「永続可能な社会」を早急に実現させなければならないという認識は、92年の地球サミット以来の10年に、ほとんど世界のコン
センサスになった。日本科学者会議公害環境問題研究委員会が編集する「環境展望シリーズ」は、まずは日本の社会に永続可能性(サステイナビリティ)を実現
するための戦略と戦術を探求し、わかりやすく問題提起することを目指している。
基本的にエネルギーの面から、物質の面から、生態系の面から、文化の面からという4つに視点から、そのときどきに突出している課題を取り上げて、主とし
て同委員会の委員が分担して執筆したもの。本書はその第3弾である。
本書の第1章は世界と日本の、エネルギー近未来物語である。第2章には、その未来を実現するための決め手と考えられる政策について解説し
た。第3章は、自然保護が、まやかしの生態系保全になってはならないことを説く。第4章は、気候変動問題などにくらべて世間の関心は地味ながら、大地と水
の汚染がただならぬ状況であることを告発している。第5章は第2巻の同じ筆者のカドミウムによる食品汚染問題につづき、ダイオキシンについての現状をまと
めた。第6章は廃棄物政策の根本に立ち返って、現状を批判し、サステイナブル社会の廃棄物政策のあり方を展望した。第7章は住民による自らの環境設計を実
現させるべく、参加の現状と展望が、明るい例の紹介を通じて述べられている。第8章は、第1巻以来、気候変動問題についての世界と日本の動きを追い続けて
きた筆者によるヨハネスブルグ・サミット終了後の時点における総括である。
目 次
まえがき (高山 進)
Chapter 1 未来と世界を眺めることのすすめ
−太陽と風、そして水素が人類と地球の未来を拓く− (林 智)
Chapter 2 自然エネルギーの普及を促進する電力買取補償制度
−ドイツ「再生可能エネルギー法」を中心に検証する− (和田 武)
Chapter 3 自然破壊を問う
−人間には、野生生物と共存できる豊かな自然が必要だ!− (本谷 勲)
Chapter 4 深刻化する市街地の土壌・地下水汚染と土壌汚染対策法の問題点 (畑 明郎)
Chapter 5 環境化学物質による食品汚染
−主としてダイオキシンによる魚介類の汚染問題を考える− (小野塚春吉)
Chapter 6 サステイナブル・ソサエティの廃棄物政策
−省資源・循環化と安全化のために− (藤永延代)
Chapter 7 地域環境計画策定への住民参加
−現況と展望− まちの環境設計は住民の手で (桂川雅信)
Chapter 8 地球温暖化問題(気候変動問題)に対する取り組み
−世界と日本− (歌川 学)
あとがき (林 智)