企画:公開講座「健康な食生活への条件」 −日本の食生活を科学する−
日時:2003年12月2日(火)18:30〜20:30
会場:徳島大学蔵本キャンパス長井記念ホール
去る12月2日(火)に徳島大学蔵本キャンパス長井記念ホールで開かれまし
た。最初の講演では岸恭一(徳島大学医学部教授、日本栄養・食糧学会理事)が
「食を軽視するなかれ」と題して、飽食の時代に入った現在の日本の過剰栄養や
食生活の乱れ、食品の安全性等の問題をとりあげました。生活習慣病と呼ばれる
慢性代謝性疾患の多くは食生活の改善によりある程度予防可能である点、薬とは
異なり栄養には即効性がないため正しい食生活を守るには日頃の努力が肝心であ
るという点についての講演でした。
次の講演では中嶋信(徳島大学総合科学部教授、日本農業経済学会理事)が
「フードシステムの落とし穴」と題して、成長優先経済のゆがみの問題を取り上
げました。農業・食料市場は巨大でビジネス・チャンスのうま味を確実にするた
めに、食品関連の多国籍企業が、生産から消費までを取り仕切るフード・システ
ムが構築されており、日本の食卓はこのシステムにしっかりと組み込まれ、不健
全で浪費的な構造に陥っている現状が紹介されました。その克服は日本人自身が
どのように生活を組み立てるかという点にかかっているという指摘がなされまし
た。
最後に意見交換では「健康な食生活をつくる」と題して、会場からの質問に講
師が答えるスタイルで行われました。食生活というもともと、様々な要因により
変化しうるスタイルを、それぞれがどうやって構築していったらよいかというこ
とを参加者自身がこれからも模索していかなければならないということが確認さ
れ、和やかな雰囲気で講演会は終了しました。
参加者からのアンケートでは講演会に満足した、興味深かったという肯定的な
声がほとんどでした。日本科学者会議ではその活動のひとつの方向性として、科
学の知識を正しく市民に伝え、それぞれが生きていくうえで実践してもらうとい
う点が挙げられます。そういった意味で今回のテーマは、市民生活にダイレクト
に直結したテーマを多角的に考えるという点で大変有意義な講演会だったと思い
ます。
(文責:斉藤隆仁)