JSA

決議
       現行教育基本法の維持を求める

 政府は4月28日に閣議決定し、現行教育基本法の精神に反する「教育基本法案」
を国会に急遽上程した。
 現行の教育基本法の前文は、日本国憲法に示された「民主的で文化的な国家の
建設」と「世界の平和と人類の福祉への貢献」という理想の実現は「根本におい
て教育の力にまつべきもの」と謳い、現行法が憲法と一体不可分の準憲法的な法
律であることを明示している。
 そもそも国民の教育に関わる重要法案を、与党協議という完全なる密室で作成
し、しかも、僅かな期間で強引に成立させようとすることは、議会制民主主義を
蹂躙する悪業である。さらに、この法案には以下のような問題点がある。
 第一に、「教育の目標」として、特定の価値観に基づく「愛国心」に直結する
「国を愛する」態度を養うなどと、「徳目」を列記している。「日の丸」「君が
代」の法制化により、教育現場では「掲揚」や「斉唱」の強制による内心の自由
への侵害が横行し、東京都では処分まで行われている。このようなことは、教育
を「国民の権利」から「国家の権利」に変えるものである。
 第二に、「教員は全体の奉仕者」の文言削除と合わせて、「教育は、不当な支
配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべき」を「教
育は、不当な支配に服することなく、この法律および他の法律の定めるところに
より行われるべき」と変えるなど、教育の国家統制を図るものとなっている。
 第三に、「教育振興基本計画」および「大学」条項を新設していることである。
大学の目的に「専門的能力」を培うことを挙げた他、社会への成果の「提供」や
社会発展への「寄与」を掲げ、国立大学法人法制定で一層強まった大学の「社会
貢献」「産学連携」に法的根拠を与えている。「教育振興基本計画」による「重
点投資」や削減などによって政府の政策的介入を可能とし、大学における教育・
研究を変質させ、学問の自由、調和ある学術の発展を大きく歪めるものである。
 日本科学者会議徳島支部は、日本の科学の進歩と平和・独立・民主主義・人び
との生活向上をめざし、憲法と教育基本法を守り生かす活動を行ってきた団体と
して、今国会に上程された「教育基本法案」の廃案と現行教育基本法の維持を要
求する。

2006年6月9日
                   日本科学者会議徳島支部第40回総会