☆下記の声明は、12月1−2日に開催した常任幹事会において採択し、12月3日に首相、外相、防衛庁長官、各政党および報道関係各社宛に送付いたしました。
「テロ対策」に便乗し、平和憲法を踏みにじって「戦争国家」を作ろうとするあらゆる策動に強く反対する(声明)
2001年12月2日 日 本 科 学 者 会 議
この9月から10月にかけ、米国での同時多発テロと炭疸菌感染事件、米英軍のアフガニスタン連続空爆という異常な事態が人為的・連続的に作り出される国際情勢の下で、日本では、提出から3週間余りという異例の短時間審議によって、10月29日に「テロ対策特別措置法」(以下「テロ特措法」)の制定と「自衛隊法」の改悪が与党3党などにより強行された。与党は、「国連平和維持活動(PKO)協力法」改悪案もわずか2日間の審議で衆議院を通過させて成立をはかっており、さらに有事立法の策定を企図している。
「テロ特措法」は、米軍等の軍事行動に対して自衛隊の海外での「協力支援活動」を可能にするもので、1999年成立の「周辺事態法」では一応限定されていた活動範囲を一挙に「外国の領域」に広げ、世界中に武装した自衛隊を派兵できる内容になっている。ここでいう「外国の領域」は、「戦闘行為が行われておらず、活動期間を通じて行われないと認められる地域」となっているものの、そうした地域での武器使用を認めており、憲法
9条に背馳する違憲の立法であると言わざるをえない。
「自衛隊法」の改悪は、基地の警護出動や情報収集活動の際の武器使用を可能にし、また、かつて国民の強い反対によって廃案になった「国家秘密法」が企図していた「防衛秘密」の規定を設け、その漏洩に対し、民間人も含め重い刑を科す内容となっている。これにより国民の主権者としての「知る権利」は大幅に規制され、その内容を知らせようとしたマスコミ関係者は処罰されかねない。日本民間放送連盟を含むマスコミ関係者が強
く反対したのも当然である。
「PKO協力法」の改悪は、凍結されている国連平和維持軍(PKF)本体業務への参加や、武器使用権限の緩和が柱となっており、これらも憲法に抵触する恐れが強い。有事立法の策定は、国民の諸権利を大幅に制限し、戦時総動員態勢を作るものになることは必定である。
以上見てきたように、9月以降に国会での数を頼んで強行された、あるいはこれから強行されようとしている一連の動きは、まさに「テロ対策」に便乗し、平和憲法を踏みにじって「戦争国家」を作ろうとする意図の現れにほかならず、私たちはかかる策動に強く抗議し、反対する。
「テロ対策」について言うならば、私たちは、9月の事務局長談話で「法と理性・言論にもとづく国際的連帯によるテロとの闘いを求める」立場を明らかにした。国連安保理がタリバン関係者の資産凍結等を1999年10月に決議(2000年12月にも再決議)したのは、そのような闘いの一環であったと考えられる。ところが、日本政府がその履行を決定したのは本年9月22日に至ってであったという驚くべき事実があることをここに
指摘しておきたい。
私たちは、私たちの憲法には、その前文に「全世界の国民が…平和のうちに生存する権利を有している」ことが記されていること、第9条においては国際紛争を解決する手段としての戦争や武力による威嚇・武力の行使を永久に放棄する立場が規定されていることをここにあらためて確認する。この立場から、あらゆるテロと戦争の根絶のため、国内外の良識ある人々と共に、言論によって闘い続けることをここに表明する。