JSA

2003年4月8日
日本科学者会議大阪支部常任幹事会


米英による無謀なイラク侵攻の即時停止を求める


 アメリカ、イギリス政府は、戦争反対を求める世界の圧倒的世論を無視して、イラクに対する侵攻を拡大しつつある。これは国際法の原則に反し、国連決議にも基づかない不当な開戦である。この侵攻の口実としてイラクの「大量破壊兵器廃棄」を求めているが、自ら保有する1万発を越える核兵器については不問に付していることは不当である。そして戦場においては米英軍こそが最新鋭ハイテク、大量破壊兵器を投入している。とくに劣化ウラン弾の使用はジュネーブ条約にも違反しており、開戦に先立って誇示された「MOAB」とよばれる新型爆弾の威力は、ベトナムやアフガニスタンでも使用された「デージーカッター」を上回り、小型核兵器に匹敵するものである、このような大量破壊兵器こそ即時廃棄されるべきである。

 また、たとえイラクのサダム・フセイン政権が、ブッシュ氏らが言うように独裁的で危険なものであったとしても、どのような政体を選ぶかは、国家の主権に属することであって、他国が干渉してはならない。他国の元首の殺害ないし逮捕を目指す戦争はいやしくも民主主義を標榜する国家のとる道では断じてないのである。実際、戦局が米英に有利と見て取ると、政府、軍幹部は当初の「大義」さえかなぐり捨てて、「大量破壊兵器の発見よりも、フセイン政権打倒が先決だ」とまで広言しはじめている。このように支離滅裂な説明は看過しえないものであるが、侵攻のねらいがイラク領土内の石油資源確保にあったことはいっそう明白になってきた。

 しかもマーケット、病院、住宅など非戦闘員への「誤爆」が相次ぎ、このため子どもと女性を含む数千人あるいはそれ以上の死傷者を出しているものと推定される。このような非戦闘員に対する無差別大量殺戮を命令しているブッシュ米大統領、ブレア英首相ら指導部は戦争犯罪人として国際法廷で裁かれなければならない。今回の戦争に参加または支持した諸国は、特定企業等の利潤追求としての「戦後復興」ではなく、自軍兵士を含めて、不当に蹂躙された多くの生命、国土に対して誠実に補償することこそ求められる。

 このような道理もない侵略行為に対し、日本政府はまたしても何ら根拠を示すことなく支持を表明し、後方支援のためイージス艦を派遣している。これは自主性を放棄した無責任な追随外交であるばかりでなく、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ(前文)」とする日本国憲法の原則から著しく逸脱した行為といわねばならない。

 しかも与党三党は日米同盟堅持を最優先させ、「北朝鮮の脅威」をも援用しながら、国内外の批判の中で昨年は採択できなかった有事法制化を今国会で成立させようとしている。まさに「火事場泥棒」の誹りを免れない愚行といわねばならない。

 こうした情勢の下で、米英政府などの一方的情報を無批判に垂れ流しつつ、世界でわき起こる戦争反対の世論と運動については偏見に満ちた論評を付け加える一部マスメディアの責任も重大である。報道機関の最大の責務は国民が正当な判断を下すのに資するよう、真実を伝えることである。

 私たちは、21世紀を環境と平和の世紀として、永続可能な社会を構築するため営々として努力を続けてきた世界の人々に伍して、考え、行動してきた。いうまでもなく戦争こそ最大の環境と人間性の破壊である。人類が築いてきた科学と技術の成果、そして地球の限られた資源を浪費するばかりか、人道とまったく反する方向に悪用することに私たちは強く抗議する。その立場から、私たち科学者は無法な戦闘の即時停止を求める。