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☆日本科学者会議は2003年5月24-25日に東京で開催した第35回定期大会において
 以下の決議を採択しました。 (PDF版
 また、翌26日に文部科学大臣、衆参両院議長、および各政党へ送付しました。

教育基本法「改正」に反対する決議


 政府・与党は、本年3月の中央教育審議会(中教審)答申を受け、教育基本法「改正」法案を今国会に提出しようとしている。答申は、学校教育法など現行教育法全体の「改正」と「教育振興基本計画」の策定を行うと明記しており、法案が可決されれば、これを契機に56年続いた戦後の民主的教育基本法制は事実上「総決算」される。
 中教審答申は、教育基本法「改正」の基本的理由に、「たくましい日本人の育成を目指す観点」をあげているが、それは、新保守主義の思想的潮流を背景にしている。すなわち、イラク戦争に象徴されるような、一極集中的な軍事力に偏重した米国の世界戦略に日本の教育体制を追従させるものである。これは、今国会に有事法制関連法案が提出され、日本が戦争に踏み出そうとしている動向と一体のものである。
 教育基本法は、第二次世界大戦への痛恨の反省と、ファシズム国家日本の民主的再生を求める当時の国際社会の世論とを背景に制定され、憲法と一体的に戦後教育制度の根幹をなし、日本の教育と社会の平和的民主的発展の礎の役割を果たしてきた。
 同法は、「個人の尊厳」の原理のうえに、「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者」を育成するなどの教育の目的(1条)や「学問の自由」の尊重などの教育の方針(2条)を明示し、国(教育行政)は教育内容に介入せず、教育の条件整備に専念すべき原則を規定している(10条)。国家権力の教育や学問に対する不当介入の禁止は、同法の真髄ともいうべき画期的な教育原則である。同法は、歴史的な重みをもった準憲法的法律であり、日本国憲法の平和条項とともに、21世紀の地球時代にその真価が発揮されなければならない。
 今日の教育の危機は、教育基本法が原因でもたらされたものではない。“占領下の押し付け”などを理由に同法を敵視し、同法に違反し、その空洞化をすすめてきた歴代政府の責任によるところが大きい。特に、学級規模、学費・奨学金制度、教育・大学予算の対GDP(国内総生産)比などがいずれも先進国で最悪であることに示されるような、政府の教育条件整備義務の怠慢に起因している。この教育政策の根本的反省ではなく、その追認、正当化のための教育基本法「改正」が、教育の危機を加速、拡大させることは不回避と考えられる。
 最後に、中教審における審議が、基本問題部会への出席状況も悪く、これまで教育学界において永年にわたって培われてきた研究の蓄積もまったく無視されているなど、21世紀の日本の教育に関する重要問題を審議するにはふさわしくない状況で行われてきたことを、われわれは指摘しなければならない。
 以上の理由により、われわれは、教育基本法「改正」法案の国会提出に強く反対する。

2003年5月25
日本科学者会議第35回定期大会