☆ この声明は日本科学者会議平和問題研究委員会(委員長:河井智康)が2003年1月11日に開催した委員会で討議し、1月14日に発表、翌15日にアメリカ合衆国大統領、小泉首相、各政党宛に送付しました。また、その旨を委員会友好諸団体および報道関係各社へお知らせしました。
北朝鮮のNPT脱退宣言に当たっての声明
−核兵器廃絶こそが今日の世界平和の焦点である− |
1月10日、朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮という)は、核不拡散条約(NPT)を脱退し、国際原子力機関(IAEA)との保障措置(核査察)協定の拘束からも離脱することを宣言した。このことが即北朝鮮の核武装化につながらないにしても、今日の国際情勢を一層緊張させ、かつ世界平和を願う国際世論に反するものであり、極めて強い遺憾の意を表明せざるを得ない。北朝鮮は直ちにこの宣言を撤回すべきである。 しかし、同時に、われわれはかねてより核兵器廃絶の立場からNPT体制を批判し、核兵器を持ってよい国と持てない国を差別する不平等条約の矛盾を指摘してきた。その視点から見れば今回も、アメリカを始め核保有国が北朝鮮のNPT離脱を批判することの説得性のなさは明らかである。また日本政府がアメリカの核の傘の下にいることを省みずに批判することも同様である。被爆国の政府ならば、率先して核兵器廃絶の大切さを説き、せめて極東アジアの非核地帯宣言を提案するなどの姿勢をとるべきである。 しかも一方では、2000年5月のNPT再検討会議では、核保有国が保有核兵器撤去を確認した最終文書を採択し、その後の国連総会においてもそのことを再確認しているにもかかわらず、いまだに核保有国は核廃絶に努力せず、アメリカは未臨界核実験や新型核兵器の開発すら手がけている。ましてブッシュ政府は、核兵器を持たない国に対しても核兵器による先制攻撃があり得るとしており、矛盾を一層拡大している。また今日すすめられているイラクの大量破壊兵器査察でも同様の問題がある。大量破壊兵器を世界で最も大量に保有しているのがアメリカであり、自国のみを正義と考えるアメリカの独善さに世界世論が反発を強めているのは当然のことである。 われわれは今回の北朝鮮のNPT脱退宣言に当たって、今日の世界平和の焦点が核兵器の廃絶にあることを主張する。今日の情勢を見るとそれはかなり困難に思えるかもしれない。しかし核兵器に関する不平等な世界体制を放置するならば、さらに多くの国が核兵器所有を志向するのを防ぐことは極めて困難であろう。今こそ核兵器の全廃を実現させることが、問題の本質的解決への正道であることを確認し、早急に世界中の平和を願う仲間が手をとり合って立ち上がるよう訴えるものである。 |
2003年1月14日 |
日本科学者会議平和問題研究委員会 |