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『JSAと私の研究』まえがき


 日本科学者会議(JSA)は、1976年より、2年ごとに総合学術研究集会(総学)を開催してきた。19回の総学を通じた一貫した基本的なテーマは、持続可能な社会の構築であった。社会科学者や自然科学者を含んだ学際的研究者集団であるというJSAの特徴を生かして、各分科会では、いずれも横断的・学際的な研究報告がなされているし、環境や平和、科学・技術の問題など学問研究と社会との接点が重視されてきた。
 2012年9月には、岡山大学で「第19回学術総合研究集会」(19総学)が開催された。19総学では、JSAの5人の代表幹事のうち、安斎育郎氏が特別講演「原発破局への道―翼賛体制を構成した7つの要因と変革への道―」をおこない、川崎健、北村実、小森田精子、本間慎の4氏が「マスターズレクチャー」をおこなった。5人とも、JSAの設立に積極的にかかわり、JSAの活動を担い、JSAとともに歩んできた古参の会員である。
『JSAと私の研究』は、19総学で4人の代表幹事がおこなった「マスターズレクチャー」の講演原稿である。自らの研究を振り返りながら、JSAが自らの研究に与えたインパクトを虚心坦懐に語っている。
 知的好奇心が学問研究に必要であることはいうまでもなく、それなしには学問研究は成立しないであろう。同時に、3.11後、いわゆる「原子力ムラ」に加担した研究者にたいする国民の不信だけではなく、さらに、科学・技術のあり方、社会のなかでの学問研究のあり方が問われるようになった。
 研究者は、専門家として自らの学問について社会的責任を負うことはもちろんであるが、自ら生活する市民の一人としての感覚をもつことも大切なことである。このことは、学問研究が市民や社会と乖離しないためにも必要なことである。本書を読むと、学問研究と社会の接点を考えるうえで何らかの示唆が得られるであろう。

『JSAと私の研究』の具体的なテーマは、下記のとおりである。
I 川崎 健 :科学者運動と科学研究を結びつけた半世紀
Ⅱ 北村 実 :JSAは学問の伴侶
Ⅲ 小森田精子:JSA会員の協力で作り上げた講義
Ⅳ 本間 慎 :JSAに育てられて


JSA eマガジン編集委員会


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