☆日本科学者会議は2003年11月29−30日に東京で開催した常任幹事会において
以下の声明を採択しました。
☆声明は、内閣総理大臣、外務大臣、防衛庁長官、および各政党へ送付し、そ
の旨報道関係各社へ報告しました。
自衛隊のイラク派兵に断固として反対する |
11月29日、バグダッドの北方150キロメートルのティクリートで日本の外交官2人を含む3人が銃撃・殺害された。日本科学者会議は亡くなった人びとに謹んで哀悼の意を表するとともに、こうした野蛮なテロ行為によっては問題は何も解決しないことを犯行者に訴える。同時に、イラクが今なお戦争状態にあると実感せざるを得ない。 にもかかわらず小泉内閣は、自衛隊のイラク派兵を年内ないし新年早々に強行しようとしている。先の通常国会会期末にわずか1月ほどの審議期間で強行成立させた、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下「イラク特措法」という)にもとづく派兵である。 しかし、そもそも今回の人道復興支援活動及び安全確保支援活動は、イラクの大量破壊兵器開発疑惑を平和的に解決しようとする国連の努力と国際世論を踏みにじって、米英両国政府がイラク攻撃を強行したことに端を発している。しかも、攻撃の口実となった大量破壊兵器開発疑惑なるものは、現在に至るもなおその証拠を示すことはできず、米英両国政府がねつ造したものであることは今や明白である。無法な戦争を仕掛けた上で不法な占領支配を続ける米英両国政府に協力することは国際正義に反するものであり、既に独・仏・露・中国などは派兵しないことを決めている。ましてや平和憲法を持つ日本がイラクに派兵することに、日本科学者会議は断固として反対する。 しかもイラク特措法は、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域に限って、自衛隊の派兵を認めたものである。しかし、いったいイラク国内のどこに「非戦闘地域」があるというのか。現に自衛隊の派兵予定地サマワから100キロメートルしか離れていないナシリヤでは、この11月12日にイタリア警察軍駐屯地が自爆テロ攻撃を受け、28人もの死者が出たばかりである。さらに今、イラク派兵は無法なイラク戦争を支持した小泉内閣による米英両軍の占領体制を支援するためのものとして受け止められ、自衛隊の行った先が「戦闘地域」になるとまで言われている。たとえイラク特措法にもとづいたとしても、自衛隊のイラク派兵はあり得ないはずである。 もし自衛隊派兵が強行されるならば、第二次大戦後初めて「戦闘地域」に武装した自衛隊が送られることになる。しかし、それは50年前の1954年に警察予備隊が自衛隊になるときに参議院本会議で全会一致で決議された「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」に違反する。また、イラク特措法にもとづく安全確保支援活動は、米英両軍による掃討作戦に加担するものでしかなく、武力行使を禁止した日本国憲法第9条にも明確に違反するものである。 もちろん今のイラクには電気・水道・下水・医療施設・教育施設などのインフラの再建が必要で、人道復興支援活動が緊急に重要であることは論を待たない。しかし、イラクにおける人道復興支援の道を切り開くためには、何よりも先ず米英両軍による占領支配から早急に国連中心の人道復興支援の体制に移し、直ちに米英占領軍の撤退をはかることが必要である。こうした国連中心の体制のもとでこそ、小泉内閣は非軍事に徹した人道復興支援活動をすべきである。 日本科学者会議は、日本国憲法及び国会決議に違反し、イラク特措法にすら違反する自衛隊のイラク派兵を小泉内閣が直ちに断念することを強く要求する。 |
2003年11月30日 |
日 本 科 学 者 会 議 |