JSA

☆日本科学者会議は7月23日に以下の事務局長談話を発表しました。
 参議院外交防衛委員会委員、参議院議長、小泉首相、川口外相、石破防衛庁長官、各政党宛に送付、
 またその旨
報道関連各社に報告致しました。

「イラク特措法案」の廃案を強く要求する(事務局長談話)


 現在国会で審議されている「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案」(イラク特措法案)は、米英占領軍下のイラクに日本の自衛隊を派遣し、「人道復興支援活動」と「安全確保支援活動」を行うなどというものである。私たちは、この法案の成立に強く反対し、廃案を求める。
 周知のように、日本国憲法第9条は、国際紛争を解決する手段として、「武力による威嚇または武力の行使」を「永久に放棄する」ことを宣言している。このような立場から見ると、ミサイルによる米軍攻撃等、現在もなお激しい戦闘が行われているイラクに、武器を携帯(法案では、その種別に何の規定・制限もない)した自衛隊を派遣するのは、まさに「武力による威嚇または武力の行使」につながる危険性を含んでおり、絶対に容認できるものではない。
 政府は、「非戦闘地域」に派遣するとしているが、イラクでは、今なお、各地で戦闘が行われている。ブッシュ大統領が戦闘終結宣言をした5月1日以降7月22日までの戦闘による米軍の死者は39人に達しているという。「テロ行為等は戦闘行為ではない」などという政府の説明は詭弁である。人道復興支援活動であれば自衛隊を派遣する必要はなく、法案の主眼が「安全確保支援活動」にあることは明らかである。しかし、米英占領軍が行うイラク国内の「安全確保活動」を支援するための自衛隊派遣は、結果として占領軍の側に立って占領体制に反対しているイラク国民を弾圧することにつながり、イラク国民と戦闘行為に至る危険性がある。「不意の場合の武器による反撃は武力行使ではない」との小泉首相の国会答弁は、自衛隊派遣が、まさに戦闘行為に及ぶことを想定していることを示している。
 このように、日本国を代表する首相が、最高法規たる日本国憲法を踏みにじり、自国民である自衛隊員の生命を危険にさらしてまでイラクへの派兵を強行しようとするのは、まさに「日米安保条約」なる軍事同盟相手国の「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」の要求に従おうとするものにほかならない。

イラク特措法案の第1条には、「国連決議・・・に基づき国連加盟国によりイラクに対して行われた武力行使」という記述があるが、私たちは、このような歴史の偽造にも強く抗議する。イラクへの武力行使は、国連決議の支持を得られなかった米国ブッシュ政権が、英国等の協力を得て行ったというのが歴史の真実である。そして、その開始理由としてきた「イラクの大量破壊兵器保有」も口実に過ぎないことが、次第に明らかになりつつある。
 政府・与党は、日本国憲法に従い、また、国民多数の自衛隊派遣反対の世論に従い、イラク特措法案を廃案とし、平和的な手段でのイラク復興支援の方途を追求すべきである。

     2003年7月23日
                                   日本科学者会議事務局長 片平洌彦