JSA

 シンポジウム「平和をめざす取り組み−現状分析と運動−」
  講演「イラク戦争と日本国憲法(仮)」
小沢隆一さん(静岡大学教授・憲法学)

今年は、憲法と平和をめぐる情勢がめまぐるしく、そして大きく動いた年です。
 アメリカとイギリスは、世界の多くの国々、民衆の反対を尻目に、3月20日イラ
クに対する攻撃に踏み切りました。小泉首相は、これを即座に「支持」しました。昨
年来、国会で審議されてきた有事関連法案は、5月13日小泉首相と管民主党代表と
の「修正合意」を経て6月6日に成立しました。これによって日本は、「戦争のでき
る国」としての一歩を大きく踏み出したのです。さらに、その余勢をかって会期を延
長した国会で、7月26日イラク支援特措法が成立しました。そして同じ時期に、自
民党の憲法調査会は、縦断的自衛権の承認、自衛軍の保持などを内容とする改憲案を
了承しました。憲法調査会を中心に進められている改憲機運の盛り上げに拍車がかか
りそうです。
 イラクは現在、米英による軍事占領状態にありますが、これは法的にはなお「戦
争」が続いていることです。フセイン政権との停戦ないし休戦の合意も何らできてい
ません。そして、実際にも占領軍とイラク国民との戦闘が散発的に続いています。先
日は国連の事務所まで爆破されました。イラク支援特措法は、そのようなイラクにお
ける米英の占領活動への支援を自衛隊などにさせるための法律です。これは、国際法
上違法な武力攻撃への事実上の支援、占領活動という「交戦権」の行使への参画とい
う憲法違反、イラク国民を自衛隊員が殺す可能性などなど、多くの点で重大な問題を
含んでいます。
 このような危険で無謀な戦争になぜ米英は突き進んでいくのでしょうか。ブッシュ
政権になってからの軍事戦略の変容が背景にありそうです。小泉内閣は、仏独などが
反対している中で、なぜ決然と米英への「支持」と占領への「参画」を決めたので
しょうか。日米安保条約の特殊な性格、その展開の過程を踏まえる必要がありそうで
す。他方で、イラク攻撃反対の声の国際的広がりの意義を見ておくことも重要です。
 21世紀の平和と安全をいかにしてつくっていくのか。その際、日本国憲法はどの
ような意義を有するのか。みなさんとともに考えていきたいと思います。私の理解に
ついては、とりあえず、拙著『ほんとうに憲法「改正」していいのか?』(学習の友
社・2002年)を参考にして下さい。