今年も「夏」がやってまいります。
「夏の学校」は、様々な地域、研究分野に属する若手研究者が一堂に会し、交流を深める恒例企画です。日常の専門研究を超えて、お互いの研究に対する熱意や悩みを語り合い、これからの科学の発展について積極的に議論していく場です。
また「夏の学校」では、現代社会における科学者の役割を考えるため、時代の課題に対応して、フィールドワークを中心とする研究企画を行います。今年度のフィールドワークは「原発問題をどう考えるのか?〜原発と地域社会〜」をテーマにします。
地球温暖化問題は近年政治的にもますます重要度を増しており、昨夏の政権交代後には鳩山政権によって温室効果ガスの90年比25%削減という目標が発表されるなど、自民党政権との違いが強調されてきました。しかし同時に、原子力重視のエネルギー政策は自民党時代から引き継いでいます。折しも今年5月6日に、1995年のナトリウム漏れ事故以来14年以上にわたって停止していた高速増殖炉「もんじゅ」が、運転を再開しました。しかし、原子力利用が進む一方での安全性は本当に確保できるのでしょうか。また、「もんじゅ」の事故は隠ぺい体質など原子力行政の問題点を浮き彫りにしてきました。こうした問題は、解決されたのでしょうか。
今年の「夏の学校」では、(1)「もんじゅ」をはじめとして原発施設が集まる敦賀湾に実際に足を運び、特に原発と地域社会との関係を中心にこうした問題点を再考します。さらには、環境問題、エネルギー問題に対して科学者はどのようにふるまうべきなのか、ということを議論していきたいと思います。(2)現在の大学院生・若手研究者を取り巻く状況が日々過酷になっているなかで、若手自身がその打開に取り組む可能性について考えます。(3)研究交流をおこない、研究のモチベーションを高め、視点を広げる場をつくります。
全国の皆さんの積極的な参加をお待ちしております。
※1.正確なものは2ndサーキュラー(8/10発行)にてご確認下さい。
※2.上記以外に、二日目の昼食代が別途必要となります。
※3.現地(敦賀駅)までの往復交通費は各自負担となります。なお、各都道府県のJSA支部から旅費の援助をしていただける場合がありますので、各支部にお問い合わせ下さい。また、ご不明な点や相談があれば、下記申し込み先までご連絡ください。
午前 | 午後 | 夜 | |
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6日(水) |
12:30 現地集合 14:00〜14:45【開校式】 14:45〜17:30【研究交流会】 18:30〜20:30【FW講演会】 |
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7日(木) | 8:45〜12:30 【FW:もんじゅ見学】 |
14:30〜17:30 【FW:現地の方と意見交換】 |
18:00〜20:30 【懇親会】 |
8日(金) | 10:00〜13:00 【ディスカッション企画】 |
※企画順序が変更となる可能性があります。お手数ですが、2ndサーキューラーなど、後日の企画案内もご確認下さい。
下記参加フォームに必要事項を記入・コピーをして頂き、8月20日(金)までに、
natsunogakkouアットマークjsa.gr.jp (「アットマーク」を@に変えてお使い下さい)
まで、メールにてお申し込み下さい。 企画の内容に関わるお問い合わせも上記にて承ります。
お申し込みを確認し次第、実行委員会より折り返しご連絡を差し上げます。
----------参加申し込み----------- 氏名: 所属大学・研究科: 専攻分野: メールアドレス:
なお、以下の項目は宿泊並びにフィールドワークで必要となります。併せて、ご連絡下さい。なお、これらの個人情報は、今回の夏の大会における宿泊・フィールドワーク以外では一切使用いたしません。
現住所: 電話番号: (部屋分けに要する)性別: (食物アレルギーをお持ちのみ)アレルゲンとなる食品・食材: 要望:
学術研究が高度な発達を遂げるにともなって、隣の研究者が何をやっているのか分からないという程に多様化し、細分化されています。一方、近年の新自由主義的な諸改革は、学術研究の領域に市場主義的競争を持ち込みました。その中での大学院生は互いに、研究集団としての仲間ではなく、論文競争の敵手としての個人に分断され、孤立せざるを得ない状況になりつつあります。
このような情勢の中でも、日本科学者会議をベースとして新たな連帯の試みがすすめられています。夏の学校に代表されるような各種研究会での学習・交流の機会形成です。特に近年始められ、これまで3回行われている「春の学校」では、各々が研究内容を報告し、質疑応答をもうけるという至極単純な企画が成功をおさめています。共にJSAで活動する仲間の前で報告し、質問や疑問に答える中で互いの研究のモチベーションを確かめ合う良い機会になっています。また、他の院生の研究内容に興味を持って参考にすることにより、対象は違えども、手法等の参考になる部分が少なからずあるのではないでしょうか。
今回の夏の学校で、研究交流の場を設け、お互いの交流のきっかけにできればと思います。
私たち日本科学者会議は長年、原子力およびエネルギー政策に関して、原子力の平和的利用でもなお危険な問題があるとの認識で研究・運動を続けている学会です。その次世代を担う若手研究者たちが、現代世界の直面する原子力問題を実地で学ぼうという企画です。敦賀周辺の原発関連施設群をフィールドワークし、地元住民の方々からお話を聞かせていただくなかで、科学者としてこの問題にどう向かうべきか考えたいと思っています。
温暖化問題とともに化石燃料からの転換が言われる中で、欧州を中心として日本までも原発への依存を強めようとしています。チェルノブイリや東海村などのように、原子力発電のシステムはひとたび事故が起これば広範囲の人命・環境に関わる大惨事となる可能性を持っています。原子力への依存を強めようとしている今の時期に、それ自体の安全性や推進する行政・企業について改めて考える必要があるのではないでしょうか? 特に、1995年のナトリウム漏れ事故以来14年以上にわたって停止していた高速増殖炉「もんじゅ」が今年になって再稼働しましたが、これまでの課題がすべて克服された上での再稼働ではないと思われます。さらに、高速増殖炉開発そのものの意味や、そこから見えてくる日本の原子力政策と地方自治のあり方についても現地から学びたいと思っています。
現在の大学院生・若手研究者を取り巻く状況は、日々過酷になりつつあります。それは、新自由主義的な構造改革路線により労働組合や科学者運動などが後退したことだけに、その原因を単純に収斂させられるものではありません。
70年代の大衆消費社会化以降、消費主義や個人主義という若者論でも語られる若年層での市民社会の変容は、文化的側面から指摘されてきました。90年代不況以降、個人主義的社会観を基盤にもち、いわゆる「失われた」何十年という世界観の中で育った世代が、今の若者層であり、これからの若手研究者であり、学術文化運動の担い手・受け手です。
若手研究者層における運動には昔のそれとどのような違いがあり、運動主体の求められる変革とは何か。また、これまでの若手研究者運動と共通する部分はどこか。柔軟に現実に対応する中で、若手学術運動拡大のよってたつ基盤は何か。…その分析は問題解決の手段・手法を工夫する上で避けては通れません。
若手学術運動の歴史を概括し、参加者それぞれが直面している運動的課題を交流する中で、今日の歴史的課題の解明を試みます。