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声明

日本学術会議の変質化をねらう「法人化」法案を撤回せよ!

2025年4月3日
日本科学者会議福井支部幹事会

発端は2020年の菅義偉首相(当時)による学術会議会員候補6人の任命拒否である。「任命は形式的行為」との慣例化された法解釈を踏みにじって学術会議の人事に介入した、違憲、違法の暴挙であった。従って、やるべきなのは学術会議会員の任命を拒否された6人の任命をすみやかに行うことによって法律違反の形態を解消することでなければならない。

にも拘わらず政府は、任命拒否を「学術会議の在り方」の問題にすり替え、岸田文雄内閣(当時)が2023年6月に学術会議を「国から独立した法人とすること」を閣議決定して、内閣府に「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会(以下、有識者懇)」を設置し、具体的な法人化を検討してきていた。しかるに“独立性を高めるための法人化”などというのは単に目を欺くためのものでしかありえない。法人化で独立が尊重されるわけでないことは、この間の国立大学の法人化の例によってすでに十分検証済みである。そうした中、2024年12月20日、有識者懇が、学術会議を法人化するための最終報告書「世界最高のナショナルアカデミーを目指して」を発表するに至った。これに基づき政府は今通常国会で日本学術会議法の改悪を目論んでいる。

内閣府が説明する「法案の概要」によれば、現行の日本学術会議法を廃止し、「法人化」のための新しい法律が制定される。現行法の「科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」(前文)するという設立の原点は消し去られ、もっぱら「我が国の発展に貢献することを目的」とするとされる。

現行法の前文に基づいて、日本学術会議は繰り返し「軍事研究には加担しない」と主張してきたが、新しい法律は「国の発展に貢献させる」ために科学者を軍事研究に加担させることを狙い、学問の自由を侵害するものである。これは、ゆるされない。

そして新組織は特殊法人として主務大臣(首相)の監督の下に置かれる他、目的を達成する仕組みとして、①首相任命の監事を置き学術会議の業務を監査、②内閣府に置く評価委員会が学術会議の活動に意見をのべる、③外部者でつくる会員選定助言委員会の意見を聴いて会員候補を選定――するとしている。まさしくこれでは学術会議が幾重にも政府の管理下におかれ、政府の意向に沿って活動する組織となる以外になく、およそ国の方針に逆らうようなことは言いにくくなり、その影響はいずれ学術界全体に及ぶと懸念される。さらに、特殊法人化によって現行の国庫負担がなくなることは、学術会議自らが国や産業界などから資金集めをしなければならなくなることを意味し、その面で学術会議の発する助言が政府の意向や産業界の利益におもねるものにならざるを得ない。

これらは、「科学者の代表機関」として「独立して職務を行う」(学術会議法)という現行制度の根幹部分を否定するものにほかならない。

上記により、日本学術会議の変質化をねらう「法人化」法案の国会上程に強く反対し、その法案撤回に向けて、断固たたかうことをここに宣言するものである。