No.34 2002 5月21日発行

 

JSA学術情報ニュース

日本科学者会議学術体制部

 

 

 (TEL)03-3812-1472

 

(注:このニュースではホームページを「HP」と表記しています。)

1.2002年度科学技術関係予算

2002(平成14)年度科学技術関係経費は3兆5387億円(+2.0%)、重点8分野も集計

 2002(平成14)年度科学技術関係経予算案では、従来からの会計別内訳と省庁別内訳に加え、総合科学技術会議の重点8分野の分野別金額、予算計上主体別と使途別の内訳も集計されている。科学技術関係経費の総額は3兆5387億円(+2.0%)、内一般会計は1兆8513億円(+0.7%)、特別会計は1兆6874億円(+3.5%)だが、一般会計の中で、基礎分野に近い競争的資金などが含まれる科学技術振興費の伸びは+5.8%。また、競争的資金は3473億円(+6.4%)。

 重点8分野の内、増額は、ライフ、環境、ナノテク、エネルギーのみであるが、競争的資金の金額は8分野すべてで増加している。また、産学官連携3384億円(+29.1%)、地域科学技術振興688億円(+40.7%)の経費も大きく増加した。 (総合科学技術会議HP http://www8.cao.go.jp/cstp/project/compe/haihu02/siryo3-1.pdf、文部科学省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/02/020302.htm)

科学技術関係経費  35,387億円(01年度 34,685億円)[ +702億円、+2.0]

 内訳:

一般会計     18,513億円( 18,376億円)[ +137億円、+0.7]

    科学技術振興費   11,774億円( 11,124億円)[ +650億円、+5.8]

    その他の研究関係費 6,739億円( 7,252億円)[ -513億円、7.1%]

特別会計     16,874億円( 16,309億円)[ +565億円、3.5]

【主な内訳】 国立学校特別会計      10,624億円( 10,351億円)[ +273億円]

       電源開発促進対策特別会計  2,841億円( 2,670億円)[ +171億円]

 

2.総合科学技術会議の動きと科学技術政策

( 総合科学技術会議の動きは、総合科学技術会議HP http://www8.cao.go.jp/cstp/ で、専門調査会やプロジェクトの配布資料や議事内容を含めて基本的に公開されています。)

最近の総合科学技術会議本会議の主な議事

15回(2002.2.28 17:30-18:30)

○知的財産戦略専門調査会について ○平成15年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針の作成について ○産学官連携の推進について

16回(2002.3.28 16:45-17:35)

○科学技術を中心とした経済の活性化方策について ○国立大学の改革について ○競争的資金制度の改革について

17回(2002.4.23 16:00-16:55)

○科学技術を中心とした経済の活性化方策について=経済活性化のための重点的技術課題について、平成14年度の科学技術振興調整費について ○総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価について

 

総合科学技術会議が、2003(平成15)年度科学技術予算方針を論議

 2月28日の総合科学技術会議は、2003(平成15)年度科学技術予算の方針について論議した。概算要求に先立つ6月を目途に「平成15年度の科学技術関係に関する予算、人材等の資源配分の方針」を決定し、重点的に推進すべき事項を明らかにすることとした。

 

総合科学技術会議が、技術革新による経済活性化に研究プロジェクト立上げ方針

 総合科学技術会議は3月28日、2-3年で実用化につながるような50-100億円程度の中規模研究プロジェクト立上げを決めた。5年間で10-20件を選定する。2003年度予算で、次代の産業基盤を構築するプロジェクトベースの研究開発を同時並行的に立ち上げる。同時に大学改革や税制改革、知的財産権戦略の構築などを進める。 (「科学新聞」4/5付)

 

総合科学技術会議に、競争的資金改革プロジェクトを設置

 第2期科学技術基本計画期間中に倍増予定の競争的資金の効果を最大限に発揮するため、科学技術システム改革専門調査会に、競争的資金制度改革プロジェクトを設置し、4月18日に第1回会合を開いた。6月に中間まとめを行う。座長は、井村裕夫・総合科学技術会議員。 (競争的資金改革プロジェクトHP http://www8.cao.go.jp/cstp/project/compe/index.html)

 

総合科学技術会議が、知的財産戦略専門調査会を設置

 国の研究開発投資拡充に対応した成果の創出と確保を図り国際競争力強化に結び付けるための知的財産に関する総合的な戦略の調査検討を行うため、7番目の専門調査会となる知的財産戦略専門調査会を設置し、3月14日に第1回会合を開催した。会長は、井村裕夫・総合科学技術会議員。(知的財産戦略専門調査会HP http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/ip/imain.html)

 

3.経済財政諮問会議など内閣主導の動き

小泉内閣が、知的財産戦略会議を設置

 産業の国際競争力強化、経済活性化の観点から、国としての知的財産戦略を早急に樹立し、その推進を図るため、3月に「知的財産戦略会議」を設置した。7月初旬に「知的財産戦略大綱」を策定する。首相初め11閣僚と有識者11人で構成し、内閣総理大臣が開催、座長は阿部博之・東北大学総長。 (官邸HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki/)

 

経済財政諮問会議が「経済活性化戦略」の中間整理案

 経済財政諮問会議が5月13日、「経済活性化戦略」の中間整理案をまとめた。民間議員4人が連名で提出したもので、重要政策として、知的資産活用やグローバル化、企業・産業再編など9分野を明示し、民業拡大の「行政サービス・アウトソーシング推進計画」策定などを盛り込んだ。国立大学独立法人化など大学改革や、民間企業の研究開発への優遇措置の必要性も提示した。6月に税制、歳出削減とともに、基本方針をまとめる。 (各紙5/13付)

 

経済諮問会議、「産官学」の連携強化などの産業活性化策

 経済財政諮問会議は4月3日、「研究・技術開発の活性化について」」「グローバル化への対応」をとりまとめた。平沼経産相の提案で、実用化が見込める民間の商品開発プロジェクトに、政府が重点投資する方針を打ち出した(来年度から年間1000億円規模の開発資金を投入)。また、国立大学の法人化を前倒しし、2003年度を目標時期に掲げたが、臨時出席した遠山文科相は「時間的に無理」として前倒しを否定した。大学と民間の人事交流による産官学の連携強化なども提案した。  (「読売」4/4付など。)

 

経済財政諮問会議で、遠山文科相が大学と産業界の共鳴を発言

 3月15日の経済財政諮問会議に、遠山臨時議員が「経済の活性化と大学」を提出した。大学と産業界の取組の共鳴など大学が産業界と相互に啓発する新しいパートナーシップの確立、「知」と「人」による経済活性化、積極的な共同研究・委託研究など産業界への期待など。

 (http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0403/0403item4.pdf)

 

規制改革推進3カ年計画の改定

 政府は3月29日、規制改革推進3カ年計画改定を閣議決定した。高等教育における競争環境整備として、大学・学部の設置規制の準則主義化や継続的な第三者評価認証制度の導入、競争的研究資金の拡充と国立大学での資金の競争的な配分徹底、大学教員評価の導入等の日程などを決めている。また、「円滑な労働移動」や「就労形態の多様化」を可能とする規制改革を求めている。 (官邸HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kisei/kakugi/020329kisei_f.html)

 

 

4.産学官連携強化をめぐる動き

6月に第1回産学官連携推進会議

 内閣府、経団連、日本学術会議の主催、文科省、経産省、総務省、厚労省、農水省、国交省、環境省の共催で、6月15-16日に京都で、第1回産学官連携推進会議を開催する。3000人規模の参加、ブース開設により、産学官連携の飛躍的推進に向けた具体的な課題の解決に資するため、第一線のリーダーや実務者等を中心に研究協議、技術移転、情報交換、対話・交流等を行う。 (産学官連携推進会議HP http://sangakukan.jst.go.jp)

 

産学共同研究で連携強化へ、企業の権利明確化

 文部科学省は新年度から、国立大学と企業との共同研究契約条件を改め、特許権などを企業に有利な内容にすることを決めた。企業の特許などの優先利用について、現在は、大学が「許諾することができる」のを、「許諾する」を基本とする。特許権だけでなく技術ノウハウを含め、研究秘密の「守秘義務」を新たに規定する。企業負担の研究費の分割払いを認め、余った場合には企業の求めに応じて返還することも明記する。 (「朝日」3/17付)

 

国立大教官の知的財産権、大学帰属に、文科省方針

文部科学省は国立大学教官の研究成果である特許など知的財産権を大学に帰属させる方針を固めた。教官個人か国のどちらかに帰属させる現行制度を2004年度までに全面改定する。大学が企業に知的財産権を譲渡して得た対価の一部は教官に支払う規定を整える。TLOが知的財産権を産業界に移転する機能の強化も求めた。2004年度に予定される国立大の独立法人化までに契約や規則のひな型を作る方針を示した。 (「日経」4/29付)

 

文部科学省が経済再生へ「産学官」連携強化

 文部科学省は3月5日、大学を核とする産学官連携推進事業「イノベーション創出2002」を行うと発表した。理工学部のある全国の国公私立大学や高等専門学校など約250機関でつくる「大学発イノベーション(技術革新)創出推進会議」を3月中旬に発足させるほか、企業が大学の知的資産を活用しやすいよう、大学やTLOなどをネットワーク化し、知的資産のデータベース化や連携窓口の一覧リストを策定する。 (「読売」3/5付)

 

産学官連携で大学の意識と実態調査

 日経産業消費研究所地域グループが、国公私大の自然科学系・情報系学部、地域共同研究センター、大学付属研究機関、工業団地入居企業と共同研究している公設研究機関など338回答の結果をまとめた。産学官連携の実施は98.5%で研究現場では「当たり前の世界」になっているが、7割が地元外企業との連携であり、企業と研究員をコーディネートする人材不足の指摘が49.1%だった。 (「日経地域情報」388号(4/1付け)に(上)を掲載 http://www.nikkei.co.jp/rim/tiiki/tiikijyouhou/388sangakukan.htm)

 

東大、全学あげて産学連携を推進

 東京大学は4月22日、産学連携を推進する学長直轄組織を9月に新設する。企業への技術移転や大学発ベンチャー設立を文系、理系を問わず全学をあげて支援推進する。独立法人化をにらみ、特許の帰属・管理問題も検討する。準備機関の「産学連携推進企画室」室長は、4月新設の総長特任補佐(産学連携担当)の石川正俊教授。 (「日経」4/22日付、「東大新聞」5/7付)

 

MITのTLO所長が講演、「大学は教育・研究の場」

 マサチューセッツ工科大学のリタ・ネルソンTLO所長が来日し、科学技術国際交流議員連盟(事務総長=尾身孝次・科学技術政策担当大臣)の講演会で「アメリカにおける産学連携について」講演した。ネルソン所長は、「大学はアカデミックを維持するもので企業の召使いではない。技術移転やベンチャー創出は大学の外で行われるべき」、「企業家・投資家・研究者は先を見ることが必要で、教授も開発にしっかり関与すべき」と説明した。(「科学新聞」3/22付)

 

5.独立行政法人化など文部科学省と大学、教育「改革」をめぐる動き

(注:情勢の変化が早いため、独立行政法人化問題の情勢や関係各界の具体的な動きは、全大教近畿HP=http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/、独行法反対首都圏ネットワークHP=http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html、独立行政法人化問題週報HP=http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.htmlなどをご参照ください。)

 

文部科学省調杳検討会議が「新しい国立大学法人像について」最終報告

 文部科学省の国立大学等の独立行政法人化に関する調杳検討会議が3月26日、「新しい国立大学法人像について」最終報告した。学外者を含む学長選考委員会、任期制や公募制の積極的導入等の「中期計画」での明確化などの外、身分の非公務員型や2004年度からの一括移行を提言している。文部科学省は、次の通常国会以降に関連法案を提出する。 (各紙3/26付。調杳検討会議最終報告は、独行法反対首都圏ネットHP http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/020326saisyuuhiuko文科省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/03/020327.htm)

最終報告に対する各紙社説等

「変身の好機と考えて 国立大学法人」(「朝日」3/27付社説)

「国立大学 理想の法人目指す努力を」(「毎日」3/28付社説)

「国立大法人化 教育・研究の活性化につなげよ」(「読売」3/28付社説)

「国立大法人化 自主性高める契機に」(「東京」3/28付社説)

「教育研究の土台を崩すもの」(「赤旗」3/28付主張)

「大学経営の責任強まる「国立大法人」」(「日経」3/29付社説)

「大競争時代の自覚をもて」(「産経」3/29付主張)

 

文科省が国立大法人化で学長会議、文科相「一大転換、改革を」

 文部科学省は4月3日、国立大学長・大学共同利用機関長等を集めた会議を開き、第三者評価による予算配分見直しなどを盛り込んだ「国立大学法人」化の最終報告書について説明した。学長会議に先立ち、国立大学協会と文科省の幹部は二人三脚で、法人化問題で各地のブロック学長会議を回る"説得行脚"を繰り広げた。「事前の"ガス抜き"が必要だった」と打ち明ける大学幹部もいた。 (「日経」4/4日付。文科相あいさつ全文は、全大協HP http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/Akako20020402.htm#04/12_6)

 

国大協、異例の挙手採決で法人化を了承、

 国立大学協会は4月19日の臨時総会で、法人化の基本制度をまとめた文部科学省の最終報告を賛成多数で了承した。長尾真・国大協会長(京大学長)は「全体として見るとき、21世紀の国際的な競争環境下における国立大学の進むべき方向としておおむね同意できる。」との談話を発表した。賛成を表明する学長もいたが、意見を表明するのは反対する学長が多かった。このため、全会一致が原則の国大協としては異例の挙手裁決を実施した。臨時総会は、「国立大学協会の在り方検討特別委員会」と「国立大学法人化特別委員会」の2つの特別委員会を設置した。 (「日経」4/20付けなど。会長談話は、http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/data_soukai/pdf_14_4_19/2.pdf)

 

非公務員型独立行政法人化を強く主張している団体の名簿等

 経済財政諮問会議、総合規制改革会議、産業構造改革・雇用対策本部、総合科学技術会議科学技術システム改革専門調査会産学官連携プロジェクト、科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会、第1回産学官連携サミット共同宣言、経済団体連合会、読売新聞社、日本経済新聞社を挙げて、各々の大学人を含むメンバーを紹介している。 (独立行政法人反対首都圏ネットワークHP http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3360.htm)

 

中央教育審議会が、法科大学院の設置基準等について中間報告

 中央教育審議会(会長・鳥居泰彦慶応義塾学事顧問)が4月18日、法科大学院の設置基準等、大学院における高度専門職業人養成、大学の質の保証に係る新たなシステムの構築、青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等の4項目について中間報告した。6月に最終答申の予定。 (文部科学省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/)

 

社会貢献大半が「満足」、国立大の自己採点を文科省の評価機構が初公表

 国立大の教育活動を点検評価する文部科学省の大学評価・学位授与機構(機構長、木村孟・元東京工業大学長)は3月22日、国立98大学の「社会貢献度」と、理学、医学部系の2分野計23大学の「教育」「学問研究」に対する評価結果を公表した。評価は大学側の自己評価をもとに、同機構が聞取り調査を加味して行ったもの。2学部・研究科が「大幅改善が必要」とされた。 (「毎日」3/22付など。大学評価・学位授与機構HP http://www.niad.ac.jp/)

国大協が大学評価・学位授与機構へ、評価結果への要望申し入れ

 国立大学協会第8常置委員会は3月1日、大学評価・学位授与機構に対し、評価の結果と今後の取扱いについて、深刻な懸念をもたざるを得ない点が少なくないとして,要望申し入れを行った。大学評価・学位授与機構は4月3日、機構長名で今後の改善等を約す回答を行っている。 

(国大協HP http://www.kokudaikyo.gr.jp/iken/txt/h14_3_1.html、大学評価・学位授与機構HP http://www.niad.ac.jp/hyouka/kekkasum/20020403_NIAD.pdf)

 

東大理学部が、社会貢献重視の憲章

 東京大学理学部は4月19日、従来の研究や教育の重要性に加えて、「社会貢献」を重視する「憲章」を制定した。「研究していれば評価された時代」に決別し、「一般市民への発信」も評価の対象に組み込むなど、路線の180度転換を表明したもの。 (「読売」4/19付け)

 

6.その他科学技術をめぐる動き

経産省が製造業の経営体質強化へ7月に「産業総合戦略」策定

 産業の空洞化現象に歯止めをかけ、日本のモノづくりを再構築しようと、経済産業省は、業種ごとの経営課題を分析した「産業総合戦略」を7月にも策定する。産業構造審議会の新成長政策部会(部会長=吉川洋・東大大学院教授)が中心となって策定するもので、経済財政諮問会議に提案し、2003年度予算概算要求に反映させる。 (「日本工業」3/27付)

 

生命科学など4分野、民間の研究開発の税優遇へ財務省方針

 財務省は、生命科学、IT、環境、ナノテクノロジー・材料の重点4分野に限り、研究開発費の一部を税額控除する21世紀型「殖産興業税制」を創設する方針を固めた。2003年度導入を目指し、6月サミットで提示するデフレ対策の柱になる見通し。産業界は対象分野を限定せずに優遇税制拡充を求めており、調整難航の可能性もある。 (「読売」5/5日付)

 

独立行政法人の役員「焼け太り」3倍増

 昨年4月以降発足した58独立行政法人の役員数が発足前の役員相当職の3倍となり、186人増えた(読売新聞調べ)。監督官庁の官僚が役員に天下りするケースも多い。役員の月額本俸は、本省審議官級の80万円台が最も多いが、最高額は産業技術総合研究所理事長の165万6000円。同副理事長の143万7000円とともに、各省次官の本俸約134万円を上回る。 (「読売」5/5付)

 

特殊法人改革で独立した評価機関設置を、研究会が提言

 「特殊法人等改革研究プロジェクト」(東京財団。リーダー=田中一昭・拓殖大学教授)は3月18日、特殊法人等整理合理化計画に基づき発足する独立行政法人の業績チェックのため、各省庁から独立した評価機関を設置すべきとの提言を発表した。住宅金融公庫や日本鉄道建設公団などの大型組織は、現体制での所管省庁による評価が難しい、評価が甘くなると指摘し、公認会計士、弁護士、経営コンサルタント等の「評価・支援委員会」(仮称)を内閣府に設置し、所管大臣に勧告できる権限を持たせるべきだとした。 (「毎日」3/18付)

 

学術会議総会が、「科学者コミュニティ」の役割で討議

 日本学術会議第137回(第18期第5回)総会は、同会議の在り方に関する中間まとめ(案)を自由討議の議題で取り上げた。学協会を基盤に科学者コミュニティを形成すべき、学術上の検討などアカデミー機能に加え社会の諸問題解決の助言をするカウンシル機能、現在の研究連絡委員会委員を廃止し2500人程度の会員を選出する、など。 (「科学新聞」4/26付)

 

ICSU役員が来日、学術会議と意見交換

 日本学術会議ICSU分科会(委員長=大橋秀雄・工学院大学長)は2月20日、来日したルブチェンコICSU(国際学術連合)次期会長らと意見交換した。会合では、有本建夫・総合科学技術会議審議官が科学技術政策や第2期科学技術基本計画などを説明した。ICSU側からは、科学技術政策と他の政策プロセスとの相関、政府の(学術会議)勧告の評価基準、ヨーロッパとの協力強化の意思などについて質問があった。 (「科学新聞」3/1付)

 

「学芸員を守れ」学術会議が報告書

 日本学術会議は、公立博物館や文書館で働く学芸員、司書など専門職員が行政改革で減っているとして、資格制度の整備充実や人数の確保を求める報告書をまとめた。報告書では「日本の教育文化の蓄積を瓦解させる恐れがある」と指摘し、専門職の配置を義務づける法整備や、大学に養成課程を設ける施策が必要と述べている。 (「毎日」3/12付)

 

特許庁が、国家公務員の職務発明補償金の支払限度額を撤廃

 特許庁は2月1日、発明のインセンティブを高める観点から、600万円を限度額とした「国家公務員の職務発明等に対する補償金支払要領」(特許庁長官通達)を廃止し、各省庁等が、独自の支払水準を設定することとした。モデル的規程として、(独)産業技術総合研究所の発明補償を提示している。 (特許庁HP http://www.jpo.go.jp/info/1402-003.htm)

 

社員の発明へ報酬拡大を、経済産業省の知財研究会が提言

 経済産業省の「産業競争力と知的財産を考える研究会」が4月は17日、知的財産を活用して産業競争力を強化するための総合戦略をまとめた。企業の社員による発明への報酬拡大や、企業秘密の保護を強化する法整備などを提言している。研究開発の体制や知的財産の保護を強化し、2005年度までに「知的財産立国」をねらう。 (「日経」4/18付)

 

日本知的財産協会が、特許法の職務発明規定見直しを提言

 日本知的財産協会(大企業の知的財産部門)が01年12月7日、職務発明について雇用企業に特許を受ける権利を譲渡したときの「相当の対価」を支払う義務を削除する、特許法の改定を提言した。 (日本知的財産協会HP http://www.jipa.or.jp/)

 

この1年、経団連が、競争力強化の科学技術戦略で相次ぐ提言

・「科学技術戦略の変革に向けて」(01/6/11)は、産学官の連携が国の競争力を左右するとして産学官連携の推進を提唱し、2002年度予算編成に対する総合科学技術会議のイニシアティブを求めた。 (http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2001/028.html)

・「国際競争力強化に向けたわが国の産学官連携の推進」(01/10/16)は、日米間の産業競争力の格差の大きな要因は産学官連携だとして、産学官連携の好循環を作りだすためのシステム改革、特に大学におけるインセンティブ強化を求めた。 (http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2001/048/index.html)

・「知的財産を核にした産業競争力の強化に関する考え方について」(02/1/22)は、企業の活力を引き出す知的財産政策の推進(産業戦略に沿うタイムリーな知的財産権の取得と活用、グローバルな事業展開への環境整備、大学などとのアライアンスなど)を求めた。 (http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2002/003.html)

・「誰もが起業家精神を発揮できる社会へ-新産業・新事業創出に関する提言」(02/4/16)は、起業家精神の涵養とその発揮を妨げている要因除去を提唱する。 (http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2002/018/index.html)

・「新たな成長基盤の構築に向けた提言-需要・供給両面から総合的な政策の実行を」(02/4/16)は、大学の研究機能強化、産学官連携強化、民間研究開発への税制・財政上の支援などを提唱。 (http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2002/016.html)

 

日経連が、産学連携で主張

【主張】「産学連携で進める次代の人づくり」=採用開始時期見直し、職業意識の形成が急務、インターンシップ拡大など。(「日経連タイムス」4/11付 http://www.keikyoweb.gr.jp/nikkeiren/headline/2002/2002_04/02/01.htm)

【主張】産学官連携で地域経済の活性化を=産官学連携による地域の特色と産業のリンケージを図る地方再生のシナリオが、わが国を再生する上での重要な鍵。(「日経連タイムス」5/2付 http://www.keikyoweb.gr.jp/nikkeiren/headline/2002/2002_05/01/01.htm)

 

経済産業省が産業技術データベース開設

 経済産業省は4月8日、産業技術関連のデータベースのインターネットサイト「デジタルニューディール」を、(社)日本工学アカデミーに委託して開設した。「将来、事業に結びつく可能性が高いものを中心に集めた」論文や特許に加え、各分野の専門家をキーワードで検索できる。技術情報を開放することで研究者、企業などの連携を進め、技術を核にした起業を促進するのが狙い。既に論文など10万件が登録され、技術者ら2000人が会員となっている。 (デジタルニューディールHP http://dnd.rieti.go.jp)

 

論文引用回数の研究所ランキング、東大が物理学世界一

 研究論文の引用回数から見た世界の大学・研究所ランキングで、東京大学が物理学分野でトップになった。学術情報サービス会社ISI(米国)が3月25日、最近11年間に発表された論文について、世界中の専門誌約8500誌の引用回数を分野別に調べた。 昨年は、東大は物理学で2位だったが、スーパーカミオカンデで素粒子ニュートリノに質量があることを突き止めた98年の研究などが世界で注目された。東北大学は昨年に続き、材料科学の分野でトップを維持し、化学分野で京大が2位、東大が3位、生物学・生化学分野で東大が4位など、トップ5入りしている。 (「読売」3/25付、「科学新聞」4/5付)

 

国立大入試、04年入試から79大が「5教科7科目」に

 04年春のセンター試験で、国立の79大学が大半の学部で「5教科7科目」を義務づける予定だと、国立大学協会が3月15日、調査結果を発表した。ほかに10大学が05年度以降に実施する予定で、多くの国立大が、国大協の「7科目化」の提言を受け入れた形だ。「実施しない」のは東京外語大、東京芸術大、大阪外語大、鹿屋体育大の4校。 (「朝日」3/15付)

 

私大8校が事務経費節減目指しソフト開発

 早稲田大や明治大など私立大8校が出資する株式会社が3月11日発足する。経理や給与計算などを処理するコンピューターソフトの開発販売、保守管理、人材教育や派遣を行う。日本私立大学連盟(会長・奥島孝康早大総長)が中心となり設立準備を進めていた。売上目標は03年9月期で1億4000万円、04年9月期で約4億円。連盟の担当者は「独立法人となる国立大学でも使ってもらえるようなソフト開発を目指す」と言っている。 (「朝日」3/1付)

 

科学技術政策研究所が、日本の技術輸出を調査報告

 文部科学省科学技術政策研究所が4月、「日本の技術輸出の実態-平成11年度-」を公表した。1999年度締結の新規の技術輸出契約の件数・契約形態・対価の受取方法等を分析した。新規技術輸出企業は、96年度をピークに減少傾向、「医薬品」は資本関係のない企業へ多く輸出を行っている、など。 (科学技術政策研究所HP http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/mat083j/idx083j.html)

 

文科省の学生生活調査で、生活費が初の200万円突破、IT費もかさむ

 文部科学省は3月30日、00年度学生生活調査(68年度から隔年実施)結果を公表した。学費と食費やレジャー費を合わせた「学生生活費」(学部昼間部)の平均額が初めて年額200万円を突破し、大学院の学生の生活費も過去最高額となった。学費値上げや、携帯電話やパソコン通信の費用がかさんだことなどが理由。 (「毎日」3/30日付)

 

大学等新卒者の就職状況調査結果

 厚生労働省と文部科学省が、大学等新卒者の就職(内定)状況等を共同調査(108校5860人)し、4月現在の状況等をまとめた。大学の就職率は92.1%(前年同期比+0.2%)、男子は92.5%(同+0.2%)、女子91.5%(同-0.3%)。短大(女子のみ)は90.2%(+3.4%)、高専(男子のみ)は98.3%(-1.7%)、専修学校は83.3%(-0.8%)。 (厚労省HP http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/05/h0510-1.html、文科省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/05/020508.htm)

 

7.学術関連雑誌の特集等

「学術の動向」(日本学術会議)

02年2月号 特集/創造性と日本の社会

02年3月号 特集/科学技術の新世紀。第136回総会声明「データベースに関して提案されている独自の権利についての見解」

02年4月号 特集/学術の再点検

02年5月号 特集/医療の最先端

 

「学術月報」(日本学術振興会、丸善発行)

022月号 特集:計算科学。海外ニュース/スミソニアン研究所予算のNSFへの移管

02年3月号 特集:我が国の科学とノーベル賞

02年4月号 特集:現代アジア研究

 

「大学と学生」(文部科学省高等教育局学生課編、第一法規出版発行)

02年2月(No.446) 特集/インターンシップ

02年3月(No.447) 特集/大学図書館

02年4月(No.449) 特集/平成14年度高等教育行政の展望

02年4月臨時増刊(No.450) 特集/平成12年度学生生活調査結果の概要

 

「科学」(岩波書店発行)

02年3月号 特集/ランドスケープ-科学とデザインをむすぶもの

02年4月号 特集/研究者としての人生とは? 討論/ポスドク問題は解決できるのか

02年5月号 特集/人間理解の科学的基礎-物質的および非物質的側面

 

「政策研ニュース」(文部科学省科学技術政策研究所。http://www.nistep.go.jp)

01年7月号(No.153) 第7回技術予測調査。海外事情/科学技術統計の整備をめぐる動向-フラスカティ・マニュアル改訂を中心に[前編]

02年2月号(No.160)  レポート紹介:科学技術に関する意識調査-2001年2〜3月調査-、国内外の科学技術に関する意識調査の状況について

02年3月号(No.161)  レポート紹介:中国の環境問題と日本の技術移転 〜石炭燃焼炉の転換と脱硫技術を中心として〜

02年4月号(No.162)  レポート紹介:日本の技術輸出の実態(平成11年度)

 

「大学と教育」(東海高等教育研究所。大学教育出版発行)

02年3月号 特集/地域・住民と大学の協働

 

 『JSA学術情報ニュース』は、JSAが入手し得た限りの情報を編集して掲載し

 

ます。原則として情報の要点のみを掲載し、編集者の論評等は加えません。

 

 なお、それぞれの記事には出典を明示しますので、詳細な情報を希望される方は、

 

日付、出典などをお示しの上、全国事務局にお問い合わせください。

 

(本号は、主に2002年3月〜2002年5月の情報を扱っています)