JSA

2002年6月1日 
日本科学者会議宮城支部第37期定期大会
特別決議

学問の自由と大学の自治を守り,大学を知の創造と継承の拠点として発展させよう

 国立大学法人化の動きは,本年3月の文部科学省調査検討会議の最終報告により,いよいよ最終段階に入った.これまでの検討の過程の中から,政府はわが国の高等教育を,国家戦略と企業利益を最優先させた研究と,そのための人材育成に丸ごと奉仕するものに変質させることを露骨に意図していることが明らかになってきた.
 最終報告は,「学長による強力なリーダーシップ」「運営への学外者の参加」「中期計画,評価,運営交付金による文科省の強いコントロール」を柱としており,そのいずれもが,大学における自由で豊かな研究教育の発展とは,本質的に相容れないものである.さらに,最終報告段階で突如盛り込まれた「職員の非公務員化」は,現在国立大学で働くすべての教職員を不安に陥れるだけでなく,政府による学問・教育支配を避けるために設けられた「教職公務員特例法」を反故にすることで,これに準じた人事制度を取る多くの私立大学を含む多くの教員の身分を不安定化し,特に短期的には成果が上がりにくい基礎的研究に壊滅的打撃を与えかねない.
 一方,国立大学協会は4月の臨時総会で,ほとんどの発言が反対,懸念,不安を示すものだったにもかかわらず,異例の多数決によりこの最終報告を容認する会長談話を了承した.これは,わが国の学問に対する責任を放棄し,政府による大学支配を自ら認めたものであり,その歴史的責任は重大である.
 こうした法人化の動きと並行して,文科省は教員養成過程を皮切りに,地方大学の切り捨てと大学の種別選別化を始めている.地域における教員の養成・研修のみならず,教育の機会均等や地域文化・産業に貢献してきた「一県一大学の原則」の歴史的成果を無視し,文科省のコントロールによる強引な「統合」が進められ,地域における知の拠点が失われようとしている.その一方で文科省はいわゆる「トップ30構想」によって国公私立大学を選別し,さらなる序列化を進めようとしている.
こうした一連の文科省の大学政策は,大学がそれに相応しくあるための根本理念である学問の自由と大学の自治を根底から破壊し,太平洋戦争下における苦い経験から厳しく反省された国家による大学支配を復活させようとするものであり,長期的には,わが国の研究教育の力を著しく損なうものである.日本科学者会議宮城支部は,大学を知の創造と継承の拠点として発展させるために,これら一連の過った大学政策を破棄し,根本から見直すことを強く求めるものである.