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No.32 2002年 1月7日発行 |
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JSA学術情報ニュース |
日本科学者会議学術体制部 |
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(TEL)03-3812-1472 |
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(注:このニュースではホームページを「HP」と表記しています。)
1. 全般
「学術研究の明日を語る会」開催、野依・白川両氏ら成果重視の風潮に警鐘
「我が国の学術研究の明日を語る会〜ノーベル賞連続受賞を祝して〜」が11月27日、国立科学博物館で開催された。小平桂一総合研究大学院大学学長ら文部科学省科学技術・学術審議会委員の有志が企画した会で約120人が出席した。野依氏は「研究の初期の段階ではお金よりも自由に研究できる環境が大切」であり、研究評価については「分野や進展の速度、段階それぞれによって異なるもので、学術研究の特性から評価基準が主観的になるのは当然。成果だけを重視する現在の風潮には反対」と主張。白川氏は「競争的資金はある程度目途の立った研究しかできない。自由な発想で使える研究費を増やすべき」と、研究のシーズを生み出すことの大切さを訴えた。また、研究評価に関して「ノーベル賞のきっかけになった論文は発表から10年間全く反響がなかった。基礎的独創的な研究はその時点では評価できない。」と述べた。(科学新聞12月7日付け)
12月24日、財務省が来年度予算案を決定
(科学技術関係)科学技術関係経費は全体で前年比約3.3%増。新産業の創出など社会的、経済的な効果が期待される「ライフサイエンス」、「情報通信」、「環境」、「ナノテクノロジー・材料」の重点4分野はいずれも増額。大学を核とする地域の産官学共同体制の確立、大学発ベンチャーの支援など産学官の連携を支援する事業が127億円、激化する国際競争に対して研究環境整備を図る「競争的資金」を01年度当初比3.8%増の3389億円に。
(教育)文教予算は前年比124億円減。入学金と交互に2年ごとに改定されている国立大の授業料が2003年度から2万4千円値上げされ52万8百円となる。値上げ幅は4.8%で前回の3.8%、4年前の2%などと比べると大きい。日本育英会への10%削減、無利子奨学生枠が1万6千人分減。(各紙)
2.総合科学技術会議関係
本会議や専門調査会等の議論は、総合科学技術会議HP(http://www8.cao.go.jp/cstp/)で概ね公表されている。
総合科学技術会議が第1回産学官連携サミットを開催
総合科学技術会議は11月19日に東京で開かれた第1回産学官連携サミットで、産学官連携プロジェクトの中間まとめを公表した。産学官連携を阻害している不適切な行政の関与を除去することや、国立大学の法人化にあたっては非公務員型とすること、大企業就職に係る教授推薦枠の全廃、研究職・教育職の退職金制度を改め年俸制を導入することなど、様々な提言がなされている。(科学新聞11月23日付けおよび30日付け)
総合科学技術会議、国の研究開発評価の大綱的指針を答申
総合科学技術会議は11月27日、小泉首相に「国の研究開発評価に関する大綱的指針について」答申した。これを受けて各省では政策目標などに応じた評価指針などを決める。4年ぶりの改訂となる。新しい大綱的指針では、評価対象としてこれまでの研究開発課題、研究開発期間に加え、研究開発施策と研究者等の業績を加えるとともに、評価における公正さと透明性の確保、評価結果の予算・人材等の資源配分への適切な反映。評価に必要な資源の確保と評価体制の整備を図ることを、重要な改善点として盛り込んでいる。(科学新聞12月7日付け)
3.行財政改革関係
独立行政法人4月発足後57組織で役員100人増〜次官越す報酬も
国の一部組織を分離し今年4月にスタートした57の独立行政法人の役員数が、発足前の幹部相当職に比べ急増していることが15日わかった。少なくとも100を越えるポストが増え、多くは監督官庁の天下りが占めている。(毎日11月15日夕)
特殊法人改革を閣議決定 住宅金融公庫、育英会などを統廃合
政府は12月19日、特殊法人の「整理合理化計画」で奨学金事業を担ってきた日本育英会を「廃止したうえで国の学生支援業務と統合し、新たに学生支援業務を総合的に実施する独立行政法人を設置する。」とした。いったん廃止することが前提となっている。(各紙12月19日夕刊)
「公務員制度改革大綱」を閣議決定
政府は12月25日午前の行政改革推進本部と閣議で「公務員制度改革大綱」を決定した。給与に能力主義、幹部には年俸制を導入する一方で、天下りは「弾力的な人事を実現する」ために容認している。03年度中の法改正と06年4月からの新制度移行をめざす。(各紙12月25日付け夕刊)
4.大学、教育と文部科学省関係
「新しい『国立大学法人』像について(中間報告)」に対する主な意見等
10月 1日 国立大学協会(会長談話)
10月15日 日本科学者会議(見解)
10月17日 全国農学系学部長会議
10月19日 国立大学理学部長会議
10月28日 全国大学院生協議会
10月28日 国立大学協会
10月29日 文部科学省所轄ならびに国立大学付置研究所長会議
10月29日 全国大学高専教職員組合中央執行委員会
10月29日 日本科学者会議大学問題委員会(意見)
都立4大学を統合〜都「大学改革大綱」策定
東京都は11月16日、都立の4大学を2005年度に統合し、これまでにない新大学を創設するための「大学改革大綱」を策定した。新大学は独立行政法人にして運営の効率化を図るとともに、生命科学など最新分野を研究する先端科学技術研究科やベンチャー企業を創出する産学公連携センターを設置。学長とは別に知事が法人の長を選任、大学運営と教育研究を切り離す。(読売11月17日)
都立大学・短期大学教職員組合は16日、「経営効率優先の立場から学問が管理され、学問の自由や大学の自治が侵される」などとして反対する声明を発表した。(朝日11月17日)
国立教員養成系大学・学部を大幅削減〜文部科学省の懇談会が報告書提出
文部科学省の「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」が11月22日にまとめた最終報告書は、各都道府県に教員養成系大学・学部を設けてきたこれまでの原則を覆し、現在の半数以下に再編・統合するという内容になった。教員養成系大学・学部がなくなる県では、情報技術を利用した遠隔教育を行う「教職センター」を設置するなどして教員の再教育などを実施するとしている。(各紙11月23日付け)
公立大も法人化に〜公大協が自治体に要請へ
公立大学協会は11月22日、設置者の自治体に対し公立大の法人化を求めると発表した。公大協が法人化の方向を明確にしたのは初めて。国・私立大との競争での生き残りを目指すのが狙いとみられる。公大協によると、東京都立大や大阪府立大が法人化の方針を固めるなど、法人化を希望する公立大が大半という。(日経11月23日)
文部科学大臣が教育基本法の「見直し」を諮問
遠山文部科学大臣は11月26日、「教育振興基本計画の策定について」と「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について」を中央教育審議会に諮問した。理由として「これからの教育の目標を明確に示し、それに向かって必要とされる施策を計画的に進めることができるよう教育振興基本計画を策定するとともに、すべての教育法令の根本法である教育基本法の新しい時代にふさわしい在り方について、総合的に検討する必要がある。」としている。(文部科学省 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/)
文部科学省が「国立大学の再編・統合についての基本的考え方(案)」をまとめる
文部科学省は「国立大学の再編・統合についての基本的考え方(案)」をまとめた。今後各国立大学に通知し、再編・統合を促すとともに、今年度中には全体的な再編・統合計画をまとめる予定。内容は、1.再編・統合を推進する理由 2.再編・統合を検討する際の視点の例 3.再編・統合の検討の方向 4.再編・統合の今後の進め方 の4項からなっている。(科学新聞11月23日付け)
国立大学協会が「新しい『国立大学法人』像(中間報告)に対する提言」を文部科学省に
提出
国立大学協会理事会は12月10日、標記提言を文部科学省高等教育局長あて提出し、あわせて各国立大学宛送付した。検討項目は
(1) 役員および管理運営、
(2) 国のグランドデザインと大学の長期目標、
(3) 国立大学評価委員会(仮称)の役割と構成、
(4) 学長選考、教職員の身分等、
(5) 法人の財務と会計基準、
となっている。
私大破綻処理に手引き〜日本私立大学連盟が作成
日本私立大学連盟は12月 8日までに、大学同士の合併や「民事再生」「破産」といった破綻処理の手続きなどを解説した危機管理マニュアルを作成した。大学が破綻した際、学生の移籍先を円滑に確保する仕組みづくりも提言。「学校法人の倒産、廃校などの危機は目前に迫っている」と指摘し、各大学に経営管理を強化するよう警鐘を鳴らしている。(日経12月9日)
私立大学の受託研究収入が来年度から非課税に
政府与党は12月14日、平成14年度税制改正大綱を決定し、私立大学等の受託研究収入に係る非課税措置が盛り込まれた。従来、私大の研究費の収支差額は収益となり、そのうち22%を法人税として徴収されていた。それが全額免除となり大学として教育や研究に自由に使えることになった。特に医学部での治験はいろいろな面でやりやすくなる。(科学新聞2002年1月1日付け)
全大教が国立の教員養成系大学・学部の統合・再編に反対する声明を発表
全大教(全国大学高専教職員組合)中央執行委員会は12月5日、国立の教員養成系大学・学部の大幅削減を打ち出した文部科学省の「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇
談会報告書」(11月22日)に対して、これまでの文部省の政策の破綻への反省も無く、いっそう閉鎖的な教員養成をしようとしていること、国立大学の再編・統合に強権的に拍車をかけようとしていること、初等・中等教育現場の問題の解決に資するものではないこと、などをあげ反対している。(http://www.zendaikyo.or.jp)
日本科学者会議が国立教員養成系大学・学部の統合・再編に反対する見解を発表
国立の教員養成系大学・学部の大幅削減を打ち出した文部科学省の「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会報告書」(11月22日)に対して、日本科学者会議大学問題委員会は12月27日、各都道府県にひとつ以上の国立教員養成系大学・学部を設置する原則を崩すことは、地域に根ざす教員養成を破壊するものだとして、これに反対する見解を発表した。
ロースクール(法科大学院)設置基準の骨子案が判明〜専任教員最低12人
04年度からの開校を目指して中央教育審議会が検討している法科大学院(ロースクール)設置基準の骨子案について、下記のようであることが判明した。注目されていた専任教員数は最低でも12人が必要だとし、学生の数を専任教員一人あたり15人以下にするよう求めている。12月11日の法科大学院部会で公表される。
o 標準修業年限は3年、o「高度の教育上の指導能力がある」と認められる専任教員数は最低12人必要、専任教員一人当たりの学生数は15人以下、 o 専任教員の約2割以上を実務家教員とする、o 小人数教育を基本として、双方向的で密度の濃いものとする。(朝日12月11日)
日弁連が法科大学院向けの新奨学金制度を提唱
日弁連の司法改革調査室がまとめたもの。法科大学院は授業料が高くなり、経済的に恵まれた家庭の子弟しか通えないのではないかとの懸念が出ている。(朝日12月12日夕)
5.学術関連雑誌の特集等
「学術の動向」(日本学術会議)
01年10月号 特集/食から見た21世紀の課題〜日本の食はこれでいいのか〜
01年11月号 特集/日本学術会議の改革に向けて、特集/日本社会の変容と教育の将来
01年12月号 特集/日本学術会議第136回総会「データベースの新たな保護権利制度導入反対への初の声明」、特集/常置委員会の目指すもの
「学術月報」(日本学術振興会、丸善発行)
01年 9月号 特集/日本-EUワークショップ
01年10月号 特集/物性科学の最新動向
01年11月号 特集/地球環境学の現状と展望
01年12月号 特集/古生物の科学
「大学と学生」(文部科学省高等教育局学生課編、第一法規出版発行)
01年10月号(No.442) 特集/育英奨学事業
01年11月号(No.443) 特集/大学と生涯学習
「理科教室」(科学教育研究協議会編。新生出版発行)
01年11月号 特集/「総合的な学習の時間」をふたたび考える
01年12月号 特集/自然がわかる生活科
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(本号は、主に2001年10月〜2001年12月の情報を扱っています)