.未来工学研究所については知らなかったので,人脈等も含めてもっと調べる必要を感じた.
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 +(京都支部・大倉弘之)
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 +新自由主義と軍事大国化
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 +5年で43兆円および敵基地攻撃能力という軍拡は,何によってもたらされているのか.戦後日本の大衆民主主義は自民党政権を変えることはできなかったが,安保闘争によって軍事的小国主義が刻印された.1990年代以降の大転換を背景に,世界的な市場秩序を新自由主義的・権威的に維持するために,対米従属と軍事大国化が強化された.現在,米中対立を背景とした日米同盟強化路線の延長線上で,戦争法および敵基地攻撃能力,改憲への動きが生じている.国鉄解体,総評・社会党ブロックの解体,無党派層の大量創出,小選挙区(比例代表並立)制,自民党幹事長権限強化がこの動きを支える仕組みである.しかしそれだけで,これだけの「暴走」が説明できるのだろうか?
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 +(東京支部・佐藤和宏)
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 +Fermilab,CERN での長年の巨大加速器による国際共同研究を通して
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 +4月号坂本論文の見解に大いに賛同する.参加研究者の出身大学とか所属大学とかよりも,その研究者の役割が一番重要であり,巨大研究組織の民主主義の原則が一番大切であることを身をもって体験してきた.「軍事的安全保障研究」や日本学術会議への政治介入等が顕在化してきた情況において,研究・学問の自由の本源的意義から今日的情況が多面的に批判・分析された本号は,時宜にかなった特集となっており,おおいに学ばされた.
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 +(愛知支部・牛田憲行)
  
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jjs/readerscomments2023.txt · 最終更新: 2024/05/14 14:34 by mikasatoshiya

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