1.9月11日に米国で起きた悲惨な同時テロ事件は、数千名もの市民の命を奪い、さらに多くの人々の心に深い悲しみを残した。その犠牲者に対して心から哀悼の意を表する。これは余りにも理不尽で卑劣な行為であり、いかなる主義・主張によろうとも、人間の命、生活、希望を恣意的に奪うことは許されない。テロ事件首謀者に対しては、国連等の国際機関を中心に、これまでの国際法と条約等に基づいて裁くという断固たる措置を講じ、テロ根絶のため各国と世界の人々が協力すべきである。
2.このテロに対して米国および英国は10月8日、国連決議や国際協定に基づくことなく、首謀者と目される人物とその組織、それを庇護するアフガニスタン・タリバーン政権に対する「報復」攻撃を開始した。しかし、武力によっては今回の事件の解決、今後のテロ根絶はもたらされない。この攻撃はアフガニスタンの無実の市民らを犠牲にし、長年の内戦と外国の干渉で疲弊した関係地域ではさらに数10万人の難民が生じると予想されている。報復は新たな報復を生み、事態をさらに悪化させるばかりでなく、テロ根絶の国際世論を結集するための障害ともなる。
3.日本政府はテロ事件発生以来、米国ブッシュ大統領の好戦的発言に常に無原則な支持を表明し、自衛隊の海外派遣を公言してきた。そのため、「テロ対策特別措置法案」を今国会で早期に成立させようとしているが、この法案には、国際的常識では「兵站活動」に相当する「協力支援活動」が規定されており、従来の政府見解でも否定してきた「集団的自衛権」の行使に踏みこむものであって、断じて許すことはできない。
4.日本科学者会議兵庫支部は、平和と自由・民主主義の実現を理念とする本会の精神に基づき、テロ行為を厳しく糾弾するとともに、米国と英国に対して即時、アフガニスタンへの武力攻撃を停止すること、日本政府に対して平和憲法の精神に則って国際的責任を果たしていくことを強く要望する。
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