JSA

保健医療福祉問題研究委員会

「49・50・51期のおもな研究テーマや活動予定」

  1. @薬害問題(薬害イレッサ、タミフル薬害、薬害C・B型肝炎、薬害監視第三者機関設置問題)、薬害教育、「病気作り」、スイッチOTC、ドラッグ・ラグ等(これらの問題には、薬害オンブズパースン会議や新医協等と連携し取り組む。)
  2. Aその他の保健医療福祉問題(これも、可能な科学者運動との連携で取り組む。)1) 犯罪の要因としての「低福祉」、2) 地域医療・地域福祉問題、3) 高齢障害者の生活と権利問題、4) 介護保険問題、5) 生命・医療倫理問題など

最近の活動

2011年12月22日に日本科学者会議として声明「薬害訴訟の数々の判例を否定し、違憲と も言える東京高裁のイレッサ薬害訴訟不当判決に強く抗議し、大阪高裁・最高裁におけ る早期是正判決を求める」を発表しました。(見解・声明のページ)


18総学・イレッサ問題に取り組む

(『日本の科学者』2010年12月号より)

 わが国では,戦後,ジフテリア予防接種やサリドマイドの事件をはじめとして,現在に至るまで,連綿として薬害被害が続いている.薬害の歴史を年表化すると,その大きな特徴は,1980年代から多様化・複雑化し,2010年10月現在,「戦後最大の薬害」とみなされる薬害C型肝炎事件における全被害者の救済や,集団予防接種によるB型肝炎,イレッサ薬害,そしてタミフル薬害等,重大な薬害被害が未解決のままであるというこ とである.
こうしたなかで,薬害C型肝炎訴訟の和解に伴い設置された「薬害肝炎検証委員会」が,2年間の討議を経て,2010年4月に,薬害防止に向けての提言をまとめた.この提言は,行政,企業,医療現場,研究,教育等幅広い分野に関係する内容になっているが,特に,薬事行政を監視する「第三者組織」の設置を求めたのが「歴史の前進」として重要な点である.問題は,この提言に対し,行政がきちんと予算を付けて対応するかであり,その点でまさに「国民的監視」が求められている.
 このように,多くの課題がある中で,本委員会が出来ることは何かについて,9月18日開催の第1回委員会で情報・意見を交換した.
 その結果,仙台での18総学では,準備が大幅に遅れたが,B-6分科会として「医薬品の安全性確保と科学・技術」という主題で開催することを正式に決定し,その演者・演題・司会等について話し合った.また,多くの被害者を出した抗がん剤イレッサが再審査の時期を迎えることから,委員会としての意見書を出すことになり,その内容について意見交換した.
 薬害の被害者支援と根絶に向け,まさに渾身の力を発揮すべき時といえよう. (片平洌彦)


医療と薬害問題の構造的な解明と生命倫理との科学的・ 実践的な融合で、医療事故と薬害根絶を目指す 

(「日本の科学者」2005年7月号より)

 2004年度の委員会は,「第15回総合学術研究集会」(2004.11.27・立命館大学)で「一般分科会3:医療・薬害と生命倫理一人間の尊厳をもとめて」を生命倫理委員会と共同で開催しました.医療と薬害の問題を生命倫理の切り口での検討で幅と深まりが生まれました.人間の生命と健康や生活を衛(まもる)べき医療と薬が,人間の生命や生存権・幸福権を侵害している今日的な科学技術と企業活動や行政のあり方の問題点を浮き彫りにすることができました.
 委員会が重視している問題の一つは,薬害肝炎間題です.この医原性C型肝炎感染問題は,これまでの深刻な薬害事件と共通の加害・被害の構造をもつ「繰り返されている薬害」の一つであり,医療と医薬品のあり方を問い直す本質的な課題でもあるので,委員会として引き続き取り組んでいます.委員会と並行して「薬害肝炎被害実態調査研究プロジェクト」が,薬害肝炎訴訟原告・弁護団の協力のもとに質問票およぴ面接調査を行い,とりまとめの作業を行っています.
 委員会の今後の取り組み課題として,以下の5点を確認して活動しています.1)ゲノム医学・テーラーメイドの医療問題
2)薬害肝炎問題.
3)医療事故間題
4)薬害の政治経済学的問題一政治献金間題
5)新たに発生する医療・薬害問題への対応問題
 概ね2〜3月に1回開催する委員会では,医療事故や薬害問題に関する情報交換とディスカッションに相当な時間を使って問題意識の深化を図っています.
 委員会の予算は極僅かですが,知識と知恵の資源は潜在的にも大きなものです.日本科学者会議会員を中心に多くの研究者に委員会への参加を呼ぴかけます.動向は科学者会議事務局にお問い合わせ願います.

 

嘆きから闘いへ〜薬害肝炎間題シンポジウムを開催

(「日本の科学者」2004年2月号より)

                 
 2003年度の委員会は,昨年度の薬害ヤコブ病に続いて,イレッサ,薬害肝炎等,続発する薬害問題への対応に追われている.特に薬害肝炎の問題は,全国5カ所の地裁に提訴の原告が2003年11月時点では53名だが,フィプリノーゲン製剤等の血液製剤によるC型肝炎感染被害者は被告側(旧ミドリ十字)の推定だけでも約1万人となっており,被害者数で薬害エイズをはるかに凌ぎ,また,C型肝炎の感染者は国内だけでも200万人と推定されていることから,大きな社会間題となる可能性がある.
 本委員会は,訴訟の弁護団や支援者らと共に「薬害肝炎シンポジウム実行委員会」を作り,本会東京支部の「東京科学シンポジウム実行委員会」と共催で「薬害肝炎問題シンポジウム嘆きから闘いヘー薬害根絶のために一」を11月16日に一橋大学で開催した.
 当日は,研究者・医薬福祉系学生・被害者・弁護士・支援者等約70名が参加.午前は,弁護団の福地直樹事務局長の訴訟についての報告の後,原告の女性が「子供に,僕が生まれなければお母さんは感染しなかったんだね」と言われたなどと語り,参加者の涙を誘った.牧野忠康日本福祉大学教授らの予備的被害者面接調査結果も報告された.午後は,責任と解決のあり方について,弁護団のディベート,患者会の立場からの高畠譲二氏と,研究者の立場からの西三郎医師の報告,そして総合討論,決議が行われた.参加者の感想中には「肝炎が寸刻を争う間題であることを痛感した」「ディベートが上手に論点整理がされ,とても参考になった」等の記載が見られた.
 委員会では,この成果を普及するとともに,さらに問題の研究と実践を深める予定である.


  

薬害ヤコブ病問題等の解明・解決に全力

(「日本の科学者」2002年9月号より)
          
 第37期(2001年度)の委員会活動は、薬害ヤコブ病問題の解明と解決のために捧げ られた。薬害ヤコブ病訴訟は、1996年に谷さん夫妻により開始され、20人の患者の家 族・遺族が大津・東京両地裁に提訴して闘われてきた。本委員会は、この訴訟を原告 側の立場で一貫して支援し、問題の解明・解決に全力を注いできた。そして、3度の 国内シンポジウムと2001年11月の国際シンポジウム(一橋大学)開催のため、その企 画・実行の中心となってフルに活動した.(もちろん、これらのシンポジウムが開催 できたのは、原告・弁護団・支援の多くの方々の協力によっている。)
 周知のように、薬害ヤコブ病訴訟は、2002年3月25日、原告側の勝利的和解の成立に よって終止符を打った。この時調印された確認書には、被告国と企業の加害責任と 「おわび」の言葉が明記され、被害者への償い・支援(サポート・ネットワークの確 立等)を行うこと、そして今後の薬害防止のため、必要な場合は直ちに危険防止の措 置を取ることや、医・薬学等での薬害教育の充実をはかることなどが記された。この 内容は、薬害問題の解決の上で大きな意義があり、今後、その実質化を計っていくこと が求められている。
 第38期の課題としては、引き続いての薬害ヤコブ病被害者の支援、特に6月30日に設 立されたヤコブ病サポートネットワーク確立への協力、政府提案の薬事法改正案の検 討、生物由来製品による被害者の救済と予防・根絶のあり方の解明、薬害ヤコブ病国 内・国際シンポジウムの成果出版の検討、「薬害肝炎」・重症型薬疹など新たな薬害 ・副作用問題の解明・解決の取組み、第14回総合学術研究集会(札幌)での分科会の 主催などがある。