JSA

以下の事務局長談話は、内閣総理大臣、外務大臣、防衛庁長官および各政党宛に送付しました。また、その旨報道関係各社宛に連絡しました。

身柄を拘束された日本人3人の即時解放と、「戦闘地域」であるイラク・サマワからの自衛隊即時撤退を強く求める(事務局長談話)


 4月8日、イラクにおいて3人の日本人ボランティア等が武装勢力によって拘束されたとカタールの衛星テレビが報道した。犯人たちは、日本の自衛隊が放送後3日以内(日本時間11日21時まで)に撤退しなければ、この3人を殺害するとの声明を出している。
 まず第一に指摘しなければならないのは、このような卑劣な犯行は絶対許されない、ということである。この3人は、いずれも、まさに人道支援のためイラクにおいて活動している人たちである。私たちは、3人の即時解放を強く要求する。
第二に、犯行グループは声明の中で、私たち日本人がイラクを侵略した米軍に協力したとしている。しかし、この認識は非科学的と言わざるを得ない。新聞社の世論調査では、自衛隊のイラク派兵に反対する人がなお相当数を占めているのが実態である。私たち日本科学者会議も、自衛隊のイラク派兵に強く反対してきた。日本国憲法に違反して自衛隊のイラク派兵を強行したのは、ほかならぬ小泉政権とその支持勢力である。声明にあるようにもし3人を殺害すれば、小泉政権は、「危険なテロリスト」から国民を守るため、と称して、日本の「戦争国家」作りをいっそう強化しようとするであろう。
 第3に指摘したいのは、福田官房長官らが言っている「自衛隊は人道復興活動をしており、撤退の理由がない」という「言い分」である。これも間違っており、非科学的である。自衛隊は強行成立させられた違憲の「イラク特措法」によって派遣されているが、この法律によれば、撤退すべき理由は今や明白になっている。それは、イラクが「現に戦闘行為が行われている地域」になっているという事実である。サマワにおいても、8日から9日にかけ、2度にわたり砲弾が打ち込まれている。このような事態は、「イラク特措法」第二条第3項に違反することは明らかである。今や、自ら成立させた法律を守るかどうかの「順法精神」の有無が政府に問われていると言わねばならない。
 日本国政府は、「『テロリストの脅迫』に屈して」ではなく、何よりも邦人保護の立場から、また、もはや「法律の要件を満たさなくなった」という正当な理由が存在することを率直に認めて、この際、イラクからの自衛隊撤退を潔く決断すべきである。


2004年4月10日
日本科学者会議   事務局長 片平 洌彦