No.40  2003 5月 7日発行

 

JSA学術情報ニュース

日本科学者会議学術体制部

 

 

   (TEL)03-3812-1472

 

(注:このニュースではホームページを「HP」と表記しています。)

1.2003年度科学技術関係予算等

2003年度と2002年度補正予算での科学技術関係経費を文部科学省がまとめ

                2003年度  2002年度当初 [増減]   2002年度補正

  科学技術関係経費     35,916億円 (35,444億円)  [+472億円]   3,238億円

    ○ 一般会計      18,836億円 (18,529億円)  [+307億円]   1,808億円

       科学技術振興費    12,298億円 (11,832億円)  [+466億円]   1,580億円

       その他の研究関係費   6,538億円 ( 6,697億円)  [-159億円]     228億円

    ○ 特別会計      17,080億円 (16,915億円)  [+165億円]   1,430億円

 重点4分野の、ライフサイエンスは3.4%増、情報通信0.3%減、環境8.1%増、ナノテクノロジー・材料5.6%増であるのに対して、エネルギー、製造技術、社会基盤、フロンティアの分野では2.7%減となっており、予算が重点4分野にシフトしつつある。  (「科学新聞」4/4付け。文部科学省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/15/03/030317.htm)

 

2.総合科学技術会議などの動きと科学技術政策

( 総合科学技術会議の動きは、総合科学技術会議HP http://www8.cao.go.jp/cstp/ で、専門調査会やプロジェクトの配布資料や議事内容を含めて基本的に公開されています。)

最近の総合科学技術会議本会議の主な議事

24回(2003.1.28 16:30-17:15) @平成15年度の科学技術関係施策、A競争的研究資金制度の評価、B平成15年度の科学技術振興調整費の配分の基本的考え方等、C生命倫理、D最近の科学技術の動向

25回(2003.2.26 17:30-18:30) @「平成16年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」の作成に向けて、A日本学術会議の在り方、BITER計画の現状、Cスペースシャトル「コロンビア号」の事故、D政府研究開発データベースの開発

26回(2003.3.28 18:00-19:00) @平成16年度の科学技術分野の重点事項、A競争的研究資金制度の改革、B国家的に重要な研究開発の評価等の進め方、C科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム、D最近の科学技術の動向、E平成15年度の科学技術振興調整費の配分方針、F科学技術振興調整費の平成13年度に開始されたプログラムの中間評価、G環境研究開発推進プロジェクトチームの設置

27回(2003.4.21 17:40-18:40) @平成16年度の科学技術分野の重点事項、A競争的研究資金制度改革、B第2回産学官連携推進会議、C地球温暖化対策技術研究開発の推進

 

総合科学技術会議が、04年度科学技術関係予算、人材資源配分方針を論議。6月決定予定

 2月26日、有識者議員提案の「平成16年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」を議論した。国の発展基盤の強化として基礎研究推進、国際競争力の確保・強化のため経済活性化に向けた科学技術推進、安心・安全な社会構築のための科学技術を配慮事項に提示した。 (「科学新聞」3/7付け。http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu25/siryo1.pdf)

 3月28日、2004年度の科学技術分野の重点事項を議論した。第2期科学技術基本計画の基本的方向を踏まえ、研究基盤の強化による国力の充実、国際競争力の確保・強化による経済の活性化、少子高齢化などの諸課題に対応する安心・安全な社会の構築の3つの観点から、特に重点化すべき事項を提示した。(http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu26/siryo1.pdf)

 4月21日、2004年度科学技術分野の重点事項を、片山総務相、遠山文科相、坂口厚労相、亀井農水省、平沼経産相、扇国交相、鈴木環境相が説明した。遠山文科相は、競争的資金の積極的活用による大学と民間の技術力を結合した研究開発推進を「新たな取組」として提起した。平沼経産相は、産業競争力に直結する研究開発プロジェクト、技術経営人材(MOT人材)の育成などを提起した。 (http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu27/haihu-si27.html)

 

総合科学技術会議が、2003年度の科学技術振興調整費の配分方針を決定

 総合科学技術会議は3月28日、「平成15年度の科学技術振興調整費の配分方針」を決定した。ライフサイエンスを軸に、先端機器開発や知的財産関係に踏み込んで方針を提示している。(http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu26/siryo6-1.pdf)

 

科研費など競争的資金、企業研究者にも支給へ

 総合科学技術会議は4月21日、文部科学省の科学研究費補助金など国の「競争的研究資金」(7省26制度、今年度の総額3490億円)を、企業の研究者に門戸を開く改革案を了承した。4月の経済財政諮問会議でも民間への開放が求められたが、文科省は「大学研究者との共同研究の形で門戸は開いている」としていた。米国では、競争的研究資金の8%が企業の研究者に与えられている。  (「科学新聞」4/25付け。「朝日」4/22付け)

 

競争的資金適正化のため、個人特定の法人補助へ

 総合科学技術会議は、現在ある競争的研究資金制度のうち個人補助制度を機関補助制度に切り替える方針だが、単なる機関補助制度でなく、個人を特定した形での法人補助制度に改革することを決めた。国立大学法人化後に制度改革を行う。資金管理の適正化を図ると同時に各法人にエフォート管理を徹底させるのが狙い。  (「科学新聞」4/11付け、3/28付け)

 

科研費運用を弾力化、女性研究者育児休業可能に。科学技術・学術審議会部会が方針

 科学技術・学術審議会の学術分科会・研究費部会(部会長=池端雪浦・東京外国語大学長)は、2月27日、科学研究費補助金の研究計画途中で女性研究者が育児休業をとれるようにする、運用の弾力化を大筋で了承した。対象となるのは、特別推進研究、特定領域研究、基盤研究、若手研究、萌芽研究、学術創成研究費。  (「科学新聞」3/7付け。議事概要は、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/gijiroku/002/030301.htm)

 

経済財政諮問会議が、科学技術政策、文部科学政策の「構造改革」を論議

 経済財政諮問会議は4月9日、歳出構造改革の一環として、科学技術政策、文部科学政策を取り上げた。この2年間の重点4分野への予算配分の効果の組織的な見直しと科学技術振興の国家戦略とその実施方法、国立大学法人の制度設計における「Plan-Do-See」の具体化や大学での競争的環境づくりの具体的取組み、任期制導入促進の政策目標化などについて、細田科学技術政策担当相、遠山文科相から回答を求めた。  (経済財政諮問会議HP http://www5.cao.go.jp/shimon/2003/0409/0409agenda.html)

 

3.産学官連携強化をめぐる動き

2回産学官連携推進会議、6月に京都で開催

 第2回産学官連携推進会議が、内閣府・日本経団連・日本学術会議の主催で、6月7日から2日間、京都で開催される。産学官のリーダー、実務者、専門家等約4000人が参加し、全体会議、分科会、対話・交流・展示に加え、成功事例の総理大臣表彰も行う。メインテーマは、「デスバレー(死の谷)を越えて」  (「科学新聞」3/26付け、総合科学技術会議HP http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu27/siryo3.pdf)

 

科学技術・学術審議会が、大学に産学官連携の積極推進求める報告書取りまとめへ

 科学技術・学術審議会の技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会(主査=末松安晴・国立情報学研究所長)が4月16日、「新時代の産学官連携の構築に向けて」(案)の最終検討を行った。ブレイクスルーを目指した産学官連携による研究開発課題の発見と設定」「研究成果の効果的な社会還元の推進」などを今後取り組むべき施策にあげている。  (「科学新聞」4/25付け)

 

日本経団連が、産学官連携による産業技術人材の育成促進で、意見書

 日本経済団体連合会は3月18日、「産学官連携による産業技術人材の育成促進に向けて」を発表した。学部教育充実、実践重視の工学系大学院教育、共同研究等への学生参画など大学教育改善とともに、大学発技術の事業化のため「死の谷」を超えられる人材養成を求めている。 (日本経団連HP http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/024/index.html)

 

経産省、産学連携推進小委員会でMOT育成などを審議

 経済産業省の産業構造審議会産業技術分科会産学連携推進小委員会(会長=黒川清・日本学術会議副会長)は3月27日から、大学と産業界の間をつなぐ体制強化の議論を始めた。技術移転を支えるMOT(Management of Technology)人材の育成と産業界の要望を取り込んだ大学の技術移転システムにつき、6月上旬に議論をとりまとめ、来年度予算要求に盛込みを目指す。 (経産省産学官連携HP http://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/party.htm)

 

経産省の産学官連携小委員会で、「出口が見えない研究」重視発言

 産業構造審議会産業技術分科会産学連携推進小委員会は4月24日、慶應大、産総研等のTLOについて説明を受け、「大学とTLOの関係」の論点整理案を議論した。「大学が産学連携ばかりに追われてはだめ。出口の見えない研究も出口がみえる研究以上に大切。」との意見も出た。  (経産省HP http://www.meti.go.jp/kohosys/committee/summary/0001524/)

 

経産省が、産学連携の企業アンケート結果発表

 経済産業省は4月25日、「産業界の大学、公的研究機関との連携について(企業へのアンケート調査結果)」を発表した(2310社に送付、513社回答)。67%が大学と共同研究・技術指導を実施していると回答、51%が公的研究機関と共同研究等を実施。大学に対しては、「指示されたことしか行わない」、「基礎学力の低下」「専門知識の低下」等を問題にしている。  (経済産業省HP http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003970/0/030425daigakurenkei.pdf)

 

TLOからTMOへ

 総合科学技術会議研究開発型ベンチャープログラムチームのヒアリングで、ベンチャー創出のために、米国にならい、日本のTLOの機能を拡張して、リエゾン→TLO→インキュベーションを通した技術の一元管理が行えるTMO(Technology Management Organization)を創設すべきとの報告を受けた。  (「科学新聞」3/21付け)

 

4.大学法人化をめぐる動き

(注:情勢の変化が早いため、最新情勢は、全大教近畿HP=http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/、独行法反対首都圏ネットワークHP=http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html、独立行政法人化問題週報HP= http://ac-net.org/dgh/ などをご参照ください。)

 

国立大法人化関連6法案の審議開始

 国立大法人化関連6法案が、4月3日の衆院本会議での趣旨説明と代表質問に続き、4月16日衆議院文教科学委員会で審議入りした。4月23日、5月7日に参考人質疑を行う。

「国立大学、高専法人関係6法案」=国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案、国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

法案は、文科省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/15/02/030222.htm(概要)から

衆議院の会議録 http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/index_kaigiroku.htm

参議院の会議録 http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/kaigiselect.html

 

文科省、法案審議中に、法人化前提で概算要求作成を要求

 文部科学省は4月18日、平成16年度概算要求に関わる事務連絡を各国立大学などに行い、国立大学法人法に基づく概算要求準備の第一歩として概算要求参考資料(基礎額等調)提出を5月30日厳守で各国立大学に要求している。以後の日程は次のとおり。

6月末〜7月初め:概算要求参考資料(特殊要因等調):各大学毎の内部組織や施設整備等の計画の把握

◎文科省から各大学へ運営費交付金・施設補助金等の要求額を連絡

8月中旬:収入・支出概算要求書(国立大学から文科省へ提出)

8月末:文科省から財務省へ概算要求書の提出

なお、4月17日の国大協特別委員会は、概算要求準備の開始を認める旨の確認を行った。  (独行法反対首都圏ネットワーク、4/24付け)

 

国大協の特別委、法人化法案の執行部提案了承せず

 4月17日の国大協国立大学法人化特別委員会に、国大協執行部は、法案に特別な問題はない、当面国会における審議を見守る、6月総会で総括的見解取りまとめなどを提案した。政府等への要請事項のたたき台が示されたが、「十分調整されたものではなく」、次回(日程未定)に正式に提案となった  (独行法反対首都圏ネットワーク、4/18付け、5/3付けに「議事メモ))

 

公立大など独立行政法人に、04年度施行、政府が法案提出

 政府は4月25日、地方自治体が公立大学や公立病院などを独立行政法人化する手続きを定めた地方独立行政法人法案を国会に提出した(2004年4月1日施行予定)。民間の経営手法を導入することで、効率的な行政サービスの提供地方行革を進める狙い。独立行政法人化できるのは(1)農業試験場など試験研究機関 (2)公立大学 (3)水道、バス、病院など公営企業 (4)特別養護老人ホーム、保育所など社会福祉事業-などの組織・業務。  (「日経」4/25付け等)

審議経過 http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1D863BE.htm

 

教員給与、県に決定権。自治体間で格差も

 国立大学法人化一括法案の教育公務員特例法などの改正案では、公立学校教員の本俸をはじめ、教員特別手当や産業教育手当などの額を、各都道府県が条例で定めることを規定した。教員給与を一般公務員より優遇する人材確保法(人確法)や本俸の4%の教職調整額の規定は維持する。自治体間に給与格差が生まれる可能性もある。  (「日本教育新聞」2/28付け)

 

独立行政法人の経費削減、数値目標求める…中期目標策定指針で

 政府の特殊法人等改革推進本部(本部長・小泉首相)は、独立行政法人の中期目標について、経費総額、管理コスト等を対前年度比でどれだけ減らすか、職員の削減人数、事業の終了時期などの数値目標を盛り込むことを求める指針を決めた。調査・研究開発、国際協力など8分野でそれぞれ具体的な目標例を示した。 (「読売」4/9付け。「独立行政法人の中期目標等の策定指針」(4/18付け)は、行政改革推進事務局HP http://www.gyoukaku.go.jp/jimukyoku/tokusyu/sisin/index.html)

 

法人化後の国立大学、産学連携に向け勤務体制弾力化

 文部科学省の産学官連携推進委員会は4月16日、報告書「新時代の産学官連携の構築に向けて(仮題)」を審議した。独立行政法人化した国立大学における教員の勤務体制や組織面の詳細に触れる。大学が認めれば、大学発ベンチャー企業の仕事を週に1日程度定期的に兼務したり、大学の職務(教育・学術研究)は30時間/週の短時間勤務を認めたり、3カ月間大学の職務を免除する(無給)、など弾力的な運用が可能になる。 (日経エレクトロニクスonline 4/19)

 

5.大学、教育「改革」をめぐる動き

国立大20校を10校に統合の設置法改正案可決。進む再編・統合の動き

 文部科学省が進める国立大の再編・統合の一環として、10月に国立大学20校を10校に統合する国立学校設置法改正案が4月16日、参院本会議で可決、成立した。統合後は現在97校の国立大が87校となる。今回の統合は、福井大と福井医科大など各地の医科大と地元の総合大との一体化が7組ある。

◇文科省がまとめた3月現在での再編・統合などの状況は次の通り。

《10月に統合する大学と新名称》      ―略―

《来年度以降の統合をめどに協議中の大学》  ―略―

■大学間の組織的な連携・連合の状況(同資料による)  ―略―

■教員養成大学・学部の再編・統合の検討状況  ―略―   (「朝日」4/16付け)

 

横浜市大問題で、市民の会がHP作成

 中田横浜市長の諮問機関「市立大学の在り方についての懇談会」(座長・橋爪大三郎東京工業大学教授)が2月27日、膨大な赤字等を理由に、市費による研究費負担廃止、規模縮小、非公務員型独立行政法人化等の「大胆な改革」、私立大学への売却、廃校の選択を迫る答申を行った。これに対して、「横浜市立大学を考える市民の会」(長谷川洋代表)が、大学関係者と市民に向け、署名やシンポジウムなどの行動を提起している。  (横浜市立大学を考える市民の会HP http://www8.big.or.jp/~y-shimin/)

 

国立大教員の勤務時間内兼業がOKに

 文部科学省は4月2日までに、国立大学の教員が勤務時間を削り、ベンチャー企業など研究開発型の会社の社員を兼業できるよう、内規を改正した。同改正と並行し、「構造改革特区」では、企業役員も兼業できるよう人事院規則を改正した。学長の許可で、週40時間の内最大20時間を兼業に充てられるが、割いた時間分の給料は減額される。  (「読売」4/2付け)

 

大学評価、「教養教育」では28大学が「改善が相当必要」

 文部科学省の大学評価・学位授与機構(木村孟機構長)は3月26日、01年度に実施した国立大の評価(試行。2回目)結果を公表した。学部を持つ全大学の「教養教育」の評価では、3割、28大学が「改善の必要が相当ある」(5段階評価で下から2番目)にランクされた。一方、「研究面での社会との連携・協力」は、93%の大学・機関が目標を「十分」又は「おおむね」達成と評価された。  (「毎日」3/26付け等。大学評価・学位授与機構HP http://www.niad.ac.jp)

 

国立大学等施設の整備充実で、文科省の協力者会議が報告書

 文部科学省の「今後の国立大学等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議」(主査=木村孟大学評価・学位授与機構長)が3月10日、目的用途に応じた施設水準と整備計画、学外資源活用など「国立大学等施設の整備充実に関する報告書」の骨子を了承した。  (文科省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/008/shiryo/030301b.htm)

 

COEプログラム交付金、京大2年連続最多の17億円

 文部科学省は4月22日、「21世紀COEプログラム(旧トップ30大学構想)」の今年度の交付金額を公表した。総額149億4100万円で前年度比10.8%減。交付金額に占める国立大の比率は78.5%(+0.9%)。ベスト10は昨年度と変わらず、京大17億7500万円に続き、東大の16億7300万円、大阪大の12億3700万円の順だった。  (「日経」4/22付け)

 

文科省が、2003年度の21世紀COEプログラムの申請状況を公表

 文部科学省は3月14日、3月5-7日に受け付けた「21世紀COEプログラム」の申請状況を公表した。申請件数は225大学611件(02年度は、163大学464件)で、私大の伸びが大きい。分野別審査・評価部会における審査を経て6月下旬に採択拠点を決定する予定。  (「毎日」3/14付け等。文科省HP http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/coe/030302.htm)

 

国立大、教官の授業評価結果で特典

 国立大学が、授業評価結果による特典や改善を促す制度を導入し始めた。阪大は、学生から高い評価を受けた教官12人に30万円を研究費として支給した。今年度は教養課程のみ実施、来年度から専門課程でも評価。北見工業大は評価の高かった教官に年100万円の研究費を支給している。茨城大は01年度から高評価約10人の教官に各5万円の研究費を支給しているが、来月にも評価が低い教官に改善計画を提出させる新制度を導入する。  (「日経」3/25付け)

 

日本育英会統合法案で、奨学金返還免除を原則廃止

 特殊法人「日本育英会」など5団体を再編統合して独立行政法人「日本学生支援機構」をつくる法案が3月11日国会に提出される。大学院で奨学金を受け教育・研究職に就いた人の返還免除制度を廃止し、特に優れた業績をあげた大学院生に対する返還免除制度を新設する。返済の焦付きに備える債務保証制度の導入を目指す。来年4月発足予定。 (「日経」3/11付け)

 

30%の女性研究者採用を目標に、文科省懇談会が報告

 文部科学省の「女性の多様なキャリアを支援するための懇談会」(座長・丹羽雅子奈良女子大学長)は3月25日、大学や研究所などの研究者採用は、少なくとも30%程度を女性とすることを目標にすべきなどの第1次報告をまとめた。ほかに、採用・処遇・業績評価の透明で公正なシステム導入、週3日のワークシェアリングなど多様な勤務形態の導入などを盛り込んだ。秋ごろの第2次報告でさらに支援策をまとめる予定。  (「共同」3/25、「教育新聞」4/3付け)

 

中教審が、教育基本法及び教育振興基本計画で答申

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は3月20日、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」答申した。「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人」を育成するため法改正が必要だとし、「公共の精神」「日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心」「男女共同参画社会への寄与」など8項目の理念を盛り込むよう求めた。文科省は今国会に改正法案提出を目指す。また、国の教育目標や具体的政策を示す「教育振興基本計画」(5年毎に文科省が策定)に法的な根拠を与えることも提言した。  (各紙3/20付け。

答申 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/030301.htm

答申概要 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/030302.htm

議事録 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/030303.htm)

 

法科大学院設立準備進む、裁判官等公務員の派遣法が成立、既存学部の再編も

 法曹人材の大量供給等を目指し04年4月発足の法科大学院の設立準備が進んでいる。今国会では、裁判官・検察官・一般公務員を派遣する法案が成立した。入試や統一「適性試験」日程も確定しつつある。他方、既存の法学部等のカリキュラムや組織の再編も進んでいる。 (最新情報や関連リンクは、河合塾HP http://www.kals.jp/kals/kouza2/index2_1.htmlなど)

 

日大の格付け、ホンダ並み R&Iから「AA」取得

 日本大学は4月17日、「格付投資情報センター(R&I)」から「AA(ダブルエー)」の長期債務格付けを取得したと発表した。日本で最も多い学生数や知名度の高さのほか、財務基盤が強固な点が評価された。「AA」はR&Iの格付けで上から三番目、ホンダや電通などと並ぶ。学校法人の格付け公表は、「AAマイナス」だった法政大学に続く。  (「日経」4/18付け)

 

6.その他科学技術をめぐる動き

構造改革特区、まず57件認定。小泉首相が「認定証」交付

 政府は4月17日、地域限定で規制緩和する「構造改革特区」第1次認定分として、教育、ITなど9分野計57件を決定した。規制緩和で最も多いのが、国有施設の廉価使用と手続の簡素化。他に、外国人研究者の受入れ促進や国立大教員の勤務時間内のベンチャー企業での研究許可など。5月中旬には50数件を追加認定。  (「読売」4/17付け等。「科学新聞」4/25付け。官邸HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kouhyou/030417/030417nintei.html)

 

教育など405項目追加、規制改革3カ年計画を改定

 政府は3月28日、規制改革推進3カ年計画(2001〜03年度)の改定を決定、新たに株式会社による学校経営参入など405項目の規制緩和を盛り込んだ。昨年3月に続く2回目の改定で、具体化を目指す規制緩和は当初計画の748項目から1153項目に拡大した。 (「時事」3/28)

 

知的財産戦略本部が発足、7月に知的財産推進計画策定

 知的財産基本法に基づき、3月19日に知的財産戦略本部が発足した。本部長は小泉首相、本部員は閣僚17人と有識者10人。7月に「知的財産推進計画」を策定する予定。 (知的財産戦略本部HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/)

 

経団連が、「知的財産推進計画」に意見

 日本経済団体連合会が4月18日、「「知的財産推進計画」への意見」を公表した。産学官連携での知的財産権の事前取決め柔軟化、職務発明の対価は企業での取決めに委ねるなどを求めている。 (経団連HP http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/032.html)

 

大学など122機関、知的財産本部の設置を相次ぎ申請

 文部科学省が4月に受け付けた「大学知的財産本部整備事業」(予算総額24億円)に、122機関計83件が申請した。単独型65件の外、03年度内統合予定の複数機関が共同設置する統合型8件(東京水産大と東京商船大等)、統合予定のない複数機関が共同設置する連合型が10件(都立の大学連合や、東海大と北海道東海大等同一大学法人による連合など)。6月に、モデル校30件程度を選定、7月に知的財産本部設置の予定。 (日経エレクトロニクスonline 4/17)

 

自然科学論文の引用ランキング、世界トップ100に国内5大学

 米の科学情報会社・トムソンISIの日本事務所は4月8日、自然科学論文がどれだけ引用されたかで見た日本の研究機関ランキング(1992-2002年の実績)を発表した。世界のトップ100に、東京大16位、京都大30位など5大学が入ったほか、分野別では、物理学で東京大、材料科学で東北大が世界1位だった。  (「日経」4/8付け、「科学新聞」4/18付け等)

 

日本経団連が、産業力強化の課題と展望を提言

 日本経団連が4月22日、「産業力強化の課題と展望2010年におけるわが国産業社会」を発表した。収益力低下を民間主導で克服することを「産業力強化」と位置づけ、7つの施策を提示し、産業技術力強化では、研究開発投入資源の増額、MOT(Management of Technology)コース普及など産業技術人材の育成促進、知的財産戦略の展開を提言する。 (日本経団連HP http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/035/index.html)

 

経済同友会が、若者の「自立」と「夢」で提言

 経済同友会は4月9日、「「若者が自立できる日本へ」〜企業そして学校・家庭・地域に何ができるのか」を、2月27日に「国民の信頼と回復と若者たちの夢を支えるシステム改革を」で痛みを乗り越える構造改革を提言している。 (経済同友会HP http://www.doyukai.or.jp/)

 

新日鉄など28社連合が落札、文科省建て替え、882億円、最大のPFIプロジェクト

 霞が関の文科省と会計検査院の庁舎の民間資金活用による社会資本整備(PFI)方式での建替えが、新日鉄など28社の企業連合が882億7100万円で落札した。04年度後半着工、07年9月完成予定。  (「時事」4/24付け。国土交通省HP http://www.mlit.go.jp/)

 

東京大、知識量減少で「補習」実施へ

 東京大の教育体制検討委員会は3月25日、06年度の新入生から「補習」にあたるカリキュラムの実施を中間報告としてまとめた。不足している知識について「入学後に適切なカリキュラムで補う必要がある」と結論付けている。内容は今後、学内で検討する。  (「毎日」3/25付け)

 

学生生活実態調査、就職難に不安、資格取得に力

 全国大学生活協同組合連合会が学生生活実態調査(昨年10-11月実施、28大学生協7185人回答)の結果を発表した。仕送りや小遣いを含む月収入は、自宅生62650円(前年比1870円減)、アパートなどで暮らす学生は133790円(同4940円減)。支出は、自宅生58740円、自宅以外の学生は128880円で、過去10年間で最低、食費や電話代が前年より減った。 (「朝日」3/9付け)

 

国の決算に企業会計的手法を導入へ 財務省が方針

 財務省は、国の一般会計や特別会計などの決算に「損益計算書」と「貸借対照表」を用いる手法を恒常的に導入する方針を固めた。施設の資産価値や公務員の退職給付債務等将来発生する債務を計上し、施設の減価償却費等を計上する。現在、貸借対照表は試行的に作成され、特別会計の一部では損益計算書や貸借対照表を採用している。  (「朝日」4/23付け)

 

7.学術関連雑誌の特集等

「学術の動向」(日本学術会議)

03年3月号 特集/特集:科学と社会-いま科学者とジャーナリストが問われている-

03年4月号 特集/ジェンダーの視点から(その2)

 

「学術月報」(日本学術振興会、丸善発行)

03年3月号(通巻700号) 特集: 日本学術振興会の外部評価。海外ニュース:英国における日本の科学及び教育に対する関心の衰退傾向

 

「文部科学広報」(文部科学省)

03/2/24(No.31) 平成13年度小・中学校教育課程実施状況調査特集号

03/2/28(No.32) 平成14年度文部科学白書―新しい時代の学校―進む初等中等教育改革。科学技術・学術審議会国際化推進委員会報告書を公表

03/3/31(No.33) 国立大学法人法案関連6法案について。戦略的創造研究推進事業の平成15年度の戦略目標

03/4/30(No.34) 「英語が使える日本人」の育成のための行動計画、防災に関する研究開発

 

「大学と学生」(文部科学省高等教育局学生課編、第一法規出版発行)

03年3月(No.461) 特集/国立大学におけるキャンパス整備。資料/国立大学等施設緊急整備5カ年計画

 

「大学資料」(大学教育研究会監修、(財)文教協会発行)

03年3月(No.158) 大学設置基準等の改正について(答申)

 

季刊「人間と教育」(民主教育研究所編集、旬報社発行)

No.37 (03年3月) 特集/危機に立つ教育基本法

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(本号は、主に2003年3月〜2003年4月の情報を扱っています)