事務局長談話
2025年6月16日
日本科学者会議事務局長 竹内 智
日本学術会議を解体し、時の政府の意向に従う組織へと改編することを狙った「日本学術会議法人化法案」が6月11日の参議院本会議で、自民党、公明党、日本維新の会の3党の賛成多数により可決成立した。立憲民主党、国民民主党、日本共産党、れいわ新撰組が反対した。衆参両院の委員会審議では、学術会議に対する政府の介入を可能とする二重・三重の仕組みや今回の法改正の発端となった学術会議推薦の会員任命拒否問題、「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は解任可能」とする坂井担当大臣の発言等の数々の問題点がより明確になったにもかかわらず、十分な審議時間を確保することなく、両院の委員会及び本会議での採決が強行されたことに対し、日本科学者会議は強く抗議するものである。
とりわけ、会員任命拒否問題については、国会審議中の5月16日に「首相が任命拒否できる」という政府解釈の変更過程を示す文書の開示を東京地裁が命じた。これにより学術会議に対する政府の介入について新たな事実の解明への道が開かれ、委員会審議においてもその実態についての質問が繰り返し行われたが、政府・与党側はまともに答えることを拒否するという不誠実な対応に終始した。そのうえ、他の特殊法人にはなく、学術会議の運営に介入することだけを目的として設けられた二つの「助言委員会」の削除を求めた立憲民主党の修正案についても一切聞く耳を持つことなく否決するに至った。また日本維新の会は審議の過程で、日本学術会議に対する根拠のない中傷を繰り返すとともに、今後の軍事研究への協力を強要するなど、学術会議の独立性や学問の自由を真っ向から否定する態度をあらわにし、与野党逆転下の衆議院において法案の通過に手を貸すという犯罪的な役割を果たした。このような国権の最高機関としての役割を放棄したと言うしかない国会での審議結果を我々は絶対に認めることはできない。
今後、学術会議の運営について法律の具体化が進む中で、制度設計や新たな会員任命の手続きについても政府の介入が予見されることから、日本科学者会議としては他の学術団体や民主的な労働組合・市民団体さらには多くの市民と連携しつつ、引き続き監視の強化と介入を許さない運動に取り組む決意である。加えて7月の参議院選挙をはじめとする国会情勢の変化も見据えながら、「学術会議解体法案」の再改正も視野に入れた運動を展開していく方針である。