日本科学者会議第56回定期大会決議
日本学術会議の事実上の解体につながる「日本学術会議法案」は、広範な学術団体や市民の反対の声を無視して、熟議には程遠いわずか14時間の委員会審議を経て、与党2党及び日本維新の会の賛成で5月13日の衆議院本会議を通過した。日本科学者会議は事務局長談話(本年1月17日付)及び幹事会声明(同3月15日)において、会の運営及び会員の選考に対する外部からの介入を可能とする様々な仕組みが組み込まれたこの法案が、政府から独立した科学者・研究者の立場からの政策提言や勧告を不可能にするものであることを指摘し、このような法案の国会への提出に反対する姿勢を明確にしてきた。また他団体とも連携して日本学術会議「法人化」反対署名に取り組むと共に、各支部においても反対声明の発出や、同法案が学問の自由を破壊し、政治への従属を強いるものであることを明らかにする緊急集会やシンポジウムの開催等の活動を行ってきた。
それに加え、国会での審議開始後も、「日本学術会議法案を憂慮する学協会・研究者 院内集会(4月11日)」「日本学術会議法案に反対する緊急院内集会(5月20日)」に参画すると共に、国会前での「人間の鎖」抗議行動にも取り組んできた。国会審議のなかでは、5月9日の内閣委員会での坂井内閣府担当大臣「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は、今度の法案で解任できる」との答弁に典型的に見られるように、本法案が学術会議の運営への露骨な政治的介入をめざすものであり、菅首相(当時)による2020年の学術会議推薦会員6名の任命拒否の論理をより徹底し、衆議院の附帯決議にも盛り込まれた「?本学術会議の独?性、?主性及び?律性を尊重すること」との趣旨とは正反対の代物であることがより明確になった。折からの世界的な軍事力増強、軍事費増大の流れのなかで、日本においても軍学共同を推し進め、武器輸出を含む軍需産業の強化を図る動きが露骨になりつつあり、このような法案の成立を許せば、軍学共同に対する防波堤の役割を果たしてきた日本学術会議の根本的な変質につながり、日本を再び戦争への道へと引きずり込む第一歩ともなりかねない。
日本科学者会議は、改めて本法案への反対を定期大会の名をもって宣言すると共に、今後参議院での審議を通じて上記のような問題点をより明確にし、本法案を廃案に追い込むべく、他の学術団体及び市民と連携し、更に取り組みを強めていくことを表明するものである。