2001年8月15日、愛媛県教育委員会は、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史教科書(扶桑社刊)を養護学校の一部で2002年度から使用することを決め、文部科学省に報告しました。
日本科学者会議は、2001年3月4日に「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史・公民教科書申請本の非科学性・非民主性を憂慮する声明を発表しています。日本科学者会議愛媛支部は、この声明の趣旨にのっとり、愛媛県教育委員会に対して、扶桑社版教科書採用の決定を撤回し、2年後の県立中高一貫校でこの教科書を使用しないように強く要望します。
3月4日の声明でも述べているように、教育に用いる教科書を所定の手続きを経て発行する権利自体は基本的にすべての人に認められています。しかし、日本の義務教育で使用する教科書である以上、真実をゆがめず正しく記載することは最低限必要なことです。ところが「つくる会」主導の歴史教科書は、日本の侵略戦争を「大東亜戦争」と呼び、アメリカ・イギリス・中国・オランダからの経済封鎖に対抗する自存自衛の戦争、アジアを欧米の支配から開放する戦争として描き出そうとしています。
この教科書を使用し、事実をゆがめた教育がおこなわれるならば、21世紀を担う若い世代に非科学的な知識をうえつけ、日本の民主主義はその土台を脅かされ、そして日本は再び戦争をする国になり、国際的に孤立するようにならざるを得ないでしょう。私たちはこのような事態を招くことを深く憂慮します。
さらに、愛媛県でのこの教科書使用先が、ハンディーを抱えた弱い立場の生徒が学ぶ養護学校である点は見過ごすことはできません。侵略を正当化する論理は、障害者に生きる希望を与え、発達を促すことと相いれないものであり、教育現場に混乱をもたらすことを危惧します。
ところで、加戸愛媛県知事は、委員会決定前に、決定への影響を期待しながら、教育長に扶桑社版を評価する意向を伝えたことが明らかになっています。これは、明らかに、県教委の権限に委ねられるべき教育の内容に関する決定への介入であり、強く抗議するものです。さらに、知事は、愛媛新聞とのインタビューで、2年後の県立中高一貫校でも同教科書を使用することを明言していますが、これも教育の内容への介入であり、撤回を要求します。
愛媛県教育委員会がこの教科書を採用するという決定を撤回され、今後も教科書として採択・使用されることのないことを強く求め、ここに声明します。
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