JSA学術情報ニュース

No.41 2003年7月10日発行

日本科学者会議学術体制部

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1.科学技術・学術政策、予算等

開発段階の競争的資金投入などを総合科学技術会議へ産業界側が要望

 総合科学技術会議と日本経済団体連合会との懇談会が5月8日行われた。平成16年度予算編成に向けた産業界側の要望を聞くのが目的。日本経団連の要望は大きく分けて3つ。1つは知的財産権に関することで、特許法35条では職務発明の対価は裁判所がその額を決めることになっているが、企業が特定のプロセスで決定するように総合科学技術会議でも支援して欲しいというもの。2つ目はBT(バイオテクノロジー)やIT(情報技術)などの重点分野について開発段階についても競争的資金を投入して欲しいというもの。3つ目は人材養成について。大学教育における基礎学力の充実や実践的工学教育、MOTプログラムの導入、産学連携による人材養成、大学と民間との人材交流などを求めた。また、産学連携を進めるために、すでに独立行政法人になっている研究機関の非公務員化を求めた。(「科学新聞」5/16付)

 

総合科学技術会議が平成16年度科学技術関係予算の重点項目に「人材育成」

 総合科学技術会議は5月27日の本会議で資源配分方針の第1次案を公表、6月の本会議で最終案を決定する。これによると国際的に活躍できる研究人材を育成・確保するとともに、科学技術を支える専門的人材の育成を平成16年度予算の中心に据える。今後各省は関係人材の育成プランや確保のための奨学制度などを概算要求に盛り込んで行く。(「科学新聞」6/6付)

 

総合科技会議、平成16年度科学技術予算配分方針決定〜ビッグサイエンス見直しも

 総合科学技術会議は6月19日、総理官邸で本会議を開き平成16年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針を決定した。さらなる研究開発投資が必要であることを強調する一方、ビッグサイエンスの在り方について問い直し、厳正な評価を行った上で必要の無いものについては削減していく。また科学技術関係人材の育成・確保が重要である。人材育成については16年度予算だけでなく、同会議に科学技術関係人材専門調査会を設置し、科学技術関係人材の需給、育成・確保方策、裾野の拡大など、1年程度かけて次期科学技術基本計画に盛りこむべき施策について検討していく。(「科学新聞」6/27付)

 

文科省が国際競争力向上を目指し「人材版COE」創設へ

 科学技術・学術審議会の人材委員会は第2次提言「国際競争力向上のための研究人材の養成・確保を目指して」をまとめた。学問の進展や社会の変化により様々な研究人材が必要とされているが、これまでのような計画的人材養成では対応できなくなっている。報告書はこれまでの人材養成施策の失敗を認めた上で、人材版COEや海外に流出した優秀な若手研究者を呼び戻すプログラムの創設を提言している。文部科学省はこれを受けて科学技術関係人材養成総合プログラムを作成し、8月末の概算要求に盛り込む。(「科学新聞」7/4付)

 

研究者の米から自国へのUターン続々〜流出頭脳呼び戻しを日本も検討

 米国で外国研究者が出身国に帰る“Uターン現象”が進んでいることが、科学技術・学術審議会が30日にまとめた調査報告で明らかになった。同審議会は、我が国も流出した頭脳を呼び戻す施策を進めるべきだと提言。これを受け文部科学省は帰国人材を受け入れた研究機関を補助するなどの対策を来年度から始める方針。報告書はUターン現象の背景には、アジアや欧州の国々などが海外で活躍中の研究者を呼び戻す帰国奨励策を積極的に進めている実態があると指摘した。日本では研究者の受け入れに対する海外派遣の割合が3.7倍と“輸出超過”が続いており、このままでは「知の空洞化」が進むとも指摘。大学や研究機関が国際公募により積極的に人材を受け入れることなどを提言している。(「読売新聞」7/1)

 

学術会議総会で改革へ向け、「自己評価」などを報告

 日本学術会議(吉川弘之会長)の第139回(第18期第7回)総会が6月3日から5日まで、東京乃木坂の同会議で開催された。今総会では「日本学術会議の自己評価」が報告され、同会議の改革の具体化をテーマに自由討議が行われた。「自己評価」では、研究連絡委員会の問題、予算不足、時間不足などが指摘された。改革の具体化では、総合科学技術会議専門調査会の審議結果(政府決定)によって示された基本線に沿って法制化が進められるなか、自律性を保つという基本認識の合意が得られた。

 また、新たに設置される「運営審議会附置科学技術基本計画レビュー委員会」は、(1)文部科学省科学技術政策研究所が中核機関となって実施する「基本計画の達成効果の評価のための調査」の協力機関として関係学協会と連携して分析・評価に協力すること、(2)第3期科学技術基本計画の策定にあたって第1期、第2期の科学技術基本計画の達成等に関する分析・評価の結果を踏まえて独自に総合的・俯瞰的な視点から検討を行い、学術会議としての意見をとりまとめて総合科学技術会議に提出すること、を目的としている。

 国際学術交流では、すでに各国持ち回りで3回の開催実績を積んでいる「アジア学術会議」を内規上明確に規定。既存の国際学術交流事業についても手続きの明確化、事業の効率化を図るとともに、政府から独立した事業運営を行おうとするものである。

 なお、第19期の新メンバーは7月22日に決定する予定。(「科学新聞」6/13付)

 

経済産業省が地域新生コンソーシアム事業89件を採択

 経済産業省では平成15年度の提案公募型技術開発事業(委託費)として地域新生コンソーシアム研究開発事業61件、中小企業地域新生コンソーシアム研究開発事業28件を新規採択した。これは地域において事業化に直結する実用化技術開発を産学官が共同で行い、促進することで新産業を創出し、地域経済の再生を図ることが目的。(「科学新聞」6/13付)

 

政産学官一体で先端機器開発へ〜特別シンポジウム「研究基盤としての先端機器開発・利用戦略」開催

 研究開発全般において世界のトップランナーに立つためには、分析や計測における先端的機器開発において一歩先んじることこそ必須の前提条件である。ところがいま我が国の研究の現場では、それらは多く外国製品に依存している。こうした現状を打破し、自前で世界に冠たる研究機器を開発・利用して行くことが我が国の研究基盤強化にとっていかに重要であるかを訴えることが標記シンポジウム(実行委員長:二瓶好正日本分析化学会会長)の目的。第1部では吉川弘之学術会議会長によるイントロダクトリー・トークと野依良治名大教授の特別講演「我が国発の化学と技術を育もう」、第2部はパネルディスカッション「科学技術政策からみた先端機器」、第3部はパネルディスカッション「産業基盤としての先端機器の役割」が行われた。(「科学新聞」5/30付)

 

文部科学省が先端的計測・分析機器開発の検討会を設置

 国産研究機器の低迷に危機感を持つ文部科学省は、先端的計測機器や分析機器の開発に本格的に乗り出す。科学技術・学術審議会に創造的研究開発基板(先端計測・分析技術開発)整備に関する検討会(主査・二瓶好正日本分析化学会会長)を設置、7月中下旬には国産機器の開発計画をまとめる。5〜10年後の実用化を目指す機器の具体例を示すとともに、機器開発戦略を策定する。それを受けて平成16年度概算要求に、実用化に向けた研究開発プロジェクトを盛り込む予定。(「科学新聞」6/20付)

 

学振・特別研究員制度で出産・育児による研究中断、期間延長可能に

 日本学術振興会は特別研究員と海外特別研究員が出産や育児などを理由に研究を中断する場合、15カ月までの中断を認めるとともに、中断した機関だけ延長できるようにする。運用開始は7月1日から。女性研究者だけでなく男性研究者の配偶者等の出産、育児も可。(「科学新聞」6/20付)

 

科学技術政策研が「科学離れ」を調査〜科学雑誌の部数減少・若者の関心低下

 1982年をピークに科学雑誌の発行部数は減少しているのと並行して、若者の科学への関心が低下傾向にあることが科学技術政策研究所の調査でわかった。科学雑誌の売れ行きが好調だった頃は購買層の中心である20歳代、30歳代の科学技術への関心が高かったが、その関心が低下するとともに科学雑誌の購読者数は減少していき、1983年には16誌あった科学雑誌が相次ぐ休刊などで2002年には11誌に減っている。報告書では、科学雑誌の購読者と想定される自然科学系研究者、学部学生、大学院生の総数は2001年には154万人で、科学雑誌創刊ブーム期の総数90万人(1980年)の1.5倍に増加しているにもかかわらず、一般の科学雑誌の発行部数が低下していることは、若手研究者の科学全般への関心の低下、専門分野以外への関心の低下と何らかの関係があるのではないかと指摘している。(「科学新聞」6/20付)

 

今年度『科学技術白書』が閣議で決定〜「科学技術人材」を特集

 科学技術に関する年次報告いわゆる『科学技術白書』が6月6日の閣議で決定された。今年度は「これからの日本に求められる科学技術人材」と題して、研究者、技術者ばかりでなく知的財産関連人材や起業支援者、サイエンスコミュニケーターといった科学技術に関係する人材が活躍するための環境整備などについてまとめた。(「科学新聞」6/13付)

 

科学技術の振興は“ものづくり”から〜平成14年度「製造基盤白書」発表

 「ものづくり基盤技術振興基本法」第8条に基づき文部科学省、経済産業省、厚生労働省の3省が共同でまとめた“日本製造業の復権に向けた戦略的取組”を主題とする平成14年度製造基盤白書が発表された。これによると、日本の製造業は民間研究開発の中心であり、科学技術創造立国の基盤をなすものであるが、その生産力はここ10年低水準に推移し、雇用にしても1992年のピーク以降347万人の減少となっている。こうした閉塞状況を打破するためには“ものづくり”に求められる人材を育成する環境を早急に整備していくことと同時に、ものづくりも含めた科学技術に対する国民の関心を喚起し、理解増進を図ることが急務だとしている。(「科学新聞」6/20付)

 

学術会議特別委員会が講演会「ジェンダー問題と日本の学術」開催

 日本学術会議第18期ジェンダー問題の多角的検討特別委員会は5月17日、女性研究者の環境改善やジェンダーの視点からとらえた学術研究の再構築などを目指した委員会での議論を公開する表記公開講演会を学術総合センター(東京一ツ橋)で開催した。この講演会では同特委でのこれまでの検討に基づき、蓮見音彦委員長や池内了ワーキンググループ幹事が経過を報告したほか、学協会での男女共同参画の実施状況を柏木恵子委員が、女性特有の精神疾患に対するケアの問題などを高橋清久委員がそれぞれ講演。また、大沢真理東大教授は講演の中で「“失われた10年”と呼ばれる90年代はジェンダーの視点からも何の政策改革も無く、文字通り失われた10年であった」と強調した。(「科学新聞」5/30付)

総合科学技術会議が15年度振興調整費でSARS克服緊急研究実施へ

 アジアを中心に猛威をふるったSARS(重症急性呼吸器症候群)の患者数はWHO(世界保健機構)の統計によると5月15日現在、世界で7600人以上、死者は600人を超えている。総合科学技術会議は平成15年度科学技術振興調整費により「SARSの診断および検査手法等に関する緊急調査研究」を実施する。研究費は約1億円。実施機関は国立国際医療センター、国立感染症研究所、東大医科学研究所、国立精神・神経センター、国立療養所近畿中央病院、農業技術研究機構動物衛生研究所。

 

改正労働基準法成立〜有期労働契約、裁量労働制の拡大など

 従業員を解雇する時の基準などを盛りこんだ改正労働基準法が27日、参院本会議で可決、成立した、契約社員など事前に働く期間を定める有期雇用の契約期間の上限をこれまでの1年から3年に延長。働く時間を労働者の裁量に委ねる裁量労働制のうち、本社や支社で企画や立案に携わる企画業務型については、本社以外で導入できる対象を広げる。1月までに施行される見通し。

 解雇ルールに関しては「客観的に合理的な理由を欠く場合は、権利の乱用として無効」とし、経営書の不当な解雇に一定の歯止めをかけた。政府原案はこの条文の前段で「使用者は労働者を解雇できる」とうたっていたが、法案審議時の与野党協議の結果、この部分は削除された。労働者がどういう場合に解雇されるか分かるよう就業規則への「解雇の事由」の明記も定めた。しかし、「労働者保護の具体的規定は無く、状況は変わらない」という声が早くも労働組合などからあがっている。契約社員など事前に働く期間を定める有期雇用の拡大をめぐっても、不安定な雇用が増えるだけだとの批判が根強い。(「朝日新聞」6/27夕刊)

 

2.国立大学法人化関係

国立大学法人法案審議、参院で文科省立ち往生

 文部科学省が来春の国立大学法人化に向け命運をかける「国立大学法人法案」の審議で参議院文教科学委員会での抵抗に遭って6月10日から立ち往生している。法人化後に各大学が定める中期目標や計画について、同省が法の成立前に詳細な資料提出を大学側に「指示」していたことが民主党・桜井充議員の質問で発覚した。追求側は「国会軽視の事前介入だ。審議未了で廃案へ」と気炎を吐く。追いこまれた遠山敦子文科相は答弁を訂正する異例の「おわび」で空転打開を図る。(「中日・東京新聞」6/21)

 

国立大学法人法、7月9日参議院本会議で可決、成立へ

 4月3日の衆議院本会議および文部科学委員会での趣旨説明により審議入りした国立大学法人法案は、参議院文教科学委員会での抵抗で2週間あまり審議停止していたが、6月26日に再開となり、7月8日に委員会採決、9日に参院本会議で可決、成立の見通しとなった。

 

文科省が国立大学法人化による「標準教員数」を各大学に配布

 文部科学省が各国立大学に配布した「国立大学法人教職員数試算基準(案)」では、運営費交付金要求のための経費見積もりの算定基準として「標準教員数」という表を掲載している。これによると学部については以下のようである。

分野1(文学、教員養成系以外の教育学関係)で学部学生定員200人に対し教員6人

分野2(法学、経済学、社会学、社会福祉学関係)で同400人に対し10人

分野3(理学、工学、農学、薬学、体育、栄養学、看護学を除く保健衛生学関係)で同160人に対し8人

分野4(家政、美術、音楽関係)で同160人に対し6人

分野5(保健衛生学(看護学)関係)で同200人に対し12人

分野6(医学関係)で同600人に対し140人

分野7(歯学関係)で同480人に対し85人

分野8(獣医学関係)で同240人に対し16人

共通教育で同80人に対し1人、医学歯学の共通教育で同480人に対し7人

 また、大学院については

分野A(上記分野1、2、4)修士課程学生定員20人に対し教員1人、博士課程学生定員12人に対し教員1人

分野B(上記分野3、5)同修士14に対し1人、同博士9人に対し1人

分野C(上記分野6、7)同修士8人に対し1人、同博士8人に対し1人

分野D(上記分野8)同博士9人に対し1人

となっている。分野によって異なるがこれは現状教員数の半分程度であり、標準運営費交付金はこの教員数分しか交付されない。(広島大学教職員組合書記局 http://home.hiroshima-u.ac.jp/uni

on/sisan.pdf、「国立大学法人法案」に反対する意見広告の会 http://www.geocities.jp/houjinka

/index.html)

 

国立大法人化で数百人天下り〜「役員」に官僚出身者・交付金や業績評価で国との調整役

 国立大学の法人化に伴い各大学に新設される役員ポストに、文部科学省などの官僚出身者が多数選任される見込みであることが6月25日、大学関係者らの話しでわかった。国からの予算獲得などをめぐる大学間競争に備えるためで、こうした「天下り」は全国で数百人規模に上るとみられる。法人化は大学の自主性を高めると文部科学省は言っているが、経営の管理や立案能力に乏しい大学が、官主導の運営に陥る懸念も広がっている。

 霞ヶ関のある省の幹部は「既に大学側からの派遣要請が来ている」と認めた。法人化後は業績評価と予算配分が連動し、大学の経営能力が問われる。「失敗すればスクラップもあり得る」という不安と危機感が、天下り先を求める官側の思惑と一致し、国との“パイプ”を求める動きにつながっている。大学の自主性と独立性を揺るがしかねない構想にも、大学関係者からは「転換期を乗り切るためには仕方ない」というあきらめの声も聞かれる。(「中日・東京新聞」6/26)

 また、「国立大学法人法案」に反対する意見広告の会では、国立大学法人化で理事・幹事があらたに580人生まれ、平均給与1670万円とすれば毎年97億円が大学法人から支出される、と試算している。(「毎日新聞」7/1、「国立大学法人法案」に反対する意見広告の会 http://www.geocities.jp/

houjinka/index.html)

 

共同通信・学長アンケート〜半数が「国立大学法人化で授業料上がる」と回答

 国立大学の学長の半数が2004年度に予定される国立大学法人化の後に授業料が「上がる」とみていることが、共同通信のアンケートでわかった。法人化後は各大学が一定の範囲内で授業料を決めるが、競争原理が導入され経営基盤を安定させる必要性も高まることから、学生側の負担が重くなる可能性が高いことを示した。法人化自体には各大学への資金配分の基礎になる文部科学省の大学評価に対し「適切に行われるか不安」とする学長が75%、大都市と地方の大学の格差拡大を懸念する学長も53%に上った。(「中日・東京新聞」6/20)

 

朝日新聞・学長アンケート〜学費上がる25%、学部で差容認22%

 朝日新聞社は全大学(国公私立)の学長を対象に、国立大学が法人化された場合の影響や大学の将来像などについてアンケートした。法人化後、国立96大学の4分の1の24校の学長が「全体として上がる」と回答、教育の機会均等を目指して続いてきた国立大授業料の横並びは崩れると予測した。法人化などの大学改革で「大学が良くなって行くか」では「わからない」が多く、改革への戸惑いものぞかせた。(「朝日新聞」6/29)

 

予備校アンケート〜来春の国立大法人化を受験生の45%が「知らない」

 来春予定されている国立大の独立法人化について、駿台予備校の国立大志望受験生1029人に行ったアンケートで45%が「知らない」と答えた。また、「独立法人化で大学の魅力が増すか」という質問には「増す」と考える受験生よりも「減る」とするものが多く、受験生の関心は薄かった。(「産経新聞」6/15)

 

独法化対応財務会計システムをNECが東北大から受注

 NECは東北大学から国立大学の独立行政法人化対応の財務会計システムを受注した。これは政府調達手続きによる全国初の国立大学独法化向け財務会計システムの調達であり、今後各大学で同様の調達が予定されている。独立行政法人の会計制度は、これまでの単式簿記の公会計から複式簿記の企業会計に大きく変更されるため、各国立大学ではその準備を進めている。東北大学ではシステムを9月末に導入し、既存のシステムとの連携やデータ移行、研修等を行いながら、来年4月から本稼動に入る予定。(「科学新聞」6/20付)

 

3.大学の改組、改革等

富山の3国立大学が2005年統合で合意

 富山大学(富山市)、富山医科薬科大学(同)、高岡短期大学(高岡市)の富山県内の3国立大学は7日、2005年10月に再編統合することで合意し、3学長が合意書に調印した。新大学の名称は「富山大学」になる見通し。学部の編成は、高岡キャンパスに芸術文化学部を新設、富山大教育学部は教員養成機能を持つ人間発達科学部に改組する。これに現在の人文、経済、理、工、医、薬を加えた計8学部で構成する。(「日本経済新聞」5/8)

 

愛知教育大学で「大学憲章」制定〜全学集会で承認

 愛知教育大学で5月26日、教員、職員、学生による全学集会を開催し、「愛知教育大学憲章」を承認した(教授会では4月16日に承認)。冒頭の「愛知教育大学の理念」では、「日本国憲法、教育基本法、ユネスコの高等教育に関する宣言等の理念を踏まえ、教育研究活動を通して世界の平和と人類の福祉及び文化と学術の発展に努めることが、普遍的使命であることを自覚し、愛知教育大学宣言を定める。」とし、以下、「教育目標」、「研究目標」、「教育研究のあり方」、「運営のあり方」を記している。(愛知教育大学HP http://www.aichi-edu.ac.jp/news.htm)

 

法科大学院、72校が来春開校目指す〜定員5950人、都市に集中

 法律家を育てる法科大学院(ロースクール)について文部科学省は6月30日、来年4月の開設を目指している大学院と予定入学定員数を公表した。国立20、公立2、私立50の計72校で、定員は計5950人。地域別では北海道1校、東北2校、関東32校、中部10校、近畿15校、中国・四国5校、九州・沖縄7校で、空白県が24県。今後、大学設置・学校法人審議会の審査を経て、11月末には実際の開設数が決まる。(「朝日新聞」、「読売新聞」、「東京新聞」他各紙7/1)

 

「会計大学院」私大に続々〜企業監査へ高まる重要性

 企業の会計監査の重要性が高まる中、首都圏や関西の大学で「会計大学院」設置の動きが加速している。すでに中央大は今年4月に専門職大学院「国際会計研究科」を設置済みだが、公認会計士を増やすために2006年度から新しい試験制度が始まるのをにらみ、明治大、関西学院大は会計の専門職大学院「アカウンティングスクール」を設置する方針を決めた。青山学院大も検討中だ。2005年4月に開校が集中する見通し。来春に全国で開校する法科大学院(ロースクール)に次ぐ専門職大学院の誕生ラッシュとなりそうだ。(「朝日新聞」6/28)

 

東大の情報学環と社会情報研が来春統合で合意

 東大の情報学環と社会情報研究所(旧新聞研究所、1949年設立)は、来年4月に統合し、新たな教育研究組織を発足させることで合意した。2004年度概算要求に向けて両組織の代表からなる合併協議会が新しい組織のデザインを進めている。統合が実現すると社会情報研究所は旧新聞研究所から続く半世紀あまりの歴史に幕を下ろすことになる。

 国立大学の附置研究所をめぐっては、文部科学省の科学技術・学術審議会学術分科会が今年1月、附置研究所としての必要規模基準を示したことから、所属教官数が14人と全国で最も規模の小さい社会情報研究所の動向が注目を集めていた。同分科会は4月に発表した最終報告で「大学院に転換する方針は妥当」とし、今回の統合計画を支持している。(「東京大学新聞」5/13付)

 

東大評議会が「公共政策大学院」(専門職大学院)設置を承認

 東大評議会は4月22日、大学院法学政治学研究科と経済学研究科が連携して「公共政策大学院」(専門職大学院)を設置することを承認した。法科大学院と同じく来年4月の開校を目指す。公共政策大学院は政策についての専門家を養成するのが目的。法・政治・経済それぞれの分野についてバランスの取れた知識を持つ実務家を育てる。修業年限は2年で定員は100人を予定。幅広い政策分野に対応するため、法政策・公共管理・国際公共政策・経済政策の4コースを設定する。46単位の修得が終了の条件とされる見込みで、修了すると「公共政策学修士(専門職)」の学位が授与される。(「東京大学新聞」5/13付)

 

東大先端研、全教官に契約雇用制〜法人化後の人事制度と組織設計を公表

 東京大学の先端科学技術研究センター(南谷崇センター長)は3日、都内のホテルで行われたシンポジウムの中で法人化以降の先端研の新しい人事制度と組織設計を明かにした。全教官と雇用契約を結び、自己申告と客観データをもとに雇用契約の更改を行う人事体制や、従来の教官や事務官とは別に経営戦略を担当する「専門職人材」を雇用して経営と研究・教育の分離を図る。教官は申請によりテニュア(終身雇用制度)審査を受けられ、パスすれば東大の定めた定年制を適用する。(「東京大学新聞」6/24付)

 

東工大電気系5専攻で新たな大学院教育システム構築へ

 21世紀COEプログラム「フォトニクスナノデバイス集積工学」を実施している東京工業大学大学院電気系5専攻は、教育カリキュラムの見直しにまで踏み込んだ人材育成プログラムを開始した。企業へのアンケート調査などを実施した上で、学外からの人材育成に関する要望を(1)専門性の高い人材のさらなる強化、(2)グローバル人材の育成、(3)マネジメント力の強化、を目標に、海外特別実習制度の導入や博士課程学生への経済的支援などを進める。また、プログラムの効果を評価し、常に改善していくことで、新たな大学院教育システムの構築を目指す。(「科学新聞」5/16付)

 

私大・私短大補助金、定員割れ続けば打ち切り〜救済は3年に限定の方針

 私立の大学や短大に配分される国の補助金について文部科学省は、学生が集まらずに大幅な「定員割れ」の状態になっていても交付を受けられる特例措置を見直す方針を固めた。現在は特例による交付期間を限定していないが、今年度分からは3年間で打ち切る。少子化などで経営が苦しくなっている学校にとっては厳しい措置となりそうだ。今回の見直しは総務省が昨年末に「定員割れが改善されない学校に交付し続けるのは合理性に欠けている」と勧告したのがきっかけ。補助金は大学や短大、高等専門学校を設置している学校法人に交付、私学経営の根幹を支えている。教職員や学生の数などを基準に額を算定して各法人に配分。2001年度分の場合、総額は約3094億7千万円で、868校が交付を受けた。(「朝日新聞」6/23)

 

早稲田大学が「早稲田大学国連ITU研究センター」を開設

 早稲田大学はITU(国際電気通信連合)がその研究拠点である国連ITU研究センターを日本へ進出するための協力・支援を行うこととし、神奈川県にあるYRP(横須賀リサーチパーク)内に標記研究センターを5月に開設した。同センターではユビキタス社会へ向けてモバイル、電子政府・自治体などIT分野における産学官連携の共同研究を進めるとともに、大学院での人材育成プログラムを進めて、世界の舞台で活躍できる人材を育てて行く。ITUが出先事務所以外にアジアで拠点を設けたのは初めて。(「科学新聞」5/30付)

 

「大学発バイオベンチャー協会」発足

 「大学発バイオベンチャー協会」が5月19日、28名の正会員で設立された。初代会長は水島裕・LTTバイオファーマ会長(東京慈恵医大DDS研究所長)。大学発ベンチャーによる業界団体の設立は初めて。商法・税制に関する問題や新しい医療行為に対する治験・審査の迅速化、起業に関わる利益相反、権利移転などに対し、積極的に要望していくとともに、ベンチャーキャピタルへの支援の強化を促す活動などを進めていく。(「科学新聞」5/30付)

 

文科省が「公設民営」学校を検討〜株式会社、予備校、NPOなどへ委託可能に

 文部科学省は12日、都道府県・市区町村が設置した公立小中高校の管理運営を、株式会社など民間に全面的に委託する「公設民営」学校を認める方向で検討を始めることを明かにした。高校については今年度中に結論を出し、学校教育法の改正を経て早ければ2005年度に実現する。公立学校の公設民営は政府の総合規制改革会議が重点項目の一つに挙げており、遠山文科相と石原規制改革担当相が合意して12日に小泉首相に報告した。(「毎日新聞」6/13)

 

育英会を廃止、新学生支援機構法成立

 学生への奨学金貸し出しを担っている日本育英会を廃止し、新たな学生支援の組織を設立するための独立行政法人日本学生支援機構法が、6月10日の衆院本会議で可決、成立した。新機構には育英会のほか、内外学生センター、日本国際教育協会、国際学友会、関西国際学友会の留学生向け4公益法人の業務を統合する。設立は来年4月。(「朝日新聞」6/11)

 

4.学術関連雑誌の特集等

「学術の動向」(日本学術会議)

5月号 特集/地域生活の安全・保障     6月号 特集/ITによる科学能力開発国際会議

「学術月報」(日本学術振興会、丸善発行)

5月号 特集/海洋研究―人類の未来のために 6月号 特集/平成15年度科学技術関係予算

 

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(本号は主に2003年5月〜6月の情報を扱っています。)