見解・声明など » ウクライナ侵攻への声明 | PDF
戦争に反対する国際社会や市民社会の声を踏みにじって、2月24日、ロシアはウクライナへの軍事侵攻を開始しました。これは、国連憲章や国際法を踏みにじる行為であり、主権国家に対する侵略です。既に、ウクライナ市民が多数犠牲になっています。私たちは、ロシアのウクライナ侵略に断固抗議するとともに、ロシアにいかなる理由があるにせよ、ウクライナ市民に対する人道的見地から直ちに軍事攻撃を中止し、ウクライナから撤退することを求めます。
以下に、私たちの主張を簡潔に述べます。
1. 今回のロシアの軍事侵攻は、ウクライナに対する侵略です。旧ソ連はパリ不戦条約(1928年)に調印することで「国家の政策の手段としての戦争」を94年前に放棄したはずです。ロシアは旧ソ連の権利や義務を継承する国家として、パリ不戦条約を遵守するべきです。また、ロシアのウクライナ攻撃は、侵略戦争を違法化した国連憲章や国際法にも反しています。例えば国連憲章第6条は、国家間の紛争の平和的解決を目指すことを義務付けています。ロシアは国連安全保障理事会常任理事国として、自らの抱える紛争を、国連憲章や国際法の枠組みによって解決するべきです。2月25日の国連安保理ではロシア非難決議案がロシア自身の拒否権行使により否決されましたが、「侵略非難」は80か国を越え、ロシアの行為は国際的にも孤立しています。
2. プーチン大統領は、開戦演説において、ロシアが核兵器大国であることを誇示し、ウクライナに対する核兵器の先制使用を示唆しました。さらにロシア軍の抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じましたが、これは当然、核兵器部隊を指すものと理解されます。ロシアはまだ批准・加盟していませんが、128か国の賛成という国際的な核兵器廃絶の潮流により昨年発効した核兵器禁止条約は、核兵器による威嚇を禁止しています。私たちは、「市民と科学者が力を合わせ『核の時代』を終わらせよう」をテーマとする原水爆禁止2021年世界大会科学者集会の実行委員会として、また平和問題を専門に扱う日本科学者会議の委員会として、核の時代を終わらせるための国際社会・市民社会の努力を踏みにじるプーチン大統領の発言に強く抗議します。
3. ロシア軍は、ウクライナ国内にあるチェルノブイリ原子力発電所を真っ先に占拠し、スタッフを人質に取っていると報道されています。原子力施設を外国軍が襲撃・占拠した史上初の暴挙です。このことにより、チェルノブイリ原子力発電所の管理が適切に行われず、貯蔵されている核物質が環境中に漏出したり人為的に拡散されたりする事態が起これば極めて危険であり、ロシアはこうした放射能汚染の脅威をウクライナや国際社会にすでに与えています。私たちは、このような暴挙を断じて許すことが出来ません。
4. 昨年12月の国連総会では、北京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて、1月28日(オリンピック開催7日前)から3月20日(パラリンピック閉幕7日後)まで五輪休戦期間とすると決議されました。ロシアはかつて、2008年の北京夏季オリンピック開会式当日にジョージア(グルジア)と軍事衝突を起こし、2014年のソチ冬季オリンピックの直前にもクリミア半島に軍事介入しロシアに併合する暴挙を行っており、五輪休戦決議違反は今回で3度目となります。平和の祭典・オリンピックおよびパラリンピックの精神を踏みにじる暴挙に強く抗議します。
5. プーチン大統領は、NATOの東方拡大がロシアにとって軍事的脅威であることやウクライナ国内での親ロシア系住民の人権抑圧について、これまで繰り返し言及しています。軍事同盟の解消、核兵器の廃絶、人権の尊重は平和で持続可能な社会の構築に不可欠であり、私たちは平和を希求する日本の学術団体として、日米軍事同盟の解消、核兵器禁止条約の署名批准、沖縄問題の解決などを日本政府に対して訴え続けてきたところです。しかし、軍事同盟や人権抑圧を理由に挙げようとも、他国への武力侵略を合理化することは決して許されません。むしろ、ロシアが国連安保理常任理事国でありながら国連憲章に反して武力侵攻を行い市民を死傷させていること、1994年ブタペスト覚書を反故にしたこと、核兵器禁止に敵対していることなどは、ロシアのウクライナへの軍事侵攻に正当化の余地がないことを示しています。
以上