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日本科学者会議は2003年5月24-25日に東京で開催した第35回定期大会において
 以下の決議を採択しました。
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 また、翌26日に文部科学大臣、参議院議長、参議院文教科学委員、および各政党
 宛に送付しました。



国立大学法人法案の廃案を要求する

 5月22日、衆議院本会議で国立大学法人化関連6法案が与党3党の賛成多数で可決し、参議院に送付された。
 同法案の衆議院文部科学委員会における審議は、2日間の参考人質疑を含めわずか5日間しか行われていない。わが国の高等教育の大改革と言いながら、慎重かつ徹底的な審議を放棄して採決を行ったことに、われわれは強く抗議する。
 文部科学大臣が個々の国立大学法人の中期目標を定め、文部科学省と総務省内に設置された評価委員会によるそれぞれの評価をもとに法人の改廃や運営費交付金が決定されるなど、法案は国立大学の自主性と自律性を著しく損ね、憲法と教育基本法にもとづく「学問の自由」を根底から否定するものである。また、学長を法人の長とし、理事や経営協議会の中枢メンバーの指名権・任免権を学長に集中させ、かつ役員会、経営協議会、教育研究評議会のすべてを学長が主宰するなど、法案が学長の独断専行体制を極度に肥大化させているのも問題である。われわれはすでに3月7日に発表した声明「日本の高等教育を破壊する国立大学法人法案の撤回を求める−国立大学法人法案に対する見解−」で、これらの問題を含め、法案が多くの重大な問題点を持っていることを明らかにしている。
 加えて、極めて不充分とはいえ衆議院文部科学委員会での審議を通じて、利息を含む総額1兆3000億円もの膨大な負債を国立大学法人に押し付けることや、2004年4月からの法人化を急ぐあまり、労働者の生命と安全を守る労働安全衛生法に違反する状態のまま発足する状況が起こりかねないことなど、多くの問題点が明らかになっている。
 日本科学者会議は、科学の自主的・民主的発展とその普及、科学者の権利や研究条件、学問の自由の擁護発展、科学を人類の進歩に役立たせる努力、科学的精神をもった青少年の育成に、全力を挙げて取り組んできた。その立場に照らして、同法案の内容と審議実態は、絶対に容認できるものではない。
 以上のような見地からわれわれは、参議院において慎重かつ徹底的な審議を行い、この法案の欠陥を広く国民の前に明らかにした上で、同院がこの法案を廃案にすることを強く求める。

2003年5月25日
日本科学者会議第35回定期大会