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日本科学者会議北海道支部常任幹事会は以下の見解をまとめ、環境省、環境事業団、北海道庁及び室蘭市に送付しました。

道外PCB廃棄物の室蘭での処理について


 このほど、室蘭市は、PCB廃棄物処理特別措置法の適用を受けて道内のPCBの処理を行う施設の受入を決定した。また、その施設を用いて、道外地域のPCB廃棄物も室蘭市において処理することが要請されている。この様な事態に際して、日本科学者会議北海道支部常任幹事会として現時点におけるPCB廃棄物処理がどうあるべきかについて検討したので見解を述べる。
 第1に、道内のPCB廃棄物処理のための施設建設については、具体的な処理方法が未だに明確でないこと、地元住民に十分な説明がなされていない点で、環境事業団及び道は住民の理解を得る必要がある。
 第2にPCBに限らずこうした有害廃棄物の処理に当たってはppp(汚染者負担の原則)の原則にのっとり、排出者(今回の場合はその保管者)ならびにその保管者の所在する都道府県の責任で処理すべきである。環境事業団がこの処理を行うとしても、責任の所在は事業団にのみに負わせるべきでない。今いわれている東北・北陸等の15県の保管するPCB廃棄物の処理を行うに当たってはこの責任の取り方をどのように考えているのか、この点も住民に明らかにする必要がある。
 第3に処理方法に関して伝えられるものとして幾つか提案されているが、室蘭で採用される方式は不明である。いずれにしても実用規模の施設の稼働例はなく、プラントの信頼性や安全性に関しては何ら保証されていない。新技術であるならば、まず小規模のプラントを稼働させ、その実績を積み重ねた上で、規模の拡大を行っていくべきである。提案されている処理方式の実験規模での成果から、一挙に実用規模のプラントを設置することは恐らく初期のトラブルが多発し、環境への影響が少なくないと思われる。プラント建設に当たってはこうした飛躍は絶対に避けるべきである。
 以上述べた不確定要因が残っている段階では、一挙に2トン/日の処理施設建設を行うよりも、当面はより確実な保管方法の確立が必要と思われる。その点で保管の信頼性が低い道内の中小規模事業者が保管しているPCB廃棄物を道の責任(或いは環境事業団の)で、道内の1カ所に確実に保管することから開始すべきである。その上で処理方法の確認を行いながら、環境に配慮しかつ安全な処理へ進むべきである。


2004年2月25日
日本科学者会議北海道支部常任幹事会