日 時:2014年5月17日(土)午後1時30分〜4時30分 会 場:文京区民センター 2-C会議室 東京都文京区本郷4-15-14 テーマ:「心配される子どものからだと心」 趣 旨:豊かになったと言われる日本ですが、子どもの健康状態は視力の低下やアトピ ーの増大など、心配することがいくつかあります。WHOの強調する肉体的、精神的、社 会的な健康のためにも、日本の子どもの現状を把握し、これからの課題について総合的 に考えます。 講 師:野井真吾(のい しんご)氏(日本体育大学・教授) 1968年,東京都生まれ.東京理科大学・専任講師,埼玉大学・准教授,日本体育大学 ・准教授を経て現職.子どものからだと心・連絡会議 議長.学校保健学,教育生理学 ,発育発達学,体育学を専門領域として,子どもの“からだ”にこだわった研究を続け ている.主な著書に,『新版からだの“おかしさ”を科学する』(かもがわ出版),『 子どもの体温と健康の話』(芽ばえ社),『子どものケガをとことんからだで考える』 (旬報社),『ここが“おかしい”!? 子どものからだ』(芽ばえ社),『学校で実践 !子どものからだ・心づくり』(教育開発研究所),『子どものからだと心白書』(ブ ックハウス・エイチディ),『きらきらキッズに変身』(かもがわ出版)等がある. JSA会員も会員でない方も、ぜひお誘い合わせておいでください。参加費不要です。 参加をご希望の方は、JSA(e-mail: mailあっとjsa.gr.jp 、Tel:03-3812-1472、Fax: 03-3813-2363)までご一報ください。 [チラシ]
2013年1月26日例会の報告をYoutubeでご覧いただけます。
20130126 UPLAN 放射能による農作物汚染の現状と課題 生井兵治氏
日 時:2014年3月8日(土) 13時30分〜16時30分 会 場:東京・アカデミー音羽(文京区) 3階学習室A テーマ:被災地の農業は今 講 師:林 薫平 氏(福島大学経済経営学類特任准教授) 西村一郎 氏(生協研究家、ジャーナリスト)【公開研究会】
日 時:2014年1月25日(土) 10時〜12時15分 会 場:東京・文京区民センター 2階会議室A テーマ:ネオニコチノイドの害と私たちの暮らし --農薬等人工化学物質の毒性新展開にどう対処するか-- 講 師:立川 涼 氏(愛媛大学・高知大学名誉教授)
日 時:2013年9月21日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:東京・アカデミー文京(文京シビックセンター地下1階)学習室 テーマ:「被災地宮城における農の復興」 講 師:冬木勝仁 氏(東北大学大学院農学研究科准教授)
日 時:2013年5月18日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:東京・文京区民センター 2階会議室B テーマ:「安倍内閣の新自由主義路線〜TPPと自民党農政の行方〜」 講 師:藤井庸義 氏(日本農業新聞)
日 時:2013年3月2日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:文京シビックセンター 3階会議室B テーマ:放射能汚染から食と農の再生を 講 師:石井秀樹氏(福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任助教)
日 時:2013年1月26日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:中央大学駿河台記念館 6階600号室 テーマ:放射能による農作物汚染の現状と課題 講 師:生井兵治氏(元筑波大学教授) 動画をyoutubeでご覧いただけます。20130126 UPLAN 放射能による農作物汚染の現状と課題 生井兵治氏
日 時:2012年12月1日(土) 午後1時30分〜4時00分 会 場:東京・森下文化センター 3階第2研修室 テーマ:「ほんとに大丈夫?BSE対策の大緩和!!…あなたは安心して食べられますか?」 講 師:山内一也氏(東京大学名誉教授)
日 時:2012年10月20日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:東京・森下文化センター 3階第2会議室 テーマ:水産物の放射能汚染 講 師:片山知史氏(東北大学農学研究科水産資源生態学分野教授)
日 時:2012年5月26日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:東京・明治大学リバティ・タワー 3階1031教室 テーマ:魚の汚染を考える--「魚の汚染」いま気になる微量の有害物質 話題提供:「日本の食と魚は今」 宮村光重氏(元日本女子大学) 「魚に及ぶ微量の有害物質とは」 小野塚春吉氏(元東京都健康安全研究センター) 「漁業の生産現場から」 山本浩一氏(21世紀の水産を考える会) パネルディスカッション:「これからの魚食を考える」 会場発言:本間喜久子氏(日本科学者会議公害環境問題研究委員会) 蓮尾隆子氏(家庭栄養研究会),他
日 時:2012年4月28日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:東京・四谷 プラザエフ(主婦会館)5階第2会議室 テーマ:震災と食糧・食・健康を考える 講 師:西村一郎氏(JSA食糧問題研究委員会委員長)
日 時:2012年1月28日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:東京・四谷 プラザエフ(主婦会館)5階 生協総合研究所第1・2会議室 テーマ:「低線量」放射線,内部被曝による健康障害 講 師:松井英介氏(岐阜環境医学研究所・座禅洞診療所所長)
【東京科学シンポジウム 震災・原発,食と暮らし分科会】 日 時:2011年12月3日(土) 午後1時30分〜5時30分 会 場:東京・立教大学(池袋キャンパス)10号館X-204教室 テーマ:東日本大震災が問う日本の食と首都圏の役割 報 告:「震災が問う日本の食と首都圏の役割」 西村一郎氏(生協研究家) 「放射能汚染と首都圏の消費者の立場--特に食品の『暫定規制値』に関連して」 生井兵治氏(元筑波大学) 「3.11東日本大震災以降の食と農に関わる活動と問題提起」 立石昌義氏(埼玉県農民運動連合会) 「森と海のつながりと都市住民の役割--里山・里海、魚付林・海中林からCSF(地域で支える森と海)へ」 林薫平氏(生協総合研究所) 「東電福島第一原発事故と生協」 原 英二氏 (JSA東京支部) 座 長:宮村光重氏(元日本女子大学),真鍋和裕氏((株)関東農産)
日 時:2011年9月10日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:東京・文京シビックセンター 4階会議室A テーマ:東日本大震災・福島原発事故--水・食品の放射性物質汚染とその対応を考える 講 師:池上幸江氏(大妻女子大学名誉教授)
日 時:2011年7月30日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:東京・アカデミー湯島 5階学習室 テーマ:家畜伝染病の深刻な現状と有効な対策--口蹄疫と鳥インフルエンザを中心として 講 師:津田知幸氏(動物衛生研究所企画管理部長)
日 時:2011年4月23日(土) 午後1時30分〜4時30分 会 場:東京・江東区 森下文化センター 2階第2・3会議室 テーマ:日本の食と農--どうした,どうなる,どうする 講 師:暉峻衆三氏(元東京教育大学教授,農業・農協問題研究所元理事長)
日 時:2010年12月11日(土) 午前11時〜午後0時30分(視察),午後2時〜5時(報告・討論) 視 察:江東区・豊洲新市場予定地 報 告・討論会場:東京・江東区 東大島文化センター 2階第5研修室 基調報告:汚染地への移転いいの?--築地市場の実情と先々を考える 「築地市場の移転計画に見る『科学』の歪曲」 坂巻幸雄氏(JSA東京支部・日本環境学会土壌汚染問題WG長) 「豊洲土壌汚染問題におけるリスクマネージメントとその課題」 佐藤克春氏(一橋大学大学院経済学研究科博士課程・フェリス大学非常勤講師)
日 時:2010年9月18日(土) 午後2時〜4時30分 会 場:東京・文京シビックセンター 3階会議室C テーマ:食品に含まれる化学物質のリスク―魚介類の 水銀・セレンの関係など重金属について― 講 師:渡邉 泉氏(東京農工大学大学院准教授)
日 時:2010年5月15日(土) 午後2時〜4時30分 会 場:アカデミー千石 2階B テーマ:食の安全と生協の今 講 師:原 英二氏(JSA東京支部会員)
日 時:2010年3月27日(土) 午後2時〜4時30分 会 場:文京シビックセンター 3階会議室C テーマ:日本における有機農産物認証システム--現状と課題-- 講 師:松本 憲二氏(日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA) 理事長)
日 時:2010年1月23日(土) 午後2時〜4時30分 会 場:主婦会館プラザエフ 5階第2会議室 テーマ:新政権の農政について 講 師:藤井庸義氏(日本農業新聞農政経済部記者、国会担当キャップ)
日 時:2009年11月29日(日) 午後1時30分〜5時30分 会 場:東京多摩・中央大学キャンパス テーマ:つなげよう生産と消費「東京の食と農」 報 告:1. 都市農地と市民の役割 (地域計画研究所・井原満明) 2. 水産資源における地産地消と環境 (都島しょ農林水産総合センター・小泉正行) 3. 生協産直の取り組み 日本生協連「産直レポート2009」から (生協総研・林薫平) 4. 学校給食での地産地消の取り組み (都教組栄養職員部・高宮三枝子) 5. 食生活相談から見えてきた学生の食 (大学生協事業連・高橋亮子)
(JSA食糧問題研究委員会 委員長 宮村光重)
2014年7月19日,食糧問題研究委員会は,家庭栄養研究会(家栄研)会長,阿部五百子氏を講師にお招きし,研究例会を開催しました.当日は,14名の出席者があり,DVD「放射線内部被曝から子どもを守るために」の上映と講演に引き続き,議論を行いました.
最初に,家栄研とはどのような団体であるのか紹介がありました.同研究会は,WHOの定義による「心と体と社会の健康」を活動の柱に, 安全な食べものと,日本の食文化に根ざした健全な食生活への願いから,『食べもの通信』を編集しています.そして,「汝の食を薬とし,汝の薬は食とせよ」と,ヒポクラテスの言葉が示す「食べる」意味の重要性を追求しています.
次に,阿部氏は,日本の食を取り巻く環境に, 多くの問題が発生していることを説明しています.例えば,人体に対する影響が十分に解明されていないにも拘わらず,「遺伝子組み換え食品」が市場に出回る一方,食品表示は,曖昧なままで,大変懸念される状況が続いています.TPPと食の安全の行方についても,依然として詳細は不明です.原発事故後は,放射性物質による食品汚染の問題も起きています.
そこで,家栄研では,様々な「健康を作る食べ方」を提案しています.「食べ方12ヶ条」では,@和食中心,A化学物質未使用の食材利用,B未精白の食材利用,C食材の丸ごと使用,D冷凍・加工食品を避ける,Eバランスの良い食事,F旬の食材利用,G国産の食材利用,H塩分控えめ,I砂糖の過剰摂取を避ける,J油控えめ,Kよく咀嚼し,過食を避ける,などを挙げています.
(本間圭吾)
福島第一原発事故により放出された放射性物質は農地や水などを汚染し,農作物に多大な悪影響を及ぼしている.こ の現状と課題について2012年1月26日に,元筑波大学教授の生井兵冶先生を講師にお招きし研究例会を開催した.一般 の参加も多く,会場は定員の40名を超え,この問題に対する関心の高さを示していた.
生井先生は豊富な資料をもとに農作物汚染のみならず幅広い説明をなされ,冒頭ICRP(国際放射線防護委員会)のリ スク評価の考え方はリスク・ベネフィット−コスト論に基づいており,また内部被ばくを考慮に入れておらず,内部被 ばくを重視するECRR(欧州放射線リスク委員会)の評価を採用すべきであることを強調された.
日本の行政については,事故の重大性を矮小化しようとする意図的な対応となっており,内部被ばくについてはほと んど無視状態,規制値の非科学性,放射能汚染調査の点数の少なさなどを指摘された.また検査体制については放射性 セシウムのみの調査で,ストロンチウム,プルトニウムの調査がほとんどなされていない点について批判的解説がなさ れた.
森林の放射能汚染の重大性や,未だ現状が不透明である海洋汚染の問題についても速やかな対応がなされるべきとの ことであった.
講演のまとめとして,国家的隠蔽体質を打破し,原発事故と放射性物質の対応への法整備,東電による汚染農地等の 補償,食品の徹底した検査とベクレル値の表示,民主的な調査診療体制の構築などの提言がなされた.
今回,一般参加者の協力により講演の様子がYou Tubeにアップされた.そのURLは次の通り. http://www.youtube.com/watch?v=XO1rKquR0eY(真鍋和裕)
2010年9月18日に開催した,道路環境などの重金属汚染・毒性を研究テーマにされる,東京農工大学・渡邉泉氏による講演の報告です.
氏は,冒頭で,化学物質がこれまでに6700万種,一日に3万種が新たに登録され,一方で,地球温暖化や環境ホルモンなどの影響を軽視する反環境本が数多く出版される現況を紹介された.そのような化学物質管理の重要さと困難さの中で,別立てで対策を取る必要を指摘され,水銀,カドミウム,セレンなど重金属の使用の歴史やその毒性と生体影響をくわしく紹介された.
水銀汚染では,産地の海域差や,種差が存在し,高次捕食魚であり長寿命(一般に体サイズが大)ほど高い水銀濃度となること.カジキ・マグロ類,タイ類,底生魚類,ウナギなどでは(クジラ・イルカ含め),総水銀で平均の10倍以上の蓄積があること,などを示された上で,日本の規制が,汚染の激しい魚種やクジラ類には適用されていないこと,家庭で消費の多い魚種と汚染の関わりから,事実上規制値が適用されない現状を指摘された.
さらに,無機水銀の毒性がセレン塩で軽減される動物実験から,水銀汚染を軽視する風潮が一部にあること.ヒトで,メチル水銀の解毒にセレンが有効か否かは,さらなる研究が必要であることを詳しく論じられた.カドミウムでは,かに・えびなど甲殻類の内臓への特異的な汚染があることを紹介された.
最後に,魚介類汚染の抜本的解決は,重金属の発生源対策が有効であること,ヒトへの影響低減を目的とする場合には,摂取制限が必要となると締めくくられた.
講演後の討論では,風評被害,生産者への配慮や,研究者の責務が議論され,討論打ち切りに座長が苦慮するほどに白熱した. (山口英昌)
「遺伝子組換え(GM)技術を斬る――植物の生と性の原理に基づき,GMイネ裁判との関連で」
2010年7月10日に東京・千石図書館(アカデミー千石)で,生井兵治氏(元筑波大学農林学系教授,植物育種学者)を講師として標記の研究例会が開かれ,遺伝子組換え技術に対する明確な批判を期待するJAS会員,消費者を含む非会員も参加して有意義な例会となった.
植物の生と性の原理について,実際の生物現象の多様性が豊富なスライドを用いて解説された.
生殖過程の多様性について,遺伝子組換え技術信奉者の「イネは自殖性の高い植物だから花粉は飛ばない」としていることに対して生井氏の「あご・ほっぺ理論」からその誤りが指摘された.自殖性植物も他殖性植物も,「あご」と「ほっぺ」の様に境界がなく連続的であり,イネも自殖(自家受粉)が全てではなく,また,花粉の飛散距離など未解明で定説はなく,思わぬ距離を飛ぶことが判明している.
育種が遺伝的変異を広げ目的のものを選択する過程は,自然の遺伝子組換えであるのに対して,人為的遺伝子組換え(GM技術)では強制的に目的遺伝子を挿入するので,遺伝子上の導入箇所も不確定で発現する形質にどのような影響があるのか不明である
消費者の遺伝子組換え作物の安全性についての不安に応える長期にわたる安全性試験が行われていないことに加え,遺伝の原理がまだ完全に科学的に明らかになっていない段階での遺伝子操作の危険性が危惧される. 裁判となっているカラシナ・ディフェンシン(抗菌蛋白)GMイネが耐性菌を生みだすなど,主食のコメが脅かされないか心配である.討論では,国民の遺伝子組換えの不安にJSAの活動こそが正しく応えてゆけると確信した.(立石昌義)
本委員会の構成は,2009年度期,9支部(岩手,宮城,茨城,埼玉,東京,愛知,岐阜,大阪,福岡),19会員(農業経済・食料 9,栄養科学2,消費問題3,化学2,農学ほか3)です.もっと支部を広げたいのですけれども,難しいのは,研究例会開催が東京中 心となり,地方の活動が浮びきれない点です.
4月には,委員全員へのアンケートを実施しました.取り上げたいテーマが,農地法,企業参入,温暖化,視察など沢山出され, また,例会やJSA主催シンポの報告などを知らせる委員あて文書(委員長発,不定期)も,よく読まれていることが分かりました.
委員会活動を捗らせるには,事務局を担う委員が動けないとうまくいきません.筆者がこの数年やっていますが,加齢とともに 鈍くなってしまうので,交代に悩んでいます.お助けあれ.
研究例会は,年3〜4回を目指しています.1月には,例会を広げ,中型シンポ(これでよいのか日本の食と農)を開催し,103名 超の參加でした.時宜に適ったテーマ,こまめな呼びかけが有効です.
来る11月末には,東京支部主催の東京科学シンポジウムに全国委員会として全面的に協力し,分科会(東京の食と農)設置の役 をはたすことにしています.
今年度の例会は遅れていましたが,10月3日午後,農民運動全国連合会の横山昭三常任委員を講師にお招きし,「日本農業の土台 つき崩す米価暴落」というテーマで,豊富な資料をもとにした報告を聞き,活発な討議を交わしました.参加者20名の盛会でし た. (宮村光重)
『日本の科学者』Vol.44 No.12(2009年12月) 「科学者つうしん」<委員会コーナー>より
食糧問題研究委員会の活動
食糧問題研究委員会は第40期の活動を開始し,第1回委員会を5月15日に都内で開催しました.最近,BSE(牛海面状脳症)や高病原性鳥インフルエンザなど,ヒトヘの感染可能性をもつ動物(家畜)の疾病が,私達の食生活や農業・食品産業の経済活動にも甚大な影響を与えている状況をふまえて,「ヒトと動物の共通感染症を検証する」というテーマで,講師に日本大学生物資源科学部獣医学科の酒井健夫教授(疾病予防学)をお招きして,報告・討議検討を行いました.
講演では,まずここ10年ほどの特徴としてヒト・動物共通感染症の著しい国際化があるが,その背景に流通のボーダレス化(農産物,食品,動物,さらに人間)と,自然界への開発の進展(それによる野生の感染症ウィルス等の人間社会への持ち込み)があることが指摘され,農業・食糧と関連するもの以外にも,SARS,西ナイル脳炎からペット飼育と関連する狂犬病やエキノコックス(キタキツネ→犬→人)など,少なからぬ共通感染症が多発ないし流有する潜在性をもっていることが示されました.
現在,社会・政治的焦点にもなっている米国産牛肉の輸入再開とも関連したBSE対策(とくに全頭検査や危険部位除去の範囲等)についても,多くの質疑応答がされました.その中で,従来の科学的知見では30カ月齢以上を全頭検査すればBSE牛は排除できるハズであったが20カ月齢程度の若齢牛でも発症例が出ていること,牛肉の直接的な安全性は危険部位の完全除去で確保できるとしても各国・地域の感染状況を正確に把握するには全頭検査が必要ではないか等々の議論が交わされましたが,最後に国際規模の感染症から食の安全を確保する基盤は食糧自給であることが強調されました.
中国農産物貿易と安全性管理
食糧間題研究委員会は,これまで東京支部の食糧政策委員会と一体的に活動し,食の安全性と食糧の安定供給という2つの大きな問題について,約2カ月に1回開催している例会で議論してきた.
さる4月19日(土)の例会では,岐阜大学の安部淳先生に「WTO体制下の中国農産物貿易と農産物安全性管理」というテーマで報告していただいた.報告では,中国のWTO加盟後,農産物貿易がどのように変化したのか,各種の統計資料,を駆便しながら貿易実績の変化とその要因分析を行った.
最近の特徴として,・東北三省からの穀物輸出は増大しているが,稲作の北進と拡大には環境問題から制限がある,・食糧貿易収支においては,重量べ一スでは輸出超過だが,高品質・高価格の輸入食糧が多いため貿易額では赤字,・「労働密集型産業」として野菜生産が急増し,輸出先として全体の4分の1から3分の1が日本向けであることなどが挙げられた.また,農産物や食品の安全性管理については,中国国内の安全性体制が急速に整備されているが,農民の安全管理意識が低いことや食品加工過程の劣悪な品質管理など課題が多いことを現地の事例を交えながら紹介された.特に,法規が未整備で法執行主体と根拠が不明確なため,事後発生的対応や一過性の取締など検査体制が立ち後れているとの指摘があった.
質疑では,中国の統計には「縄延ぴ」問題があり,実態と統計数値とが乖離しているのではないか.社会主義市場経済の進展が農薬間題を助長していないか.都市住民の安全性間題意識と農村部の教育との格差が大きいのではないか,など活発な議論が行われ,充実した研究会となった.国内食糧の安定供給と安全性問題からも,中国の動向には目が離せない.