JSA

☆以下の声明は、5月25-26日に開催された第38期第1回日本科学者会議全国幹事会での討議を受けて、6月3日に発表したものです。同日、内閣総理大臣、文部科学大臣および報道関係各社へ送付しました。



科学者の権利および地位の保障を求める声明

 教育・研究の発展に不可欠の前提は、科学者の権利および地位の保障である。しかるに、大学や研究機関において、不当解雇、不当配転、研究・教育の妨害など、科学者の権利および地位に対する侵害が続発している。比較的最近でも、大垣女子短期大学の学科廃止を口実とした不当解雇や、鹿児島国際大学の3教授に対する教員採用人事を口実とした不当解雇などが相次いでいる。これら係争中の権利および地位の侵害は、いずれも法的に根拠のない不当なものである。日本科学者会議は、現在全国的に起こっている科学者の権利および地位の侵害に対して改めて抗議するとともに、その一刻も早い回復を強く求める。
 2001年6月の「遠山プラン」の発表以来、国立大学の再編・統合が強権的に進められている。私立大学では、少子化にともなう「生き残り競争」が激化している。また、国立試験研究機関の多くは2001年4月に独立行政法人に再編され、重点化・効率化のかけ声のもとで、財政と評価を通じた行政主導のトップダウン型の研究システムが導入されている。公設試験研究機関でも、独立行政法人化に向けた準備が急速に進められている。民間企業の研究機関では、財政難や経営状況悪化を口実に人員削減が公然と進められている。こうした状況は、トップの意に沿わない者の排除やリストラのための退職強要など、科学者の権利および地位の侵害を激化させるおそれが強い。上述の不当解雇は、このような事態の先触れである。
内閣府の総合科学技術会議が司令塔となって、政府の意に沿った財政誘導による「競争的な研究開発環境」、「任期制の広範な普及」および「効果的・効率的な資源配分」が追求されている状況下では、そもそも真に自由で創造的な研究の発展は期待できない。そればかりか、現状でも憂うべき科学者に対する権利および地位の侵害が、今後は構造的に多発することさえ予想される。
 教育・研究が発展するためには、教育・研究機関の自治とそこで働く科学者の権利および地位の保障が不可欠の前提であることは、ユネスコ勧告、国際学術連合等の憲章・宣言、日本学術会議が強調していることである。しかし、日本政府はこれらの勧告、憲章・宣言等に対して消極的・否定的立場に終始してきた。科学者の権利および地位の侵害が頻発する背景に、こうした日本政府の姿勢があることも見逃すことはできない。
 日本科学者会議は、広範な科学者とともに、こうした日本政府の姿勢を改めさせ、科学者の権利および地位の保障のために行動することを決意し、ここにこれを声明する。

 2002年6月3日 
日 本 科 学 者 会 議