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原発再稼働を阻止し,原発に頼らない地域をめざそう


『日本の科学者』2016年10月号に企画された特集「原発再稼働を阻止し,原発に頼らない地域をめざそう」をここにeマガジンNo.23として公開する。この特集の5論文を第1章~第5章に配置し,一つの冊子とした。
2011年の福島第一原発自己は,原発の危険性を明白に示した。それ囲碁,原発廃止は日本列島に生きる多くの人びとの願いとなった。『日本の科学者』誌上でも,2011年以降,原発問題について特集をくみ,2014年11月号よりは「原発を作らせなかった地域シリーズ」を連載し,日本科学者会議編『原発を阻止した地域の戦い』第一集(本の泉社,2015年11月)を刊行した。
しかし,2012年に登場した安倍政権と原子力規制委員会は,まさに「科学神話」ともいうべきイデオロギーに基づいて原発再稼働を促進し,2015年に川内原発,2016年に伊方原発が再稼働され,その他の原発も再稼働にむけて準備が進められている。本年2016年の熊本地震も,日本列島における原発の危険性を再認識させたが,川内原発の運転への懸念の声に,安倍政権や原子力規制委員会は耳をかさない姿勢を固持している。
そこで,『日本の科学者』では,原発の危険性を科学的に再認識し,原発再稼働をやめさせ,原発に頼らない地域づくりをめざして,自然科学・社会科学・運動などの垣根を超えた特集を企画した。
舘野淳論文では,日本の原発の主流をなしており,福島第一原発も属している軽水型原発の構造的欠陥性を指摘し,原子力規制委員会の新規制も軽水型原発の構造的欠陥には不問に付しているとしている。
岡田知弘論文では,「原発が再稼働しないと地域経済も自治体財政も破綻する」という言説を地域経済学の立場から批判し,福島県下や新潟県柏崎,佐賀県玄海町において,将来的には原発に依存しない地域づくりがはじまっていることが紹介されている。
伊東達也論文は,原発反対運動の立場から,事故発生後5年たった福島の現状を概観し,福島原発建設に反対した住民運動の歴史をふりかえる。そして,日本の原発の特異性と危険性を指摘し,福島に住む人びとの願いをこめつつ,原発反対の国民運動に求められている課題を展望している。
井戸謙一論文は,福島第一原発事故を契機に原発裁判に対する裁判所の姿勢は変化しているとし,それ以前は連戦連敗であったのに対して,大飯原発3・4号機運転差止請求訴訟,高浜原発3・4号機運転禁止仮処分事件など,運動側が勝訴することがあるようになったとし,司法によって原発ゼロへの道を拓く可能性を展望している。
立石雅昭論文は,福島第一原発事故後の現状を前提として,住民投票で原発建設を阻止した新潟県巻町の原発反対運動について,著者自身の経験をふまえて回想し,原発立地自治体にも住民の命を守るという基本的役割があると論じている。
原発反対は,自然・社会・人文という科学の領域をこえ,実践的になさねばならない。それをつらぬくことが,原発のみに限らない新しい世界を拓くことにつながると信じている。その一助になれば幸いである。
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