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statement:20220820_hokkaido_kokuso

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安倍晋三元首相の国葬に反対する声明

岸田首相は、来る9月27日に安倍元首相の国葬を行うことを閣議決定した。「国葬に法的根拠がないにもかかわらず、国会に諮ることなく政府の独断で決めた」と報じられている (『毎日新聞』7月23日)。吉田茂元首相の前例があるとのことであるが、その時にも皇室の「大葬」をまねた手続きが問題視された。自由と民主主義を国是とする国として、故人の弔いは国が行なうべきことではなく、近親者の自由な意思によって行われるべきものである。憲法19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」とうたっている。個々人の内心の自由は最大限尊重されるべきであるが、政府が「国葬」を強行することはこの良心の自由を侵しかねないものである。

安倍元首相は、「憲法改正」など特定の政治思想を持った政党党首であり、それに沿って7年半、強権的な政治を推し進めることによって世論の分断を進めた人である。また、「森友学園・加計学園・桜を見る会」に象徴される政治の私物化疑惑に対して不誠実な回答を繰り返し、政治不信を拡大した人である。その政治上の功罪は今後も冷徹で多方面にわたる検討吟味を経たあとで明らかにされるべきことであるが、しかる後においてさえ、人によってその評価が異なることは避けられないであろう。このような事情から、たとえ宗教色を消したとしても、国家行事として元首相を弔うことは人々の内心の自由を侵害する恐れがあるばかりでなく、今後必要となる多面的で率直な政治的検証と評価を拘束し委縮させることになろう。

また、元首相を襲撃殺害した犯人は、「霊感商法」など反社会的活動が裁判で認定された 旧統一協会(世界基督教統一神霊協会 現・世界平和統一家庭連合)への恨みをはらすため実行したと供述しているが、現・元閣僚を含む多数の自民党国会議員が旧統一協会の支援を受けていたことが明らかになっている。旧統一協会は、その見返りに自分たちの集会に自民党議員を出席させたり挨拶を流したりして、政権政党との友好関係を誇示し、自らの活動を拡大するために利用していたという。反社会的活動が、いまだに指弾されている宗教団体への対応として極めて不適切と言わざるを得ない。

政府は政治の現場において今回のような悲劇を繰り返さないために、国会に第三者機関を立ち上げ、本事件の背景や原因、経過などを総合的に調査分析してその結果を報告書として公表し、予防策を国会の場で十分に議論すべきである。

世論調査によると、国葬に対する反対が半数を超えている。政府は国葬を取り止め、真相の究明と国会審議に力を入れるよう要請するものである。

2022年8月20日
日本科学者会議北海道支部幹事会
statement/20220820_hokkaido_kokuso.txt · 最終更新: 2023/04/13 19:36 by michinobumaeda

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