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決議 政府権力による日本学術会議の変質策動に強く抗議し、あらためて昨年任命されなかった6人の任命を求める

 2020年10月、菅義偉首相は、日本学術会議の選考委員会の議を経て推薦された第25期新規会員候補(105人)のうち6人の任命を理由も示さず拒否した。学術会議は10月2日に総会で、会員候補者が任命されない理由の説明を求め、6人の速やかな任命を要求する「要望書」を採択し、提出した。この問題は、学術の分野を超えて国民的な批判の的となり、12月段階で、学協会をはじめとした、法曹関係、文化団体、労働組合その他の1000を超える団体が抗議声明を公表した。それは、学問の自由への攻撃が、表現の自由、思想・信条の自由、信教の自由、そして広範な市民的自由への攻撃に直結していることを敏感に感じ取ったからである。
 一方、菅首相の学術会議会員の任命拒否に呼応して、自民党はプロジェクトチームを組織して「日本学術会議の改革に向けた提言」をまとめ、菅首相に提出した。「提言」は「おおむね一年以内に具体的な制度設計を行い、すみやかに必要な法改正を行った後、現行日本学術会議第25期の任期満了時(3年後)を目途に新組織としての出発が望ましい」と結んでいる。この「提言」の求める「改革」の狙いは、学術会議を国の機関でない形の組織にし、同時に学術会議の独立性・自律性を奪って学術会議を変質させ、政府の施策に従わせることにある。
 井上信治担当大臣は任命拒否撤回を求める学術会議に対して、設置形態の改革を求めた。これに対して6人の任命を求めつつ学術会議は2020年12月16日に自主改革案の「中間報告」を提出した。そして、2021年4月の学術会議総会に向けて、6人の任命を求める声が強まった。4月19日には元学術会議会員の気象学者増田善信氏が呼びかけた、学術会議「任命拒否」撤回署名6万余が内閣府へ提出された。そして、4月20日には上野千鶴子・佐藤学・前川喜平氏ら13氏が呼びかけた「学問と表現の自由を守る会(仮称)声明」に益川敏英氏をはじめとする著名人125人が賛同、菅首相、井上大臣、内閣法制局、政権与党、野党、市民に要請する形で出された。また、任命拒否された6氏は、行政機関に自らの情報を開示させる「自己情報開示請求」を内閣府や内閣官房に行った。法律家1162人も行政文書開示請求を行った。
 学術会議の第182回総会を前に、梶田隆章会長は記者会見で、「検討を進めれば進めるほど、いまの設置形態で(役割を)発揮できるように作られているとわれわれは改めて認識したところです。任命されていない6人については組織の設置形態の議論よりも先に解決すべき問題です」と表明した。そして、4月22日の総会において、改めて「学術会議会員任命問題の解決を求めます」という声明を採択すると同時に「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」も採択した。そこで「特殊法人にする余地があるが、主務大臣からの独立、職員・経費の確保に課題がある」と述べ、「現在の国の機関としての形態は、日本学術会議がその役割を果たすのにふさわしいものであり、それを変更する積極的理由を見出すことは困難です」としている。また、国際活動の強化、科学的助言機能の強化、情報発信力の強化、など5点について今後も検討していくことを表明している。
 日本学術会議の組織の存在意義は、社会や政治が危機的状況に直面したとき、専門的知見をもちより、総合的な立場から科学的検証と科学的根拠を基礎に判断し、社会に対して警鐘を鳴らすことにあり、権力機構の一部にこそなければならない。そして現在の日本社会と政治の現実に照らせば、学術そのものの役割が今ほど求められているときはないのである。
 日本科学者会議は、菅首相に日本学術会議の要請に応じてその推薦する6人の新規会員の追加承認を行い、早急に自ら招いた違法状態を解消することを要請する。また、日本学術会議および日本のアカデミーが、将来にわたって「専門家として社会の負託に応える重大な責務」を果たし続けていくための組織であり続けること、そしてそのために適切な組織形態である現行の位置づけを維持し続けることを強く要求する。

2021年6月13日
日本科学者会議第52回定期大会