39 2003年3月7日発行

 

JSA学術情報ニュース

日本科学者会議学術体制部

 

 

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1.アカデミィック・ハラスメント

<アカデミック・ハラスメント訴訟>琉球大教授の嫌がらせ認定で国に賠償命令

 担当教授から講義外しなどの嫌がらせを受けたとして、琉球大医学部の宮本孝甫助教授(63)が国と教授(65)を相手取り、550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、那覇地裁であった。清水節裁判長は「大学は教授の嫌がらせを知りながら適切な指導を怠った」として、国に慰謝料55万円の支払いを命じた。

 判決によると、教授は99年4月、宮本助教授を担当講座の講義と実習からすべて外したとあり、また訴状によると、両者の対立は91年10月、助教授が雑誌に投稿した論文に教授が著者として連記するよう求め、助教授が拒否したことで始まったという。清水裁判長は「教授は7年にわたって軋轢が続いていた助教授の存在を疎んじて講義から外し、裁量を逸脱して違法な嫌がらせをした。職員録発行で助教授の社会的評価が低下し、名誉を害した」と認めた。しかし教授本人への賠償請求は「公務員の違法行為は(雇用者である)国が賠償責任を負う」として退けた。 (毎日新聞ニュース速報2月12日)

 

2.総合科学技術会議 

日本学術会議の在り方について最終まとめ(案)が公表される   

 総合科学技術会議は2月20日、日本学術会議の在り方に関する専門調査会(会長・石井紫郎総合科学技術会議議員)において、、平成13年5月から平成15年5月にかけての13回の会議を経て、「日本学術会議の在り方について最終まとめ(案)」を公表した。その主な内容は、科学者コミュニティの果たすべき役割として、1)科学の水準の向上、2)政府や一般行政への情報提供・政策提言、3)社会への情報発信等を挙げている。組織の在り方としては、1)現行の各学協会の利害から独立すべきで学協会の推薦を見直す必要、2)中長期的観点に立った継続性を得るために現行の3年任期制を改めるべき、3)理事会等の執行機関を設けるべき等を指摘した。さらに当面の改革案として、現行の学術会議が行っている科学研究費補助金審査員の推薦を見直す必要があること、独立法人が望ましいこと、さらには外部評価システムを導入すべき等を提言している。 (http://www8.

cao.go.jp/cstp/tyousakai/gakujutsu/haihu13/haihu-si13.html)

 

3.大学・研究所

レベル低い国立研究所は廃止、文科省が3月に選別

 文部科学省は8日、2004年の国立大学の大学法人化に合わせて、研究活動が国際水準に達しない大学の研究所を廃止することを決めた。基準を設けて研究所をリストラするのは、1949年の国立学校設置法の施行以来初めて。

 このため同省は、〈1〉他大学の研究者が利用できる共同利用機関かどうか、〈2〉国際的な研究レベルにあるか、〈3〉教官の人数が約30人以上で任期制を導入しているか――などの基準に基づき3月までに研究所を選別することにしている。 (読売新聞1月8日)

 

核融合研究、拠点集約へ 京大・九大施設は廃止

 文部科学省の核融合研究ワーキンググループは8日、今後の核融合研究は日欧ロなどで進める国際熱核融合実験炉(ITER)計画など4つの柱に重点をおくとの報告書をまとめた。日本原子力研究所のJT60(茨城県那珂町)、核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の大型ヘリカル装置、大阪大学の「激光12号」に研究拠点を集約する。これに伴い、京都大学や九州大学などの核融合研究施設は、現在の研究が終わり次第、廃止されることになった。核融合研究の人材育成を行う大学の施設がなくなるため、こうした研究機関に学生らが出向いて行う共同研究をいっそうやりやすくする。研究機関から研究者が大学に出向いての研究や授業も充実させる方針だ。ITER計画では、青森県六ケ所村が候補地になっており、フランス、スペイン、カナダも立候補を表明している。 (朝日新聞ニュース速報1月9日)

 

<科学研究費>年度繰り越し可能に 政府が新方針

 大学などの研究機関に交付される文部科学省、厚生労働省の科学研究費補助金が、03年度から複数の年度にわたって使用できることになった。細田博之科学技術政策担当相が10日、閣議後会見で明らかにした。これまでの研究費の単年度使い切り制度は、「年度などの区切りに関係なく進められる研究のスケジュールにそぐわない」と批判が多く、文科、厚労の両省が財務省に改善を求めていた。財務省が認めれば、年度をまたいだ研究費の使用が可能になる。今回、繰り越しが認められるようになったことで、「年度内に全額を消化するため、緊急性のない機材を購入する」といった無駄や弊害も改善されるという。 (毎日新聞ニュース速報1月10日)

 

名古屋大学、高等教育院プロジェクトを発表

 名古屋大学は21日、学内の研究組織「高等研究院」への所属を申請した35教官から15人のプロジェクトを選んだと発表した。高等研究院は、ノーベル化学賞を受賞した野依良治同大大学院理学研究科教授を院長として、昨年4月に設置された。所属する教官は講義や教授会などの実務を軽減もしくは免除される。専門は文系理系を問わない。文部科学省によると、大学教官を研究に専念させる試みは全国でも珍しいという。今回は、歴史史料の保存や継承にかかわる研究をしている佐藤彰一同大大学院文学研究科教授ら15人が、来月1日から同研究院での研究に専念する。各教官のプロジェクトは最長5年。松尾稔名古屋大学長は「独立行政法人に移行後、外部から有名な研究者を高等研究院に呼ぶ可能性もある」と述べた。 (共同通信ニュース速報1月21日)

 

4.教育

一橋大、学生による教官の授業評価を科目ごと実名公開へ

 一橋大学は、全学部のほぼすべての授業で、学生による5段階の授業評価を実施し、結果を教官名を含めて科目ごとに公開することを決めた。学生による授業評価は各大学で広がっているが、ここまで徹底した「通知表」を公開するのは珍しい。評価対象となるのは、法、経済、商、社会の4学部の開講科目約430のほとんど。受講生が20人以下の科目は、「教官に遠慮して率直な意見が書きにくい」と判断してはずした。評価には、大学が作った調査票を使う。「理解できる内容だったか」「説明は分かりやすかったか」など14問の共通質問を載せる。各教官が5問以内で独自の質問を加えることもできる。学生は質問ごとに、「全くそう思わない」1点〜「強くそう思う」5点の5段階で評価するなどして調査票に書き込む。これを統計処理し、科目ごとに結果をまとめる。調査担当の藤田和也・大学教育研究機構長は全面公開の狙いを次のように説明する。「教員を刺激して、授業を改善し、教育水準を上げたい。他大学の例をみても、学生は授業を評価できる。教官や科目名をはっきり出すのが、学生からの批判にきちんと応える道だと考えた。」 (朝日新聞1月5日)

 

「開放型」で教員養成-山形大が県に打診

 南東北の国立大で行われている教員養成課程の再編・統合協議に伴い、新たな教員養成の在り方を検討している山形大が、県に対し、地域連携型の「教師教育システム」を打診していることが8日、明らかになった。県が提出した独自の試案を踏まえた内容だが、現在の計画養成ではなく、いずれかの学部に教員養成機能を残す「開放型」を模索し、入学定員は50人を想定している。長引く教育学部問題を収束しようと、学内で練った構想だが、教員養成機能をどの学部に組み込むかといった点や学生定員の根拠が不透明。さらに依然として県が描くイメージと開きがあるため、高橋和雄知事らが了承するまでに至っておらず、まだまだ議論の余地がありそうだ。構想は(1)開放型の教員養成機能について審議する山形大教師教育機構、(2)山形大、県、山形市の3者が共同で教師教育の維持・発展を図る協議会、(3)課程認定やカリキュラム開発を担う山形大教師教育センターの3組織設置が柱となる。

 【開放型の教員養成】 教育学部卒業と同時に教員免許を取得する計画養成と異なり、国の課程認定を受けた一般学部で、希望する学生だけが必要単位を満たして教員になる仕組み。文部科学省の意向を受けた教員養成課程の再編・統合で、「担当校」を断念した大学で主流になりつつある。先進事例として注目される神戸大は、発達科学部・人間発達科学科(入学定員120人)の初等教育学コースで、小学校教員を養成している。 (山形新聞1月9日)

 

東北大が募集人員削減 少人数教育の徹底

 東北大学は9日、今年4月に入学する学生の募集人員を法、歯、工の3学部で計50人削減すると発表した。少人数教育の徹底などが目的。また、歯学部(後期)では、大学入試センター試験による第1段階選抜の倍率を約4倍から約8倍に変更する。 (共同通信ニュース速報1月9日)

 

教育基本法改悪案、 今国会の後半に法案提出

 第2期中央教育審議会(文科相の諮問機関)は新たな委員で初めての総会を開いた。今後、教育基本法の見直しについて、教育の基本理念、前文、宗教教育についてなど論議し、3月をめどに最終答申を出す。あいさつに立った河村建夫文科副大臣は「今国会の後半において、法案として提出したいと政府も考えている」と中教審の席で初めて明言した。総会につづいて開かれた基本問題部会(鳥居泰彦部会長)では、教育基本法の前文は必要だという意見が大勢を占めたが、「前文の第1段落(別項)はいらない。敗戦ショックという制定時の時代風潮が色濃く、それを克服しなければならない」として、戦前の教育への反省を踏まえた制定の過程を示す部分をなくすよう求める意見や、「前文に民主主義や国際的貢献などを書いておけば、条文で愛国心と書いても誤解されない」など、かなりの書き直しを求める意見がでた。 (しんぶん赤旗2月5日)

 

5.国立大統廃合問題 

道教育大と6単科大の再編、地域ぐるみで“当面断念”に(北海道)

 北海道教育大学と道内6単科大学の再編統合は、昨年12月の6大学学長懇談会で、当面は断念することになった。その背景には学内外の世論と運動がある。道教育大学釧路校では、大幅縮小から同校を守ろうという運動が地域ぐるみで広がり、約1カ月で9万2千人分の署名運動、シンポジウム、議会決議が相次ぎ、大学も案を変更した。室蘭工業大学の場合、同大学職員組合(橋本忠雄委員長)は、問題を全学と地域ぐるみの運動にしようと力を注いだ。国立大学の法人化が、大企業に役立つ一部の有力大学は残すが、地方の大学の「リストラ」「再編統合」が進められること、自治体と地域住民が大きく影響を受けることを書いたビラを5万枚つくり、室蘭市と登別市に全戸配布した。すぐ反応があったのは学生マンションの大家さんである。組合事務所にきて「われわれは20年賦で建てている。大学がどうなるかわからないなんて。がんばれ」と激励した。そこで組合は、下宿の大家さんや商店会によびかけて「地域懇談会」をもち、懇談会で「大学のリストラなどとんでもない。市議会や国会に訴えよう」との声が出され署名運動が広がっていった。 (しんぶん赤旗1月26日)

 

教育学部と付属学校・園残せ、知事と一緒に運動盛り上げ(高知)

 昨年2月、高知大学付属学校・園の保護者を中心に、広く個人や団体に呼びかけながら「高知大学に教育学部と附属校園を残す会」が結成された。以来、知事や県議会への要請、高知県選出の国会議員への要請などを重ね、存続を求める県議会決議が可決された。土佐の教育改革に取り組んでいる高知県としても、教員養成にとっても教育学部は大事だという認識が広がった。4月からは、「残す会」として文部科学省に存続を求める署名活動に取り組み、6月25日に橋本知事といっしょに9万3千人分を超える署名を提出。国会では、要請を受けた議員が衆参両院の委員会で質問にたち、内容は「残す会」にそのつど報告されて運動にいかされてきた。文部科学省は国会で「土佐の教育改革は高く評価している」「プランをもって押しつけたり指示しているわけではない。地元の民意を大切にして議論を」「教育学部統合と付属校園の廃止は直結しない」と答弁した。 (しんぶん赤旗1月26日)

 

全国で教育学部「守る会」・「30人学級」の運動が進む

 「地域の教育学部を守れ」の運動は、北海道や高知県のほか、群馬、青森、岩手、山形、福島、栃木、福井、奈良、山口、滋賀、香川などでも起こっている。地元の教育関係者や経済界、父母ら広範な人々の署名運動などによって、県議会や各自治体議会で政府への意見書が可決され、知事と文部科学省との交渉が行われたりしている。当初、文部科学省は2002年度中に「再編・統合を策定する」としていた。しかし、国民の運動の前に、「地元の理解と協力を得つつすすめる」(昨年の国立大学長懇談会での遠山敦子大臣あいさつ)、「期限を限って計画をということではない」「統合しないからといってペナルティーを科すものではない」(日本共産党の石井郁子衆院議員への説明)との立場を表明し、計画通りにすすんでいない。 (しんぶん赤旗1月26日)

 

6.独立行政法人化

国立大法人、学長は1期最長6年に 

 国立大の04年春からの法人化の準備を進めている文部科学省は、その基礎となる「国立大学法人法案」の概要を固めた。経営を審議する協議会に学外の有識者を半数以上いれて構成することや、現在は最長でも4年となっている学長の1期の任期を6年までの長期で設定できるようにすることなどを盛り込んでいる。関係機関とさらに調整して法案化し、2月下旬にも政府案として今国会に提出する。法案概要によると、法人の運営にあたっては、学長と理事でつくる「役員会」と、主に経営に関する審議をする「経営協議会」、主に教学面の審議をする「評議会」がそれぞれ携わる。学長の任期は、「2年以上で6年を超えない範囲」で各法人が定めることを構想。6年に設定することもできるようにすることで、運営におけるリーダーシップを発揮しやすくする。 (1月21日 http://www.asahi.com/national/feature/k2003012100116.html)

 

学長資格で大学設置基準改定

 文部科学省は22日、大学設置基準(省令)を改正し、大学の学長資格について、これまでの「大学の教育、研究経験者が望ましい」との規定を削除する方針を固めた。国立大学の法人化など大学改革を進める中、各大学が個性や特色を打ち出すため、大学人に限らない幅広い人材登用に配慮した。 (時事通信ニュース速報1月23日)

 

「認証評価機関」創設、全大学に義務づけ/統制強化、選別・淘汰の恐れ

 昨年10月の臨時国会に提出された「学校教育法の一部を改正する法律案」は、大学関係者にもあまり知られないうちに成立したが、「改正案」の重要な内容をなす「認証評価機関」の創設はこれからの大学制度の根幹にかかわる問題を含んでいる。「改正案」は、大学の設置認可事項の規制緩和、法令違反大学に対する是正措置、高度専門職業人養成のための専門職大学院の創設などとともに、大学の自己点検・評価の実施とその結果の公表の義務づけ、および文部科学大臣の認証を受けた「認証評価機関」の創設から成り立っている。文部科学大臣の認証を受けた評価機関による評価を「認証評価」というが、これが国公私立のすべての大学に一律に義務づけられるとともに、新たに設けられる専門職大学院にも義務づけられる。「改正案」によって、特にこれまで第三者評価が義務づけられていなかった私立大学に対しても「認証評価」が義務づけられることに注目すべきである。しかも、「認証評価」を受けなければ、法令違反となり是正措置の対象になりうる。「認証評価」が学問の自由に抵触し、官僚統制を強めるだけでなく、大学のリストラの有力な手段たりうることに目を向ける必要がある。 (しんぶん赤旗1月22日)

 

<大学設置>敷地面積基準を大幅に緩和

 大学の設置基準の改正を検討してきた中央教育審議会の大学分科会は23日、開設に必要な敷地面積基準の大幅緩和や、新たに入試を公正に実施することなどを盛り込んだ答申をまとめた。これを受け、文部科学省は今年4月から施行する。新たな設置基準では、校地面積の要件を大幅に緩和し、現在より少ない面積での大学開設を可能にする。例えば、学生の収容定員が3700人の工学部の場合、従来は約13万6千平方メートルが必要だったが、新基準では約3万8千平方メートルでよくなる。 (毎日新聞ニュ-ス速報1月23日)

 

「大学改革を考えるアピールの会」<大学法人化>反対を訴え 

 国立大学の「大学法人」化をはじめとする国の大学改革に懸念を示す有識者らでつくる「大学改革を考えるアピールの会」(代表・池内了名古屋大教授)が、政府が今国会に提出予定の国立大学法人化法案に反対するアピールを28日発表した。メンバーは池内さんのほか、元山梨大学長の小出昭一郎さん、作家の井上ひさしさん、映画監督の山田洋次さんら計13人。アピールは、国立大学を大学法人という半民営化の状態にするのは、日本の学問・文化の発展にとって大きなマイナスと指摘。各分野の上位30大学に対して通常の研究費などとは別に予算を重点配分する「トップ30大学」構想は差別政策だと批判した。また、政府に対し、教育の自由の保障と大学の自主的な改革を尊重するよう訴えている。 (毎日新聞1月28日) 

国立大法人化法案固まる、経営協議会を新設

 文部科学省は30日、2004年4月から国立大学を法人化するための国立大学法人化法案など関連6法案の概要を固めた。171機関を97法人に再編統合、国立大学法人の経営審議機関として「経営協議会」を新設して過半数の学外委員を置くことや、「第三者評価制度」導入などが柱。産学連携強化をにらみ、研究成果活用のため技術移転機関(TLO)への出資規定を盛り込むことも検討している。文科省は2月下旬にも関連法案を国会に提出、予定通りの法人化を目指す。6法案は国立大のほか関連機関の法人化などを規定。骨子によると、現行の国立99大学を89法人に、国立歴史民俗博物館など15の大学共同利用機関は4法人に統合、その他の機関も大幅に整理する。現状では公務員である教職員の身分は「非公務員型」とし、各法人で任期制などを検討する。 (日本経済新聞1月30日)

 

国立大学法人化法案の阻止、東大で大学人が集会

 文部科学省が今月末にも「国立大学法人化法案」の国会提出をねらうなか、東京大学職員組合などのよびかけで「国立大学の独法化・再編統合に反対する交流討論・決起集会」が1日、東京大学で行われ、全国から大学教職員、学生など130人が集った。集会の呼びかけ人の1人である東京大学職員組合委員長の小林正彦氏は「国の財政危機により、国の機関が縮小されようとしている。『法人化で自由になる』という議論は幻想でしかない」「大学人の生きざまが試されるとき。たたかいの輪をひろげよう。」とあいさつ。討論では「政府は、教育基本法改悪により財政の圧縮のもとでも思い通りの重点配分ができる仕組みを公教育全体につくろうとしている。国立大の法人化は一体のもの」「教育基本法改悪反対のたたかいとの共同も大切」との指摘があった。 (しんぶん赤旗2月2日)

 

国立高専、04年に法人化 文科省検討会が中間報告

 国立の高等専門学校の在り方を審議してきた文部科学省の検討会(主査・四ツ柳隆夫宮城工業高専校長)は5日、法人化を提言する中間報告を提出した。全国に55ある国立高専が、新設の「独立行政法人国立高等専門学校機構(仮称)」の下にまとまることが柱。独立性を強めることで教育研究活動の活性化を狙う。計約6700人の教職員は「非公務員」とし、高専間などの人事交流を促すとしている。3月をめどに最終報告をまとめ、文科省は関連法案を通常国会に提出し、国立大と同様に来年春から法人化する方針。国立大は各校ごとに法人化するが、高専は規模が小さいことから、中間報告は、高専が連合して1つの法人格とすることが妥当だとした。 (共同通信ニュース2月5日)

 

国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部科学大臣挨拶2月10日)

 全文は文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki/daijin/F_030201.htm

)に載っている。

 

国立大法人化、月末にも法案提出 学長会議で文科相が概要示す

 文部科学省は10日、東京都内で国立大学の学長会議を開き、国立大学法人法案の概要を明らかにした。遠山敦子文科大臣があいさつし、「今月末に閣議決定し、国会に提出したい」とのべた。遠藤純一郎高等教育局長は法人が財産を所有し大学を設置することになると説明。「法案には(教職員の身分保障を定めた)教育公務員特例法はいっさ適用されず、教授会の規定もない」とのべた。概要は、国立大学法人には、学外者が参加する「役員会」(学長、理事らで構成)を新設し、予算の編成や学内組織の改廃など重要事項を議決するとしている。また、半数以上の学外者で構成する「経営協議会」と教職員でつくる「教育研究評価会」を設け、大学の経営と教学を完全分離する。法人の長である学長は、経営協議会と教育研究協議会の同数ずつの代表による「学長選考会議」の選考に基づき、文部科学大臣が任命する。6年期限の中期目標の決定に際しては、文科大臣は、国立大学法人の意見に「配慮」するとしている。 (しんぶん赤旗2月11日)

 

国立大法人の役員数、閣僚折衝で合意

 来年4月から法人化する国立大の役員数を全国89大学で計503人とすることが12日、片山虎之助総務相と遠山敦子文部科学相の折衝で固まった。文科省は、各大学ごとの役員数を盛り込んだ法案を2月末に提出する予定だ。法人化に当たって大学の意思決定機関として、学長と学外の有識者を含む理事で構成する役員会を設置することが決まっており、学長を含む役員数について両省が協議していた。閣僚折衝の結果、各大学9から4人の役員数が決定。既に独立行政法人化した組織を参考に、各大学の教職員数を基準として算定した。大学別では筑波大、神戸大、九州大の9人が最多で、次いで東大や京大、大阪大など旧帝大や岡山大、広島大が8人。特に筑波大や神戸大、九州大など統合、再編をしたり、決めたりした大学には、それぞれ1人を加算配分。一方、単科大や短大など小規模大は常勤理事3人と非常勤理事1人の計4人となった。 (共同通信ニュース速報2月13日)

 

独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局/臨時総会の招集、国大協理事会および各国立大学長に求める

 独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局は、2月20日に開催された国大協法人化特別委員会での内容をもとに、国大協理事会および各国立大学長に臨時総会の招集を求めた。意見の3分の2は「概要」に関して批判的なものであり、その主要な論点は、(1)設置者が国でないこと、(2)経営と教学が分離されていること、(3)学長権限が強大であること、そして(4)学術体制のグランドデザインがないこと、の4点であり、この内容を踏まえて次の3点を要求した。

 第一に、本日提出される法人化特別委員会報告を了承せず、直ちに各大学に送付すること。

 第二に、準備中の国立大学法人法案ならびに関連法案の全文公開を文科省に要求すること。

 第三に、国立大学法人法案について検討する国大協臨時総会招集を議決すること。

(首都圏ネット 2月24日 http://www.ne.jp/asahi/tou shoku/hp/wev030224syutokenn.html)

 

研究者・文化人ら、国立大法人化に反対署名

 国立大法人化法案に反対する研究者や文化人でつくる「大学改革を考えるアピールの会」(呼び掛け人代表・池内了名古屋大教授)は24日、同法案の国会提出中止などを訴える声明に、約1300人から賛同の署名が寄せられたと発表した。声明には、作家の井上ひさしさんや小田実さん、映画監督の山田洋次さんらが参加。政府が今月末に提出を予定している法案では学問・文化の土台が破壊される、として政府に対し提出を中止し、国立大の自主的な改革を尊重するよう求めた。同会によると、声明を先月末に公表して以降、「大学の自由、学問の自由は民主主義の根幹をなすもの」(作家、佐野洋さん)「もうかる学科に力が入り、基礎的な学科は消滅する恐れがある」(写真家、田沼武能さん)といったメッセージが寄せられた。 (共同通信2月24日)

 

国大協理事会、総会開催を決定

 国大協会長サイドは、30数大学からの意見書に答えないまま、今回の理事会で国大協としての見解をまとめ、それを会長談話として発表するという方針を取っていたが、これに対して各理事から異議が続出した。最終的には、国大協総会を開催し、そこで国大協としての意思を決定するという確認がなされた。国大協は異論を抱えたままに会長談話で結着をつける、という手法を取ることができなかった。これは国大協の「白紙委任」を取りつけようとした政府にとっても意図せぬ事態である。(首都圏ネット 2月25日 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030226syuto.html)

 

日本学術会議10年内に独立を…科技会議が改革策

 動きが遅いなどの批判が出ていた日本学術会議の今後のあり方について、総合科学技術会議(議長・小泉首相)は26日、「国の機関として存続を」と望む学術会議側の主張を退け、10年以内に国から独立した法人とすべきだとする改革策を決めた。会員選抜や意思決定の方法については、法人化を待たずに早急に改めるよう求めている。日本学術会議は文系、理系の研究者210人で組織され、科学技術政策について政府に提言するなどの役目がある。しかし、提言作成に長時間かかることなどから存在感が薄れ、一昨年から科技会議が改革を検討していた。改革策によると、学術会議は政府に批判的な提言をする必要性もあるため、国から独立した法人が理想とした。だが、即座に法人化するには学術会議が十分に成熟していないと判断。まず運営体制の改革を先行させ、10年以内に法人化を検討するよう提言した。 (読売新聞2月26日)

 

学長の権限強化・国立大法人化法案

  文部科学省は27日、2004年4月から国立大学を法人化するための法案をまとめ、事務次官会議に報告した。学長に役員会理事の解任権を与える半面、文科相は職務上の義務違反や業績悪化を理由に学長を解任できる。法人化で学長は従来より大きな権限を与えられる半面、経営面での責任も厳しく問われることになる。法案は28日に閣議決定する。法案などによると、運営上の重要事項は学長と理事で構成する役員会で決める。理事数は各法人ごとに教職員数などを基に法で定める。学長は心身の健康状態、職務上の義務違反、業績悪化を理由に理事を解任できる。半面、同様の理由で学長選考会議が学長解任を発議し、これを受けて文科相が学長を解任することもできる。独立行政法人通則法も準用、文科相が立ち入り検査で帳簿類を調べることも可能にする。国立大学法人は教育面と経営面をそれぞれ「教育研究評議会」と「経営協議会」に委ね、経営協議会には過半数の学外委員を置くことで学外の斬新な発想を取り入れやすくする。 (日本経済新聞2月27日)

 

7.学術関連雑誌の特集等

「学術の動向」(日本学術会議)

03年1月号 特集:日本の計画Japan Perspective

03年2月号 特集:研究・教育の現場から見た国立大学改革

「学術月報」(日本学術振興会)

03年1月号 特集:学術研究と知的財産

03年2月号 特集:宇宙研究-多様な宇宙像を描く

「大学と学生」(文部科学省高等教育局学生課編)

03年1月号 特集:新春教育随想

03年2月号 特集:学生相談

「科学」(岩波書店)

03年1月号 特集: 海にもぐる動物の行動をさぐる

 2002年度ノ-ベル賞受賞者の業績と人柄 「記念対談」実験物理学への挑戦(小柴昌俊・佐藤勝彦)

2月号 特集1:二重らせん発見50周年/特集2:水問題の新しい局面-グローバルとローカルの間で

 

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(本号は、主に2003年1月〜2月の情報を扱っています)