☆日本科学者会議は、いわゆる有事法制三法案に強く反対し、以下の声明を5月14日に発表、同日、
内閣総理大臣、外務大臣、防衛庁長官、衆議院議長、および各政党へ送付、またその旨、報道関連
各社に報告いたしました。
米国の先制攻撃戦略に加担する「有事法制」法案に強く反対する |
小泉政権は、昨年「継続審議」となった有事法制3法案の「修正案」を今国会に再度提出し、最大野党である民主党との「合意」を経て、会期内の成立を強行しようとしている。国会に提出された与党「修正案」は、昨年の政府原案と比較して、「武力攻撃事態」の定義、「国民保護法制」の位置づけ、「武装不審船・大規模テロ」対策の明記という3点で若干の変更を加えている。 第一は、「武力攻撃事態」の定義(政府原案第二条二項)として、「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態」又は「武力攻撃が予測されるに至った事態」とあったのを「武力攻撃が発生した事態」と「おそれのある事態」を一括して「武力攻撃事態」とし、それとは切り離された「武力攻撃予測事態」との2本柱としている点である。 第二は、いわゆる「国民保護法制」について、政府原案では「二年以内を目標に整備」となっていたのが「修正案」では「整備を迅速かつ集中的に推進するため、内閣に国民保護法制整備本部を置く」とされている点である。 第三は、「不審船・テロ」対策の明記である。政府原案では明示されなかった「不審船・テロ」対策を「武装した不審船の出現、大規模なテロリズムの発生などの我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ……必要な施策を講じる」と新たに条文(第二十四条)に加えている。 しかし、こうした変更・修正は、「周辺事態」すなわち日本周辺地域(とはいっても地理的限定はない)において米軍の先制的な軍事行動によって引き起こされる緊急事態をそのまま「日本有事」に連動させて日本の戦時動員体制を発動しようとする有事法制法案の本質的性格を変えるものでは決してない。それどころか、今回の「修正案」では、「国民保護」とは逆の「国民監視・私権制限」を強め、「不審船・テロ」対策を明記することによって本来警察力で対処するべきものにまで自衛隊を活用させようとするもので、自衛隊の軍隊化と集団的自衛権の行使を禁止する平和憲法に反する一層危険な性格を帯びたものとなっている。 与党3党と民主党は昨日、武力攻撃事態等への対処において基本的人権を最大限に尊重する等8項目の「合意」を行った。しかし、基本的人権の尊重は、私たちの「最高法規」である日本国憲法に規定されている事項であり、そのことを敢えて法案に記載すること自体が、有事法案の危険性を示している。戦争こそが人間の生命や健康を破壊し、基本的人権を否定するものである。この8項目「合意」によって、上記に挙げた有事法制法案の本質的な危険性は何ら払拭されていないことは明らかである。日本国憲法九条は国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使を永久に放棄すると高らかに宣言しているが、戦争することを想定した有事法制は憲法違反の法律であり、そもそも有事法制法案は修正すべきものではなく廃案にすべきものである、とわたしたちは考える。 9・11事件以降の米国は、アフガニスタンに対する「報復戦争」に続き、圧倒的反対の国際世論を無視する形でイラクに対する「予防戦争」を強行した。日本政府は、この明らかな国際法違反の「侵略戦争」を終始積極的に支持し、米国主導の不当な「占領行政」にも積極的に加担しようとしている。ブッシュ政権の強硬派(新保守主義勢力)がイラクの次の標的を北朝鮮に定めようとする動きが出ている中で、北朝鮮敵視政策を前提とした有事法制を整備することは朝鮮半島を舞台とした近未来の戦争への道に日本が明確に踏み込むことを意味している。 わたしたちは、日本政府に対して、このような戦争協力体制を公然と整備するための有事法制の導入に断固反対することをここに表明する。 |
2003年5月14日 |
日 本 科 学 者 会 議 |