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37 2002年 11月 5日発行 |
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JSA学術情報ニュース |
日本科学者会議学術体制部 |
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(TEL) 03-3812-1472 |
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(注:このニュースではホームページを「HP」と表記しています。)
1.2003年度科学技術関係予算概算要求
2003年度概算要求の科学技術関係経費3兆9535億円(+11.7%)、重点4分野大幅増
2003(平成15)年度概算要求(8月末締切)での科学技術関係経費の総額は3兆9535億円(+11.7%)、内一般会計2兆2082億円(+19.3%)、特別会計1兆7454億円(+3.4%)。一般会計の内、基礎分野に近い競争的資金などを含む科学技術振興費は1兆5279億円で29.8%の伸び。総合科学技術会議が資源配分で重点化するとした重点4分野は、ライフサイエンス2091億円(+28.0%)、情報通信1288億円(+11.5%)、環境640億円(+26.2%)、ナノテク・新材料231億円(+100.9%)と大幅増額要求。第2期科学技術基本計画中に倍増する競争的資金は4045億円(+17.3%)。文科省+12%、厚労省+31%、農水省+76%、経産省+37%。国立大学等施設整備は2311億円(62万u分)。総合科学技術会議が各施策を評価調整し、10月中旬までに優先順位付けする。 (「科学新聞」10/4付け。総合科学技術会議HP http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu20/siryo1.pdf、文部科学省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/09/020922.htm)
<主要省庁HPでの2003年度予算概算要求>
文部科学省 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/09/020910.htm
農林水産省 http://www.maff.go.jp/soshiki/kambou/kessan/h15/yokyu_gaisan/index.html
経済産業省 http://www.meti.go.jp/topic/data/e20829aj.html
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/03gaisan/index.html
環境省 http://www.env.go.jp/guide/budget/h15/h15juten-1.pdf
総合科学技術会議が概算要求の優先順位付け
科学技術政策担当大臣と総合科学技術会議有識者議員は10月18日付で、03年度科学技術関係概算要求の内、新規施策と、原則20億円以上の既存施策を、4段階に優先順位付けを行った。政府予算案編成で考え方が十分に反映されるようフォローアップする。全体では、S:90項目(29%)、A:129項目(41%)、B:65項目(21%)、C:27項目(9%)。基礎研究では、S20%(ニュートリノ研究、21世紀COEプログラム等)、A40%。ライフサイエンスでは、S26%、A40%。競争的研究資金は、S43%、A57%。産学官連携は、S38%、A50%。 (総合科学技術会議HP http://www8.cao.go.jp/cstp/budget/h15ordergaiyo.pdf)
2.総合科学技術会議の動きと科学技術政策
( 総合科学技術会議の動きは、総合科学技術会議HP http://www8.cao.go.jp/cstp/ で、専門調査会やプロジェクトの配布資料や議事内容を含めて基本的に公開されています。)
最近の総合科学技術会議本会議の主な議事
第18回(2002.5.29 17:00-18:00)
@国際熱核融合実験炉(ITER)計画、A今後の宇宙開発利用に関する取組みの基本、B科学技術システム改革(知的財産戦略、産学官連携の推進、競争的資金制度改革)、C平成15年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針、D「平成13年度科学技術の振興に関する年次報告」
第19回(2002.6.19 17:00-18:00)
@平成15年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針、A科学技術システム改革=知的財産戦略、産学官連携の基本的考え方と推進方策、競争的研究資金制度改革、第1回産学官連携推進会議の結果報告、B今後の宇宙開発利用に関する取組みの基本、C地球温暖化対策技術戦略プロジェクトの設置
第20回(2002.7.24 17:00-17:50)
@平成15年度の科学技術関係予算の概算要求に向けて、A知的特区、BBT研究開発プロジェクトチームの設置
第21回(2002.9.26 15:00-16:00)
@平成15年度予算編成、A産学官連携の推進-第2回産学官連携サミット等、BITER(国際熱核融合実験炉)計画、Cナノテクノロジーを巡る最近の動向(月例科学技術報告)
小泉内閣改造で、細田博之科学技術政策担当大臣が就任
9月30日の内閣改造で、細田博之・衆議院議員(通産省出身)が、科学技術政策担当大臣(情報通信技術(IT)担当大臣も兼任)に就任した。細田大臣は、「最先端の科学技術こそが日本構造改革を推進させる最も重要な事柄」「尾身幸次前大臣以上に様々な人を巻き込んでいきたい」と発言している。 (「科学新聞」10/11付け)
学術会議のあり方見直しで論点の中間整理
総合科学技術会議日本学術会議の在り方に関する専門調査会(会長・石井紫郎総合科学技術会議議員)は9月20日、「日本学術会議の在り方について(案)」をまとめた。政策形成を直接担う総合科学技術会議と「車の両輪」をなすと位置付け、科学者の視点から中立的に政策提言を行い、予算配分や予算編成方針は提言事項に含めない、部門編成の柔軟化、多様な会員選出などを提言している。10月16日にも議論を行った。 (日本学術会議の在り方に関する専門調査会HP http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/gakujutsu/haihu11/haihu-si11.html)
日本学術会議は、2001年2月に運営審議会の附置委員会として「日本学術会議の在り方に関する委員会」を設置し、常置委員会の廃止、運営審議会への集権化等の方向で、検討を進めている。 (日本学術会議HP http://www.scj.go.jp/arikata/arikatatop.html)
科学技術システム「改革」でさらに活発な検討
総合科学技術会議科学技術システム改革専門調査会は9月25日、(1) 「研究開発型ベンチャープロジェクトチーム」を設立し、大学等の研究成果の事業化の困難=「死の谷」状況を打開するため、ベンチャー支援方策、企業からの人材と知的財産の移転、起業家への専門家支援体制について検討し年度内に報告をまとめる、(2) 「競争的資金制度プロジェクトチーム」が、予算案での改革状況をフォローするとともに、大学等の研究者の給与制度、基盤的経費のあり方、ポスドク制度、プログラムオフィサーやプログラムディレクター制度などにつき年度内の取りまとめを目途に検討すること、などを決めた。 (科学技術システム改革専門調査会HP http://www8.cao.go.jp/cstp/tyosakai/system/hiahu15/haihu-si15.html)
3.経済財政諮問会議など内閣主導の動き
文部科学相が、経済財政諮問会議に、非公務員型法人等を説明
遠山文部科学相が8月30日、経済財政諮問会議に、義務教育費国庫負担制度の見直し、 国立大学の非公務員型法人への早期移行、大学に関する規制改革の推進、研究開発プロジェクトの見直しと科学技術システムの改革等を説明した。法人化と非公務員型のメリットを説明するとともに、既存プロジェクト見直しと重点4分野や経済活性化のための研究開発プロジェクトへの重点投資などの方針を述べた。 (経済財政諮問会議HP http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0830/0830item2.pdf)
科学技術担当相が、経済財政諮問会議に、科学技術に関する4つの改革戦略を説明
尾身科学技術担当相(当時)が、科学技術のグローバル競争に打ち勝つために、研究者、大学等研究機関、地域のあらゆる局面で競争原理を導入し、世界に通用するレベルを実現するとして、大学の構造改革、産学官連携のための制度・政策改革、地域科学技術振興、経済活性化プロジェクトの4つの改革・戦略を1〜2年集中的に実施することを説明した。 (経済財政諮問会議HP http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0830/0830item3.pdf)
中教審基本問題部会、教育基本法改正の中間報告案を審議―国や郷土愛する心を提言
中央教育審議会(鳥居泰彦会長)総会は10月30日、「伝統・文化の尊重」「郷土や国を愛する」「公共」意識等、教育基本法全面見直しなどの中間報告案を審議した。報告案は、今後5年間の教育指針を定める「教育振興基本計画」も提言し、できるだけ具体的政策目標を明記するとした。11月14日に中間報告を文科省に提出、全国5か所の地方公聴会を開き、年内にも答申をまとめる。文科省は次期通常国会に教育基本法改正案提出の見通し。 (10/30付け各紙夕刊。中教審HP http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/index.htm に議事録)
日弁連、教育基本法改正で慎重な対応を、文科省などに意見書
日弁連は9月21日、「基本法改正が憲法に違反したり、憲法の実質的変更につながる恐れがある」として、慎重な対応を求める「教育基本法の在り方に関する中教審への諮問及び中教審での議論に対する意見書」を文部科学省と中教審に提出した。 (日弁連HP http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/data/2002_24.pdf)
研究予算の充実提唱=大綱策定に向け論点整理-BT戦略会議
政府の「バイオテクノロジー(BT)戦略会議」(座長=岸本忠三・阪大学長)は10月18日、12月の「BT戦略大綱」策定に向け「論点整理」した。バイオ産業を自動車や電機に次ぐ基幹産業に育成するため、(1)研究開発の充実(2)産業化対策の強化(3)国民理解の浸透-を戦略の3本柱とし、米国の1/7のバイオ研究開発予算の充実強化を強く提唱した。 (各紙10/19付け。BT戦略会議HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/bt/dai3/3gijisidai.html)
「IT戦略」第2ステップへ
政府のIT戦略推進本部(本部長・小泉首相)は9月18日、IT分野の「産業発掘-技術革新」戦略の策定、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議設置、行政手続のオンライン化推進など、IT戦略の第2ステップの方向について審議した。 (「科学新聞」9/27付け。IT戦略推進本部HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai14/14gijisidai.html)
4.産学官連携強化をめぐる動き
産学官連携での法令違反事前防止など、「利益相反」で報告書素案
文部科学省の科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会利益相反ワーキンググループ(主査=安井至・東大生産研究所教授)は9月26日、産学官連携の健全な推進のため、教員の金銭情報開示、利益相反アドバイザーによる事実関係検討、利益相反委員会による対応策検討、教員への勧告などの学内システムを提案した。 (「科学新聞」10/4付け)
産学連携、大もうけはダメ…文科省がルール作り要請
文部科学省の科学技術・学術審議会のワーキンググループが11月1日、米国での1980年代の経験を踏まえ、産業化の行き過ぎで大学研究者が世間から批判を受ける事態を想定して、大学ごとに利益配分などの規範を作ることを求める報告書をまとめた。 (「読売」11/2付け)
11月に第2回産学官連携サミット開催、総合科学技術会議が確認
11月18日、第2回産学官連携サミットとして、内閣府、日本経団連、日本学術会議の主催、総務省、文科、厚労、農水、経産、国交、環境省、JST、NEDO、JSPSの共催で、産学官トップ約1200名が参加し、パネルディスカッション、合同記者会見、交流会を行う。 (総合科学技術会議HP http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu21/siryo2-3.pdf)
知的財産基本法ー大学や企業の発明者の処遇責務規定設け了承
政府の知的財産戦略会議は10月16日、特許や著作権など知的財産の保護・活用などの施策を集中的計画的に推進することを目的とする知的財産基本法案を了承した。大学等の責務として、成果の普及を規定する。また大学や企業が研究者の処遇確保に努めるとの責務規定を急遽設けた。臨時国会に提出される。 (「毎日」10/16付け等)
日本経団連が、知的財産基本法の早期成立求める提言
日本経団連は9月19日、「産業競争力の強化に向け、知的財産基本法(仮称)の早期成立を望む」を提言した。国際競争に打ち勝つため、事業戦略や研究開発戦略と一体になった知的財産戦略の構築が不可欠だとし、最も早い国会での成立を強く求めている。 (日本経団連HP http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2002/057.html)
5.法人化など文部科学省と大学、教育「改革」をめぐる動き
(注:情勢の変化が早いため、独立行政法人化問題の情勢や関係各界の具体的な動きは、全大教近畿HP=http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/、独行法反対首都圏ネットワークHP=http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html、独立行政法人化問題週報HP=http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.html、独立行政法人問題千葉大学情報分析センターHP=http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/などをご参照ください。)
『国立大学法人法』閣議決定は2003年3月か、「文教速報」に文科省案
「文教速報」9/11号(No.6367)によると、大きな法案だけに閣議決定は03年3月、成立は通常国会会期末の6月、中期目標・計画は03年6月に概算要求とセットで原案を提出するなどの見通しが示されている。同記事に添えられている「国立大学法人化のスケジュールのイメージ」図が、独立行政法人反対首都圏ネットワークHPに掲載されている。(首都圏ネットHP http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/houjikasukejuru020922.pdf)
東大21世紀学術経営戦略会議が、新国立大学法骨格案を文科省に提出
東京大学21世紀学術経営戦略会議(UT21)は、10月8日の全体会に、「新国立大学法骨格案」を資料として提出した。国立大学法人法に最低限盛り込まねばならないものとして東大が作成したものであり、既に文部科学省に提出している。
「学校教育法に根拠を置いて設置者を国とすることを明記した上で、評議会権限を強化する、学長選考を評議会決定とするという2点について文科省『最終報告』の枠組みの変更を求めていると読むことができる。」(首都圏ネットワーク事務局声明)、「文科省の法人化『最終報告』の枠組の中ではあるが原理的批判を展開した」「法人化法案を国会に提出させない可能性のある状況」(田端博邦東京大学職員組合委員長)という評価がある。 (独行法反対首都圏ネットワークHP http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/toudaihoujiann0201008.htm、 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/021015syutokenseimei.htm。 「赤旗」10/20付け)
文部科学省が、世界的研究拠点に東大など50大学選定、不透明さ指摘する声が多数
世界最高水準の研究教育拠点を学問分野毎に形成するため予算を重点配分(今年度分182億円)する文部科学省の「21世紀COE(卓越した拠点)プログラム」(旧「トップ30」)の選定結果が10月2日に公表された。同省から委託された日本学術振興会が、各分野の専門家による選考委員会を設け、生命科学など5分野163大学464件の応募から50大学113件を選んだ。国立大が31大学84件、私立大は15大学25件で、「国高私低」(旧7帝大で46%)、従来の科学研究費補助金の配分割合とほぼ同じだ、など審査の不透明さや基準の不明朗さを指摘するマスコミ報道が多い。 (「毎日」10/2付けなど。日本学術振興会の21世紀COEプログラム委員会HP http://www.jsps.go.jp/j-21coe/kekka.pdf)
COEの交付額を決定 京大の19億6000万円が最高
文部科学省は10月29日、「21世紀COEプログラム」の本年度補助金交付額を決めた。総額167億円、京大、東大、大阪大3校で全体の30%、国立大が全体の78%。 (「日経」10/30付け)
経済産業省が、産業界からみた大学評価手法の開発
経済産業省の外郭団体NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が募集した「大学活動評価手法調査」に、河合塾と三菱総研の共同提案が採択された。経済産業省では、今後5年間で、産業競争力向上の観点からみた評価のあり方の調査分析、評価手法の開発を行う。 (三菱総研HP http://www.mri.co.jp/NEWS/2002/pr02080110.html)
第三者評価の7年ごと実施義務化-学校教育法改正案
文部科学省が臨時国会に提出する学校教育法改正案では、短大を含むすべての大学に7年に一度の第三者評価を義務付ける一方、学部学科の組織改編の一部を届け出制に改める。法令に違反した大学への是正措置として新たに改善勧告制度も盛り込む。また改正案には、法科大学院(ロースクール)など高度な専門職業人を養成する「専門職大学院」の設置も盛り込んだ。中央教育審議会の8月の答申に応えたもの。 (「共同通信」10/8付け)
「教える」大学、重点助成へ文部科学省
文部科学省は、優れた教育を行っている国公私立大学・短大を重点的に助成する「特色ある大学教育支援プログラム」経費を03年度概算要求に盛り込んだ。大学の個性化を図り、国際競争力をつけることが狙いで、選定は大学・短大関係者や外部の関係機関、有識者からなる委員会が行い、140億円の枠内で予算を重点配分する。 (「読売」9/14付け)
文部科学省が、海外大学の進出自由化を検討
文部科学省は、海外大学の日本進出に対し、専門家を交えた検討会を設立する。世界貿易機関(WTO)の提起に基づき、「サービス貿易自由化」に関して、米国など8カ国が「高等教育サービスの自由化」を要求してきたため、日本はWTOに対し、来年3月に1次回答、04年中に最終回答を出す。ユネスコなど国際機関と連携し、各国の大学評価機関との情報交換、各国の大学や大学制度の把握、日本の大学の情報発信方法、などを検討する。(「朝日」8/23付け)
2001年度の私学補助金、過去最高
日本私立学校振興・共済事業団のまとめでは、私立の大学、短大、高専への国の補助金合計は、前年度比69億円(2.3%)増の約3094億円で、過去最高を更新した。配分先は大学450、短大415、高専3の計868校。1校当り平均補助金は約3億6000万円。 (「共同通信」10/8付け)
文部科学省が改修事業でPFI拡大
文部科学省は、国立大学の施設建設にPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)事業導入を進め、03年度要求で事業費981億円を盛り込んだが、さらに、来年度から既存施設の改修事業を中心に、約40万u規模、事業規模は約700億円相当を見込んで、03年度予算で導入可能性調査費3億6300万円を要求している。 (「建設通信新聞」8/30付け)
構造特区で株式会社の教育参入実現、防災担当相、文部科学相が一致
鴻池祥肇防災担当相と遠山敦子文部科学相が10月9日会談し、地域限定で規制を撤廃・緩和する「構造改革特区」において、株式会社による学校経営が実質的に可能になるよう学校法人の認可基準を緩和することで一致した。 (「時事通信」10/9付け)
財務諸表、全特別会計で統一へ
財務省の財政制度等審議会公企業会計小委員会が10月30日、特別会計の財務書類の作成基準案を決めた。財務諸表として (1)損益計算書にあたる業務費用・財源計算書、(2)貸借対照表、(3)キャッシュフロー計算書に相当する区分別収支計算書を作成する。特別会計が出資や補助金を出している特殊法人や独立行政法人も連結会計の対象とする。退職給付引当金の計上、減価償却、保有有価証券の時価評価を導入する。 (「朝日」10/25付け、「日経」10/30付け)
独立行政法人、職員は非公務員に
政府の特殊法人等改革推進本部が10月18日、「特殊法人等の廃止・民営化等及び独立行政法人の設立等に当たっての基本方針について」を決定した。 (1)新独立行政法人の職員は原則、非国家公務員とする(2)新法人の役員報酬は厳に適正な水準とし、給与水準を分かりやすい形で公表する(3)新法人が欠損金を受け継いだ場合でも安易な国費投入はしない-などが柱。関連46法律案を臨時国会に提出する。 (「日経」10/17付け。行政改革推進本部HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gyokaku/kettei/021018kihon.html)
日本化学会が国立大学長へ労働安全衛生法について警告
日本化学会(野依良治会長)は9月2日、国立大学長に対し、「国立大学法人化に伴う労働安全衛生法適用への対応に関するお願い-組織の整備と予算化について」を提示した。各大学のアカデミックプランやキャンパスプランに再考を促す重大問題だとして、教職員・学生の安全管理、危険防止、傷害防止に必要な措置の検討を求めている。 (独行法反対首都圏ネットワークHP http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4484.htm)
6.その他科学技術をめぐる動き
文部科学省が「研究活動実態調査報告」
文部科学省は、毎年の産学の研究者アンケート調査による「我が国の研究活動の実態に関する調査報告」(平成13年度)を、9月4日に公表した。任期付雇用を経験すべきとの回答が75%だが、実際の経験者は43%で流動化は低調としている。他に、競争的資金、共同研究、発明者の処遇などの集計がある。 (「科学新聞」9/13付け。 文部科学省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/09/020901.htm)
文部科学省が、民間企業の研究活動の調査報告を公表
文部科学省は9月12日、「平成13年度民間企業の研究活動に関する調査報告」を公表した。資本金10億円以上の有効回答1,026社の調査結果で、研究開発人材、研究費、研究開発戦略、知的財産権、研究協力等の状況をまとめている。院卒の研究者について、自由な発想などの資質において「期待以下」との評価が多いことも報告している。 (「毎日」9/17付け。 文部科学省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/09/020914.htm)
女性科学者の活動の場増やせ…14学会が連絡組織
応用物理学会など国内14学会(10数学会がオブザーバー参加。約10万人の女性科学者)が10月7日、「男女共同参画学協会連絡会」を発足させる。各学会の進んだ活動につき情報交換したり、共同アピールなどの活動を通じ、大学で主要ポストに就く女性が増える条件作りを進める。国大協ワーキンググループ報告書(2000年)によると、国立大学教員で女性の割合は、文学・語学系13.7%、工学系1.3%、農学・水産系1.6%。 (「読売」10/5付け)
職務発明をめぐる係争が増加
青色LED特許をめぐり中村修二氏の日亜化学に対する20億円請求訴訟の進行が注目を浴びているが、さらに職務発明を使用者に譲渡した場合に従業者が受ける「特許の対価」をめぐって、日立金属に対して7600万円(8/27)、味の素に対して20億円(9/15)、敷島スターチに対して16億円(10/3)などの訴訟が始まっている。 (パテントサロンHP http://www.patentsalon.com/topics/employee/index.html)
日本労働研究機構が、従業員の発明に対する処遇でWEB企業調査
日本労働研究機構(厚生労働省所管の特殊法人)が、8月に「従業員の発明に対する処遇」をWEB調査した。6割の企業が発明報奨金を明文規定、約7割がその他の処遇にも反映、3割だが過去5年間に報奨金引上げ等制度を充実。報奨金制度に「問題がある」との回答は57%。 (日本労働研究機構HP http://www.jil.go.jp/statis/web/200209/hatsumei.PDF)
日本経団連が、学生採用で倫理憲章、青田買い自粛、大学院生も
日本経団連は10月15日、2003年度の新規学卒予定者の採用活動に関する「倫理憲章」を発表した。例年通り、企業に青田買いの自粛を求め、今回から「大学院修士課程修了者の採用選考においても学習環境の確保に十分留意する」と、大学院生の青田買いにも自粛を求めている。(「毎日」10/15付け。日本経団連HP http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2002/063.html)
日本経団連が、産業競争力の強化と経済の活性化にむけた規制改革要望
日本経団連が10月15日、「2002年度日本経団連規制改革要望ー産業競争力の強化と経済の活性化にむけて」をまとめた。産業競争力強化と民間主導による経済活性化、実りある構造改革特区制度の導入、官製市場改革による民業拡大、政治のリーダーシップ発揮などを求めている。 (日本経団連HP http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2002/062.html)
日本経団連が、企業行動憲章まとめる
日本経団連が10月15日、「企業行動憲章ー社会の信頼と共感を得るために」を改定した。経営トップによる原因究明、再発防止責任や自らを含む厳正な処分など10原則で、前文で法令遵守徹底を強調している。「企業不祥事防止への取り組み強化について」も発表した。 (日本経団連HP http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/cgcb/charter.html)
入学金返還で全国で一斉に提訴、97校相手取り計3億円請求
私大などの入学辞退者が入学金や授業料の返還を求めている「前納入学金返還請求訴訟」で、全国各地の入学辞退者235人が9月24日、大学・専門学校97校を相手取って総額約3億円の返還を求める訴訟を各地の裁判所に起こした。関西地区では今年6月に続く2次提訴になり、東京、名古屋などでは初の提訴となった。 (「毎日」9/24付け)
文部科学省が、新たな学生支援機関設立構想中間まとめに対し意見募集
文部科学省の「新たな学生支援機関の設立構想に関する検討会議」(座長=奥島孝康・早稲田大学長)は、奨学金貸付けへの債務保証制度導入などを盛り込んだ、「新たな学生支援機関の在り方について」(中間取りまとめ)を10月7日に文部科学省HPで公表し、10月17日まで意見募集を行った。 (「読売」9/18付け。 中間取りまとめは文部科学省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/021/toushin/021001.htm)
大学・大学院生、勉強は授業含め1日3時間
総務省の社会生活基本調査によると、大学生・大学院生の勉強時間は1日平均2時間59分で、小中学生を含む学生全体で最短だった。学校の授業を含めた1日平均の勉強時間は、中学生5時間26分、高校生5時間21分、10歳以上の小学生4時間41分、短大・高専生3時間5分。5年ごとの調査で、昨年10月、全国の10歳以上男女約20万人を対象に実施した。 (「読売」10/7付け。総務省統計局HP http://www.stat.go.jp/data/shakai/yoyaku13j.htm)
ドイツで「理工離れ」新対策
「理工科離れ」対策の一環として、研究機関の業務と高校の授業を統合する試みを始めた。アルフレッド極地海洋研究所が、地元高校生に週2回、生物学、化学などを教える一方、研究所の実験室や現地調査に参加させ実験の基礎等を習得してもらう。 (「科学新聞」9/20付け)
国防研究は硬直状態、米上院が憂慮の書簡
米国上院の軍事委員会が、国防総省の研究開発体制が硬直状態に陥っているとしてラムズフェルド国防長官に警告の書簡を送った。官僚主導の人事管理、研究者減、高齢化などで優秀な研究者の流出が進んでいると指摘している。 (「科学新聞」9/20付け)
スイスで基礎研究衰退に危機の警告
スイスの国立科学基金(SNSF)が、政府の応用科学偏重政策によって、基礎科学研究が近年疲弊衰退の途をたどり国際競争力も低下していると、報告書で警告した。研究者4000人へのアンケートに基づくもの。 (「科学新聞」9/13付け)
全米アカデミーがNSFを批判
全米科学アカデミー(NSA)は、全米科学基金(NSF)が大型研究プロジェクト予算要求の議会送付など所定の義務を怠っているため、計画の遅延や研究者の政治家依存が目に余ると、NSF評価会合で批判した。 (「科学新聞」9/13付け)
米の株価下落が研究費を直撃
米国ハイテク企業の株価低迷が大学の研究費を圧迫している。企業が自社株式を大学の研究機関に寄付し、大学側は株式を売却して研究費に充当するのが慣例だが、コロラド大は、毎年5000万$相当をソフトウエア企業から受領する予定だったが、90%の株価下落で目減りしている。 (「科学新聞」9/6付け)
米NIHで内部抗争表面化
全米保健庁(NIH)に新設の国立生医学画像・生物工学研究所(NIBIB)の人事や予算をめぐる内部抗争が表面化している。予算・研究項目を承認する審議会は9人中6人が外部人材、研究所予算の60%が他の研究所に移管されるなど。 (「科学新聞」9/6付け)
7.学術関連雑誌の特集等
「学術の動向」(日本学術会議)
02年9月号 特集/動物実験。学術からの発信/競争的資金の拡充に対する期待と不安
02年10月号 特集/「身体障害者との共生社会」の構築に向けて。学術の課題/応用倫理教育
「学術月報」(日本学術振興会、丸善発行)
02年9月号 特集/学術政策と学術研究支援機関(NSF、EPSRC、DFG等。有識者懇談会
など)。特別寄稿:ドイツ高等教育大綱法の改正
02年10月号 特集/素粒子研究-標準理論を越える-
「大学と学生」(文部科学省高等教育局学生課編、第一法規出版発行)
02年9月(455) 特集/大学入試。資料/平成15年度国公立大学入学者選抜の概要
02年10月(456) 特集/就職
「科学」(岩波書店発行)
02年10月号 特集/環境・健康とリスク-何が課題か
02年11月号 特集/学問の豊かさを伝えるには
「政策研ニュース」(文部科学省科学技術政策研究所。http://www.nistep.go.jp)
02年6月号(164) レポート紹介:米国における公的研究開発の評価手法
02年7月号(165) レポート紹介:科学技術指標体系の比較と史的展開
02年8月号(166) レポート紹介:日本のバイオ・ベンチャー企業-その意義と実態。国際級
研究人材の国別分布推定
02年9月号(167) レポート紹介:日本企業の対米研究開発投資活動の実証的研究
02年10月号(168) レポート紹介:研究開発における企業の境界と知的財産権制度
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(本号は、主に2002年9月〜2002年10月の情報を扱っています)