イベント報告
岡山支部講演会「生態系を蘇らせよう」
講師:鷲谷いづみ東京大学農学生命科学大学院教授 |
と き:10月27日(日)13:30〜15:30 |
ところ:岡山大学大学院自然科学研究科棟2階大会議室 |
共催:日本科学者会議岡山支部・岡山の緑と水と空気を守る連絡会 |
Keyword 生態系 新生物多様性国家戦略 自然再生 順応的管理 アサザプロジェクト . |
内容
岡山支部では、岡山の緑と水と空気を守る連絡会との共催で、鷺谷いづみさん(東大農学生命科学、植物生態学・保全生態学)の講演会を開催した。老若男女153名の参加で、活発な質疑応答もあり、盛会であった。要旨は次の通り。
生物絶滅の危険性:過去40万年、大気の二酸化炭素濃度は、180ppm〜280ppmの間を変動していた。しかし、現在は380ppmに上昇し、更に増大している。生態系に与える影響が未知の危険な状況にある。現在検討されている京都議定書の目標は、増加スピードを遅くする程度に過ぎない。地球の環境容量は、1980年代に既に限界を超えてしまった。不健全な地球環境は、生物絶滅の危険性を招き、水辺の植物や哺乳類では1/4が、サルの仲間は半数が絶滅危惧種となっている。生物多様性の危機は、人類に与えられた豊かな自然の恵みを失うことに他ならない。
新・生物多様性国家戦略:1992年の地球サミットで生物多様性条約が作成され、183カ国が加盟しているが、米国は不参加。この条約に合わせて、演者が中心になり、環境省で新・生物多様性国家戦略を作り、日本の豊かな生物相再生を図っている。
自然再生:これは、開発のための免罪符では無い。自然が自ら蘇るように問題を取り除く。生物種を失うのは簡単、取り戻すのは大変。
順応的管理:自然再生のために行うこの手法は、科学と民主主義を重視する。科学的な仮説を立て、多様な主体(市民・研究者・学校・企業・行政等)の参加の元で、合意を形成・実行・評価し、また計画を練り直す。為す事によって共に学び、競争ではなく協働で進める。
アサザプロジェクト:霞ヶ浦自然再生のための市民提案型公共事業。皆が心を合わせるためのシンボルとして絶滅危惧種アサザを使っている。絶滅危惧種は国家戦略にあるので、行政にも取り上げられる。100%が直立護岸のため、豊かだった水辺の生物相が貧弱となる。水辺の移行帯を造成し、自然再生を図っている。異なる地域から植物を持ち込まないことが大切なので、霞ヶ浦の浚渫土中の種を利用した。絶滅した種が多数蘇った。
児島湖をどうするか:ほんの少し見ただけで、間違っているかも知れないが、現在は貧弱な生物相。児島湖は元内湾なので、試験的に樋門を開けて汽水湖にしたり、水辺の移行帯を作ったりし、多様な生物相が蘇れば、住民の関心が高まるだろう。
講演者の著書「生態系を蘇らせる」(鷲谷いづみ、NHKブックス、日本放送出版会)も、会場で販売され、好評であった。
報告者 石黒宗秀 所属 JSA岡山支部事務局