JSA

☆2003年3月7日付「大分合同新聞」で報道されました。

2003年3月6日
日本科学者会議大分支部

イラクに対する戦争に反対する声明


私たちは、ブッシュ政権が主導するイラクに対する戦争に強く反対し、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)と国際原子力機関(IAEA)による査察の徹底と継続、国連憲章と平和憲法の精神に則った平和的解決を心から訴えます。

 イラク情勢はしだいに緊迫の度を増しています。昨年11月の国連安保理決議1441に基づいた国連監視検証査察委員会と国際原子力機関による査察が実行されている中で、アメリカのブッシュ政権はイギリスのブレア政権とともに、イラクに対する戦争を正当化する新たな国連決議を安保理で採択しようとしています。この動きに対して、安保理の中では、フランス、ロシア、中国の常任理事国と非常任理事国のドイツが強く反対しています。仏、独、ロの三国は国連の査察を継続する決議を提案しています。3月7日には査察委員会の報告が予定されていますが、米英両国はこの報告の如何にかかわらず、イラクとの戦争を正当化する新たな決議を採択するために安保理の多数派工作を進めています。さらに、国連決議がなくとも戦争を開始する危険もたぶんに存在します。
 もともとブッシュ政権は、その成立の時からイラクを「ならず者国家」として敵視し、その打倒を目標としてきました。昨年9月に発表された「国家安全保障戦略」では「必要とあれば単独行動をためらわず、先制する形で自衛権を行使する」と規定し、国連憲章で禁止している「先制攻撃」を正当化するだけでなく、核兵器の使用も可能としています。今年1月28日のアメリカ議会における一般教書演説でも、イラクのフセイン政権を強く批判し武力を行使して武装解除することを呼びかけました。
 ブッシュ政権はその発足当初から、CTBT(全面的核実験禁止条約)に反対し、ロシアとのABM制限条約を破棄し、クリントン前大統領が調印した気候変動枠組み条約の京都議定書にも反対するなど、核軍縮や環境保護に関する世界の人々の願いを踏みにじる「無法者」ぶりを発揮しています。国際協調を無視してアメリカの国益を追及する単独行動主義が世界を混乱させています。
 わが国の小泉政権は、このブッシュ政権に忠実に従っています。2001年9月の「同時多発テロ」に対するアメリカの報復を支援するための「テロ対策特措法」により、インド洋にイージス艦を派遣しました。さらに、国会ではまだ態度を決めていないと答弁しながら、国連では積極的なアメリカ支持を表明する「二枚舌外交」を進めています。小泉首相は、たとえ安保理が新決議を採択しなくても、アメリカが単独にイラク攻撃に踏み切ればアメリカを支持すると言明しました。このような態度は、「先制攻撃」を否定した国連憲章に違反するだけでなく、日本国憲法の平和主義の精神を踏みにじる行為です。
 既に米英両国による空爆がイラクに加えられており、これによって民間人の犠牲が出ているとも伝えられています。もし、米英両国がイラクに対して戦争を開始すれば、イラクの名もない老人や女性、子どもを中心とする一般市民が直接の戦闘行為で数十万人、間接的に医療や食料の不足などにより数百万人が死亡するという予測が国連によって発表されています。
米英両国による戦争政策に対する反対の動きが世界中で起こっています。安保理事会では常任理事国のフランスやロシア、中国が武力行使に反対していますし、非常任理事国のドイツも強く反対しています。また、2月15日の「世界反戦デー」では、世界中でイラクとの戦争に反対するデモが行われ、そこに1000万を超える人々が参加しました。こうした戦争反対の世界的世論が沸きあがる中で、欧州議会でもイラクとの戦争反対の決議が採択され、先日開催された非同盟諸国の首脳会議でも、戦争反対が表明されました。また一方では、イラクも弾道ミサイルを廃棄するなど、査察の効果があがっています。
 ブッシュ政権とブレア政権は世界的に包囲されつつあります。にもかかわらず、小泉内閣は懸命にブッシュ政権を支持しています。われわれは、ブッシュ大統領と小泉総理大臣に、世界の世論及び国連憲章やわが国の平和憲法の精神に則ったイラク問題の平和的解決、すなわち、国連による査察の徹底と継続、それによるイラクの大量破壊兵器の廃絶を強く求めるものです。