小泉首相の靖国神社参拝に強く抗議し、今後の首相・閣僚の参拝中止を求める（事務局長談話） 　昨日、小泉首相は靖国神社に参拝をした。私たちは､日本国憲法に背馳する疑いのあるこのような行為を一国の首相がとったことに強く抗議し､今後の首相・閣僚の靖国神社参拝の中止を求める。 　靖国神社は､戦前の日本軍国主義の精神的支柱となった国家神道の神社であり、この反省の上に､戦後の日本国憲法においては政教分離の原則が定められた．それ故､「内閣総理大臣その他の国務大臣が国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは、憲法２０条３項との関係で問題があり、違憲ではないかとの疑いを否定できない」というのが鈴木内閣当時の政府統一見解である。今回の参拝は、「玉串料ではなく献花料を私費で払い､また、神道形式の参拝を避けた」と説明されているが、「内閣総理大臣」の肩書を記帳しており、また「総理大臣の小泉純一郎が心をこめて参拝した」と説明している。このことは、まさに首相が「国務大臣としての資格で」参拝したことを示すものである。 　従って､私たちは､前記のような政府見解を首相自ら踏みにじる今回の靖国神社参拝を到底容認できない。「公式参拝か私的参拝か」との質問に対し、小泉首相は「私はこだわっていない」と答えたというが、この発言は､小泉首相の「政教分離の原則」に対する無感覚、あるいはそのことを熟知した上での確信犯的な姿勢のいずれかを示したものに他ならない。 　今回の参拝が終戦の日を避けたのは、中国からの強い批判を緩和するためであり、このような姑息なやり方では、あの侵略戦争への真摯な反省を示したとは到底言えない。内外からの強い批判を受けながらの首相・閣僚らの靖国神社参拝の強行は､日本軍国主義の侵略の犠牲になった中国・韓国等東南アジア諸国との関係をいっそう悪化させる結果をもたらすのは必至である。 　私たちは､日本国憲法の平和と民主主義を希求する精神を尊重し、東南アジア等諸外国との善隣友好関係を発展させることを願う立場から、引き続き企図されている閣僚ら、また今後の首相の靖国神社参拝中止を強く求める。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００１年８月１４日 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日本科学者会議事務局長　野口邦和