『軍学共同に反対する 日本科学者会議近畿地区シンポジウム記録』
12 月3 日大阪大学豊中キャンパスで標題のシンポジウムを、JSA近畿地区主催で開催した。池内 了さん( 名古屋大学名誉教授)が「軍事に奉仕する科学になってよいのか- 軍学共同に抗して」を講演。
参加者は、41 名。
2013 年12 月の閣議で国家安全保障戦略と防衛計画大綱が決まり、防衛( 軍事) 技術の開発のために、大学や研究機関との連携方針が出された。「安全保障技術研究推進制度」が作られ、大学・研究機関の個人に研究費を出して装備品の開発を行う。募集では、基礎研究であることが強調されているが、数年後に防衛装備庁の研究所に成果が引き取られ、装備化する。募集の研究テーマは防衛省から提示される。例えば「メタマテリアル」、これは戦闘機の翼や胴体に塗ってレーダーに補足されにくくする。「昆虫サイズの小型飛行機」は、小鳥からハエくらいのサイズの飛行体を作り、その中に生物・化学兵器を仕込んで飛ばすと考えられる。2015 年度は3 億円の予算、応募が109 件、採用された大学は東京工大、東京電気大、神奈川工科大、豊橋科学技術大の4 件。豊橋科学技術大学学長は学術会議会長の大西 隆氏。この大学からの提案は、「ナノファイバーによる有害物質の毒性吸着特性評価」であり、毒ガス、生物兵器を想定している。16 年度の予算は2 倍の6 億円に増えたが、応募総数は激減し44件、その中に北大、東京農工大、大阪市大、東京理科大、山口東京理科大が採択された。大阪市立大学は「多孔性ナノ粒子集合体」―毒ガス吸着分解の集合体の研究。17 年度予算案は110 億円に増額。研究成果は原則公開と書いてあるが、事前にプログラムオフィサーの承諾が必要。
大学が機関として毅然とした姿勢を示すべき。新潟大学では、大学の行動規範に「軍事に寄与することを目的とする研究は行わない」を出した。最近、関西大学が「学内研究者の安全保障技術研究推進制度への応募を認めない。他大学の申請の共同研究者に名を連ねない。」等という画期的な倫理規定を定めた。京大と立命館大、龍谷大が規範として打ち出し、学長交渉等で確認している、或は確認しようとしている。東大は、憲章で「世界の公共性に奉仕する大学」「世界の知識の発展のために尽くす大学」としている。この制度に応募できる人間は日本国籍に限られると書かれているが、日本国籍に限られるような募集には応募できないと言う理由で、応募していない。日本学術会議は1950 年に「戦争を目的とする科学の研究には今後絶対に従わない決意」を表明。67 年に「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を出した。しかし、現在、大西会長が率先して、「専守防衛が国是になり国民も望んでいる、科学者がこれに寄与するのは当然、防衛のための軍事研究は許容される」と発言。これに会員から強いクレームが出て、「安全保障と科学に関する検討委員会」が発足。本来、学術を行うものは世界の平和と人間の幸福に貢献するという原点を守るべき、時代と共に変えるようなものであってはならない。「民生研究、軍用研究の区別がつかないからよい」という論理があるが、これは、資金、目的、公開性によって区別がつく。国立大学は研究費の削減で困っている。新潟大学の研究室の経常予算は年間2.7 万円~ 30 万円しかない。ここに問題の根がある。経常研究費を増やす必要がある。
池内さんの講演の後、木戸衛一さん( 大阪大学国際公共政策研究
科)、西牟田祐二さん( 京都大学経済学研究科)、河かおるさん( 滋
賀県立大学人間文化学部) に各大学の状況をお話し頂いた。
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