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2025年

2025年10月号特集論文「学校教育および教員養成における理科教育の課題とこれからの市民科学―熱概念理解度調査からの一考察」を読んで

身近な熱現象を正しく理解できていない生徒・学生が多いという観点から,本論文は記述されている.この記述にもあるように,確かに生徒・学生における実体験は希薄かもしれない.
しかし,経験したことと科学的思考力とは同じではない.これは,常識と科学の対立という観点も大切ではないだろうか.常識で考えていたことが,科学的な思考と真逆になった時,どちらが真実に近づくことができるかが問われるのではないか.天動説を例にとれば,常識では地動説になることはない.しかし,科学的事実は天動説を否定する.
熱についての学習では,まず熱とは何か,が明確にとらえられなくてはならない.そのためには,原子分子の運動への理解が不可欠だ.これを抜きにして熱を教えようとすればおかしくなる.小学校から,原子論の立場に立って教える必要はないのだろうか.
熱に対する生徒・学生の実態をふまえたよい論文であったと思う. (三重支部:菊谷秀臣)

2025年9月号特集論文「軍拡・経済安保と学問の自由―すでに始まっている学問の自由の破壊」を読んで

全体的系統的な分析で,「適性評価」の危険性を含め,会内外への普及が求められる.「5 秘密特許制度の復活と研究の自由の侵害」で,「出願者には秘密の基本部分は知らされない.しかし,罰則付きの守秘義務が課」されるとの指摘は重要である.特許出願非公開制度では,恐らく産業界の強い危機感と要求の結果,非公開とする「発明の内容」と「記載されている箇所」が通知されることとなった(内閣府令).しかし,「保全指定をする理由/しない理由」は説明しない,と明言されている(内閣府のQ&A).その結果,本当に「安全を損なうおそれがある」記載のカムフラージュなどの目的で,他の記載も非公開対象(=開示を処罰)とされる可能性を否定できない.形式的に秘密の対象を知らせるが,まさしく「秘密の基本部分」は知らせない.研究発表や研究交流で自主規制を余儀なくされるという,筆者の指摘は的を射ている. (東京支部・野村康秀)

2025年8月号特集論文「ひきこもりの長期・高齢化と家族への支援―ひきこもりつつ豊かな人生を」を読んで

ひきこもり実態調査で本人(145名)と家族(466名)の調査をしていますが,本人調査と家族調査に重なりはあるのでしょうか.
ひきこもりが長期化して高齢化している実態を知りました.就労自立を目標にしないで,その人の生き方を支援するというのは,大切なことだと思いました.実際にそのような支援活動も行われていることを知りました.しかし,なかなか支援が届いていない人が多いことは,問題だと思います.まわりの人もそういう実態を知って,地域で支援していくことも大切だと思いました. (岐阜支部・太田和子)

2025年1月号特集「フリースクールを考える ー公教育制度のゆらぎと生きる・育つ権利」を読んで

全体としては、フリースクールを子どもの居場所づくりという視点からとらえた記事が多く、現状の学校教育になじめない子どもたちがいるという事実をみれば、これはもちろんその通りで、この点に、フリースクールがもつ大きな意義がある、ということは疑問の余地はないと思う。 同時に、フリースクールをオルタナティブ教育の一翼を担うものとしてとらえるならば、フリースクールにおける教育を学校教育として認めることと、法令によって担保されている学校教育との関係が問われる等の課題があるように思う。 そして、これらのことを含めて、今回の特集は、フリースクールの問題を考えることが、通常の学校のあり方を問うことにつながらざるを得ないという思いを強くもった。ぜひ、本特集に続く特集の企画をお願いしたい。 (千葉支部・尾高進)