☆以下の声明は、日本科学者会議が、2002年4月16日に閣議決定されたいわゆる有事3法案に反対し、翌17日に発表、内閣総理大臣、外務大臣、防衛庁長官、衆議院議長、各政党、および報道関係各社宛に送付したものです。
有事法制に反対する声明 |
政府は去る4月16日、国会に対して「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」「安全保障会議設置法一部を改正する法律案」(いわゆる有事3法案)を提出した。これは外国からの日本攻撃が何ら予想されない今日、アメリカの戦争行為を基にした「周辺事態」を想定したものである。またさらに、日本をより一層軍事大国化し、「戦争国家」への道を歩もうと意図したものと言わざるをえない。その意味だけからも、われわれは断固としてこの法案に反対するものである。 また同時に、この有事3法案は日本国憲法を真っ向から踏みにじるものであり、明白な違憲立法である。日本国憲法から平和条項をなくそうとする策動がすでに進められている今日、その突破口的役割をこの3法案が果たす危険も大いにある。その観点から見た重大な問題点をいくつか指摘しておきたい。 1. 日本への武力攻撃があったときの対応法案といいながら、その恐れがある場合あるいは予測される場合も含めた国民総動員法である。これは政府の予断による法の発効を認めるものであり、むしろ日本を米軍の戦争にまきこむ法律である。 2. 有事の際の措置を行う対象に行政機関はもとより、独立行政法人、銀行・報道機関・電気・ガス・輸送などの公共的法人を含めており、日本国内の経済・言論統制を企図するものである。具体例としてこの中には生活物資の価格・配分もコントロールの対象としている。 3. 自衛隊の行動のみならず米軍の行動を円滑に行うことを企図し、従来政府が違憲としてきた集団的自衛権を公然と認めるものとなっている。 4. 国(内閣総理大臣)が絶対的指揮命令権を持ち、自治体の権限についてその首長が反対しても国の判断で代執行できる仕組みを作っている。憲法に示される地方自治権の蹂躙は明らかである。 5. 有事対処の具体的内容として「社会秩序の維持」「輸送及び通信に関する措置」をも掲げている。これは国民の思想・信条、あるいは言論の自由を弾圧した過去への逆行を想起させるものである。 6. 有事に際しては、「防衛のための施設の構築」と称し、国民あるいは法人所有の土地・建物も軍事目的に自由に使用あるいは改変できるようにしている。これは国民の財産権と基本的人権を否定するものである。しかもその執行に当たっては必要な場合には武器の使用も認められている。自衛隊が国民に銃口を向けることも認める法律である。 7. 国民の生活や経済活動、あるいは環境保全に関わる20種の法律について、有事の際には軍事的に自由な行動を認めるための変更を示している。例えば港湾水域占有や建造物設置、道路の工事を含めた自由な使用、緑地保全義務の適用除外など、様々な分野で自衛隊の特権的利用を認めるものとなっている。 8. これら憲法違反の行動に国民が抵抗した場合には、半年間の懲役または30万円までの罰金刑が課せられる。 このような内容の有事法制は、まさに第二次世界大戦に向けて日本の軍国主義が台頭した歴史を想起させるものであり、日本の針路について極めて憂慮せざるをえない。われわれは平和と人類進歩をめざす科学者集団として、戦争をしない国とした日本国憲法第9条を高く掲げ、有事法制に反対することを全国民に呼びかけるものである。 |
2002年4月17日 |
日 本 科 学 者 会 議 |